Q&A経営相談室
【危機管理】
地震保険加入の際の留意点
 
Q:
 新潟県中越地震を見て地震対策の重要性を感じました。まずは、地震保険に加入したいのですが、その際の留意点を教えてください。(食品スーパー)
 
<回答者> 東京海上日動リスクコンサルティング 主席研究員 指田朝久

A:
 地震保険は一般の火災保険などと同様に、家庭向けと企業向けとの大きく2つに分かれます。家庭向けの地震保険は、各損害保険会社等の販売する火災保険に付帯して加入することができます。この地震保険は「地震保険に関する法律(地震保険法)」に基づき、政府と損害保険会社が共同で運営する公共性の高い保険で、損害保険会社がどこであっても商品内容は同じです。地震は関東大震災のような巨大災害になる可能性があるため、多額の保険金の支払いに備えて国家が再保険を引き受けており、総額4兆5000億円まで支払いのための準備がされています。一方、企業向けの地震保険は各損害保険会社で商品が異なります。この企業向けの地震保険には国家の再保険制度がありませんので、損害保険各社は巨大災害に備えた再保険を海外の保険会社などで個別に手当てしており、その範囲内で企業の地震保険の引受が可能となっています。また、加入に当たっては各企業の立地や地震対策の取り組み状況によって引受可能な条件が異なります。
 それでは中小企業の地震対策はどのようにすればよいのでしょうか。ここでは4つのステップに分けて説明します。
 基礎的な第1ステップは「建物の耐震性の確保」です。1981年の建築基準法改正以前の建物であれば耐震診断を実施し、必要に応じて耐震補強が必要です。お客様や従業員の安全の確保は何にもまして実施しなくてはなりません。また、あわせて機械・什器の固定などの転倒防止対策が必要です。今回の新潟県中越地震でも、機械やパソコン等が移動し破損しました。レイアウト変更が多いから機械の固定を行わないというのではなく、こまめに固定することが必要です。
 第2ステップは「防火・漏洩防止対策」です。企業は地域社会あってのものです。自社からの出火やガスの漏洩、薬品の流出による土壌・水質汚染などを防ぐ必要があります。機械の固定に加えて、配管をフレキシブルジョイントに変更する、漏油堤を構築するなどのハード面の対策を行います。さらに従業員に対して防火訓練を行うなどソフトの充実も必要です。
 第3のステップは「業務の継続」です。災害対策本部の構築、水・カンパン・簡易トイレなどの備蓄、非常用発電機・無線などの準備、システムのバックアップなどに加えて、操業の継続や早期復旧のための資材の確保、修理業者の手配などをあらかじめ計画しておくことが必要です。そしてこれらをマニュアル化し、役員や従業員に訓練しておく必要があります。場合によっては、同業他社とのOEM協定も考えられます。サプライチェーンに組み込まれている企業の場合は他社の操業に影響を与えたり、影響を受けたりしますので、相互に地震対策を確認することも大切です。状況によっては発注元の企業と一緒になって地震対策を検討します。
 最後の第4ステップは「地域貢献」です。地域と共に生きる企業ですから普段から地域の自治会等と接点を持ち、地域の中での役割を確認しておくことが必要です。特に地震発生後72時間は「人命救助」の時間です。倒壊した家屋からの救出活動に貢献できる場合があります。また復旧にあたっても、地域の復旧作業に協調したり、産業ゴミは自社で始末するなど、義捐金以外にも工夫できることは数多くあります。
 これらの4つのステップに掲げられた項目について、まず自己診断をすることをおすすめします。どこまで対策ができているか、どのような被害が想定されるのかを把握することが地震対策の第一歩です。

提供:株式会社TKC(2005年1月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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