Q&A経営相談室
【社員教育】
ロールプレイングを研修に取り入れたい
 
Q:
 営業スタッフのセールス技術向上を目指して、社内研修にロールプレイングの手法を取り入れたいと思っています。ロールプレイングを効果的に実践するためのポイントを教えてください。 (美容品販売)
 
<回答者> ユア・コーチ代表 田中イブキ

A:
 ロールプレイングとは、職場や仕事での行動場面を模擬的に設定し、参加者にその場面における役割を与えて演技させる技法のことです。「役割演技法」とも呼ばれ、広く企業内研修に取り入れられています。ロールプレイングの特長には以下の3点があります。
1. 現実的な状況下で参加者に研修を行うことができるので、接客技術やセールス技術といった仕事に必要な技能のレベルアップが図れる。
2. 状況を比較的自由に設定できることから、臨機応変に研修に導入できる。
3. 参加者は日常業務を客観的な視点から見直すことができ、今まで気付かなかった課題や問題点が発見できる。

 机に座った通常の研修で、接客やセールスの理論や技法を学ぶことも意義のあることですがそれを即、実際の現場で活かせるかというと、なかなか難しいと言わざるを得ません。学んだ理論や技法を自分なりに消化し、味付けしていくことがどうしても必要となります。ロールプレイングはそれを助ける有効な手法といえます。

オブザーバーは2人必要

 ロールプレイングを実践する際には、「状況設定」「演技者」「オブザーバー(観察者)」の3点を設定することが求められます。
 とりわけ「状況設定」は重要で、ここがブレてしまうとせっかくのロールプレイングも成果無しの状態で終ってしまいます。例えば営業研修なら、まずはその企業の営業活動のなかで、「実際のお客様とのやりとりのどの部分に課題があるのか」「どのあたりを強化すると営業実績があがるのか」等について、研修前にしっかりと打ち合わせしておくことが必要です。また、打ち合わせは教育担当のなかだけで終始するのではなく、実際の現場で働く営業担当に対して行うことも大切といえます。
 つぎに「演技者」については、営業担当役とお客様役の2人を設定します。営業担当役はロールプレイングを通じて、自己の営業スタイルに関して多くの“気づき”を得る人です。もう一人のお客様役については、一見して相手役を演じるだけのようですが、実はここにも意味があります。日頃、営業という立場を捨てられない参加者が立場を変えてお客様になりきることで、普段の自身の営業スタイルがどのようにお客様に受け取られるかを客観的にみることができます。
 そして「オブザーバー」についても、2人揃えることを提案します。営業における上手い会話には会話全体の構造(流れや組み立て)の巧みさだけでなく、コミュニケーションスキル(技術)も重要となります。どちらかひとつが卓越しているだけでは、本当にうまい会話とは言えないのです。そのため、会話の中で使用されているコミュニケーションスキルに焦点を置いて観ていく役割と、会話の構造に焦点を置いて観ていく役割との2人のオブザーバーが必要になるのです。
 ここで事例をひとつ紹介します。
 化粧品販売のA社では、お客様に提供するサービスについての方針を定義化し、社内で意識の統一を図っています。この会社では、核拠点となる営業所長の号令で月1回営業マネージャーが集まり、商品説明や接客の仕方について徹底的に討議したうえで、それを現場のスタッフに落とし込むためにロールプレイングを用いました。その結果、どの営業スタッフもお仕着せの言葉ではないその人らしさが感じられる言葉で商品プロモーションが行えるようになりました。こうした取り組みはどの企業でも可能です。効果的なロールプレイングを是非とも実践してみてください。

提供:株式会社TKC(2005年1月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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