A:
「留学」及び「就学」から「就労」へ在留資格の変更を許可された留学生数は、1991年の1,117件から2000年には2,689件と倍以上に増えています。約60%が中国人で、アジア諸国出身者が全体の90%を占めています。就職先の規模別では、約60%が従業員300人未満の中小企業で働いています。さて、留学生を活用するメリットは次のように整理することができます。
(1) |
グローバルな視点で優秀な人材の確保ができます。わが国の少子高齢化による若年労働力の不足は、既に進行しています。より広い視点で専門能力のある人材の確保が可能になります。 |
(2) |
企業の海外戦略の可能性が広がります。現在や将来において事業の海外展開を図る上で留学生を現地の幹部候補生としたり、語学力や技術力等の専門能力を活用することができます。 |
(3) |
組織の活性化が図れます。異質な文化や価値観を持つ人材を登用することで、現状の組織に刺激を与え、硬直した組織を活性化できます。 |
しかし、適正な雇用管理ができていないと、せっかくの人材もうまく活用できず、逆にトラブルの元となります。法的な側面としては、当然「出入国管理及び難民認定法」で、就労が認められているかどうかの確認が必須です。悪意で法令に違反する事業主はともかく、関係法令や制度を十分知らないために、結果的に法令に違反したり、採用した留学生とトラブルを起こす場合もあります。採用時及びその後の更新についても注意が必要です。
また、日本国内で就労する限り、日本人、外国人を問わず、原則として労働関係法令の適用があります。労働基準法第3条では、労働条件面での国籍による差別を禁止しています。労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等については、外国人労働者についても適用されます。
労働条件を明確に提示する
次に、優秀な留学生を採用するためには、どのようなことに留意すれば良いか整理します。
(1) |
採用の際に、労働条件等について明確にすることが大切です。できれば、英文の労働契約書や就業規則を用意して、留学生に十分に理解してもらうことが重要です。 |
(2) |
言葉や生活習慣の違いに十分に配慮する必要があります。プライバシーに留意しつつ、公私両面にわたる支援も必要です。また、将来のキャリア形成についてよく話し合うことも大切です。 |
(3) |
留学生だからというわけではなく、わが国の労働法に準拠した適正な雇用管理を行うことが基本です。雇用管理の改善や労働者の福祉の向上を図り、誰もが働きやすい職場を目指すことです。各都道府県には外国人雇用管理アドバイザーを置いて、各事業所の実態に応じた相談を受け付けています。 |
(4) |
求人に関する情報源を確保することです。インターネットや留学生対象の合同企業説明会の活用、あるいは地元の大学やハローワーク、外国人雇用サービスセンター、地方自治体などとの連携を図り、求人の意思表示を広く行い、多くの求職の申し込みを受けることも基本です。 |
(5) |
留学生の就職活動は、一般的に日本人学生と比べて遅く、情報も限られているようです。企業としては、留学生の活用に対する意識やポリシーを明確にし、内定の時期などについては、やや柔軟に構えることも必要です。 |
企業が留学生を採用しない理由の1つは留学生に対する情報不足です。しかし実際に留学生を活用したことによって留学生の優秀さを認識し、不安が解消・緩和され、その後も留学生採用を継続している企業も多いようです。
|