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今年3月に労働者派遣法が改正されましたが、その目玉は何と言っても、製造業務の派遣が解禁されたことでしょう。製造業務の派遣については、同法施行(86年7月)以来の懸案事項でした。当初、専門的知識と経験を必要とする業務指定からはずれ、派遣ではなくて「請負」で対応するように行政指導されていました。今回の改正で、製造業務への派遣が可能となり、それまでの請負を派遣に切り替えるケースが起きています。そこで、その留意点について説明します。
派遣に切り替えるにあたっては労働者派遣法のルールを、まず知らなければなりません。改正法によると、製造業務の派遣期間は04年3月1日から07年2月28日までの3年間は「1年」と定めています。07年3月1日からは3年に延長されます。
製造業務の派遣が解禁されたといっても認められる派遣期間は最長で1年です。1年というのは、あくまで当該製造業務が「臨時的・一時的」であるということ。例えばエアコンメーカーの場合、4月、5月、6月がフル稼動の時期であり、7月になれば生産は縮小されます。このため、1年規制とはいえ、フル稼働の季節に大量の製造要員を抱えることができるので、派遣は有効に活用されるでしょう。
半面、季節に関わりなく通年にわたって製造する製品の場合は1年規制にひっかかり、不可能となります。その場合には、(1)1年満了時から3ヵ月間のクーリング期間(中断期間)を設定して派遣を再開するか、(2)期間満了以後は適正な請負で対応するように、都道府県労働局は指導しています。
ポイントは期間満了後の対応
では、労働者派遣法によって、それまでの請負作業員を派遣に切り替えるには、どういう点に留意すればいいのでしょうか。おおかたの製造工場では業務請負契約を取り交わして請負労働者を受け入れていますが、その実態は労働者派遣法で定める派遣であり、派遣に切り替えるといっても、先に述べた臨時的・一時的な製造業務であれば大きな混乱はないでしょう。その場合には、業務請負契約を労働者派遣契約に切り替え、法令の定めによって所定の手続きをする必要があります。
問題は、通年にわたって行われる製造業務を派遣に切り替える場合です。派遣期間は当面1年である以上、当該期間の満了後にどうすればいいかです。前述した(1)と(2)で対応するしかないのですが、(1)は非現実的なので、(2)の適正請負による方法しかありません。適正請負とするためには、86年4月の労働省告示第37号の「派遣と請負の区分基準」があり、それに従う以外にありません。告示37号は、次のように請負条件を定めています。
【労務管理の独立性】……1.工場労働の際に請負労働者が工場側の指揮命令を受けず、請負企業による指揮下で就労すること、2.勤怠管理、能力評価等を請負側が自ら行うこと、3.労働者の増減員、配置等の指示を請負側が自ら行うこと。
【事業独立性の確保】……1.請負企業として、民法、商法等の事業主責任を果たすこと、2.請負事業に必要な機材等の購入、使用等独立事業としての体裁を整えること、3.成果主義等請負企業としての責務を果たすこと等、とされています。
改正派遣法は、従来見られた請負なのか派遣なのかというグレーゾーンにメスを入れた点は評価されますが、派遣期間の1年制限をめぐって、派遣先・派遣元ともに、実態に合わせて一刻も早く延長してほしいと要望しています。今のところ妙手妙薬はなく、法令に従って行う以外にありません。
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