A:
社会のあらゆる分野で情報ネットワークの利用が基礎となる本格的なネット社会が到来しています。ネット社会では、企業と、顧客や取引先などの外部はインターネットを通じて時間や距離に関係なくつながり、すべての情報が電子データでやりとりされます。取引やコミュニケーションの方法など、これまでの企業活動とは明らかに異なったスタイルが構築されています。
同時にネットワークの活用は競争力の強化や事業発展のカギとなることから、企業はその規模の大小にかかわらず、こうした状況に対応していく必要に迫られています。しかし、ネット社会における企業活動で必要不可欠となる電子商取引や電子コミュニケーション、業務ネットワークの運用・管理、電子認証、情報セキュリティ、さらにはネット関連の新しい法律などに関する知識やスキルを持った人材が不足しているのも現実です。
にもかかわらず、企業実務に則したこれらの実践的なIT関連の知識やスキルを修得する場や機会は決して十分とはいえません。そこで、日本商工会議所と各地の商工会議所が全国的かつ体系的な人材育成と能力開発を狙って創設したのが「EC実践能力検定試験」制度です。
受験者数は年間数万人を予定
ECは、「Electric Commerce」「Electric Company」「Electric Communicatin」の3つの意味を含んでいます。検定試験と併せて「EC実践研修」を実施しますが、その内容は次の通りです。
(1) |
外部調整(ベンダー等とハード、ソフトについて自社の業務に照らして意見交換ができる能力) |
(2) |
内部調整(企業内の情報化について、運用方針を定め各部門との連絡調整ができる能力) |
(3) |
セキュリティ管理(セキュリティ対策に関する知識、スキル) |
(4) |
危機管理(ネット社会におけるトラブルを未然に防止するとともに、トラブルが起きた際の的確な対応) |
(5) |
法律知識(個人情報保護、著作権、ネット取引等に関する法律知識) |
(6) |
電子認証(入札やECで必要となる電子認証に関する知識やスキル) |
(7) |
情報通信機器に関する知識(サーバー、パソコン、モバイル端末等) |
(8) |
Webマスター(ホームページ運用と効果的なPR、広報等) |
(9) |
情報・データ管理(企業情報の蓄積・保存・バックアップ・管理) |
EC実践能力検定は、3級、2級、1級、さらにECマスターという4段階で構成されています。社会人や学生を対象にした3級は、電子商取引など企業実務に必要とされる基本的な知識レベルで、今年4月から全国40会場で検定試験がスタートしています。
2級からレベルが上がり、実践研修も併せて行われます。2級は一般ビジネスマンを対象に今年10月から、1級は企業内のネットワークの運用が行えるレベルで、2級合格者を対象に来年4月から検定試験をスタートさせる予定です。ECマスターは、企業内ネットワーク運用のコンサルティングまで行えるレベルで、1級合格者を対象に実績と面接で合否が決定されます。
3級から1級の試験はネット試験であることも大きな特徴です。インターネットを介して試験の実施から採点、合否判定まで行うもので、試験会場でいつでも試験を受けることができ、その場で試験結果を知ることができます。
幅広いIT関連知識と実践的なスキルを持った人材の育成に「EC実践能力検定試験」制度の果たす役割は大きく、今後、制度の普及に伴い年間数万人の受験者があると見ています。
(インタビュー・構成/ジャーナリスト・川上清市)
|