Q&A経営相談室
【人材戦略】
第二新卒採用時の留意点
 
Q:
 最近、大学を出て大手企業に就職したにもかかわらず、数年で辞める若者が多いと聞きます。“第二新卒”といわれる人たちですが、彼らを採用する際の留意点を教えてください。(システム開発会社)
 
<回答者> 就職・採用アナリスト 斎藤幸江

A:
 大卒入社後3年以内に離退職をする若者は3割を超えています。雇用環境が劣悪で耐えきれずに辞める事例も増えていますが、一方で、ご質問のように、厳しい採用選考を経て優良企業に入社できたのに、わずか数ヵ月で辞める若者もいます。これらの退職者には、次のような傾向があります。
(1)自己を正しく評価できない
 就職活動は新卒者にとって、自らの価値観で進路を選択する初めての経験です。しかも採用市場は買い手市場が続き、内定を獲得するためには相当の努力が必要です。やっとの思いで入社したのに、就労を続けられないという状況は、当人にとって周囲が考える以上に大きなショックです。結果、「自分はダメな人間だ」、「私は落伍者だ」と過剰に自分を責めたり、自己を過小に評価する若者も多くいます。彼らは、早くやり直したいと強く望んでいるものの、自分に自信を持てないため、積極的なアピールができません。
(2)理想のイメージを捨てられない
 「成果主義」、「即戦力採用」といった企業のアピールを言葉通りに受け止め、「入社後は『勝ち組』に向けてまっしぐらに進む」というスマートなイメージを持って入社する新卒者がいます。しかし、現実の職場は理不尽や矛盾がある上、経験のない者が効率よく実力をつけ、理想的なエリートに即なれるはずもありません。こうしたギャップに折り合いをつけられずに、理想と違う現実が悪いと考え、キャリアのリセットを図る若者も増えています。つまり、「夢を抱いて入社したのに、単純作業や上司の命令に服従するだけの毎日だ。意思決定の機会がないし志が反映されない」などの理由で、新天地を別の職場に求めて退職するのです。
 (1)の場合は、じっくり本人の話を聞く機会を持つことが、資質を見極めるポイントになります。応募者が萎縮しているようなら、「初めての就職先を選ぶのは、なかなか難しいものですね」などと相手の視点に降りて、退職動機を聞き出していくことが必要です。その上で「また失敗しないか」、「ここなら大丈夫なのか」といった応募者の不安を払拭していくと、双方のマッチングがスムーズに進みます。
 (2)のタイプは、頭も良く、プレゼンテーションも上手い場合が多く、採用される可能性が高い点が問題です。入社後すぐ、「やっぱりここも違う」と辞められたり、単純な仕事内容に不平や不満を募らせたり、仕事の手を抜くなどの問題を起こすことがあります。こういった事態を避けるには、彼らの仕事観についてよく耳を傾けた上で、採用を検討することが大切です。
 面接で応募者の資質を見抜くことに不安があるならば、地方自治体など公的機関のトライアル雇用や、民間職業紹介機関の紹介予定派遣を利用するのも一つの方法です。仕事や職場を体験した上で、双方で正社員雇用を検討できるので、ミスマッチを避けられます。
 また、最近は8割以上の大学が、情報提供や相談等で卒業生の就職を支援しています。学校差はありますが、こうした窓口を活用し、マッチングのサポートや対象者への情報提供を依頼してはいかがでしょうか。学校を訪問すれば、より強い協力関係が築けます。
 求人媒体や合同説明会などでは、「第二新卒」という呼称をよく目にします。これは、概ね25〜28才以下の大卒求職者を意味し、新卒採用が一段落した夏〜秋に募集が集中します。新卒者と一緒に4月に入社させ、合同で研修を行うことも多いようです。入社時の処遇は社会人経験を考慮する場合と、新卒と同一扱いの場合があります。後者の場合、実績や成果を処遇に反映する仕組みを整えておくと、年齢・経験のハンディは短期間で解消されるので、仕事本位の応募者は気にしません。

提供:株式会社TKC(2004年6月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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