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中堅・中小企業が外部から経営幹部を採用するにあたっては、主に(1)新聞・雑誌広告などによる一般公募、(2)スカウト、(3)人材紹介----の3つの方法があります。一般公募は、採用コストを比較的抑えることができるというメリットがある半面、ご質問者のように、知名度が低いと応募者が少なく、気に入った人材をなかなか採ることができないというデメリットがあります。
それに対し、スカウトはエージェント(専門業者)に依頼し、欲しい人材をピンポイントで採用できますが、コストと時間がかなりかかります。通常、クライアント側が「X氏を□□部長あるいは取締役に招きたい」と指名し、リティナーと呼ばれる基本着手金をエージェントに支払います(採用されれば成功報酬も払う)。X氏をスカウトできるという保証はなく、またリティナーは採用できなくても返還されません。依頼をしてから、話がまとまるまで少なくても半年以上はかかります。主にスカウトが利用されるケースは、役員クラスで、「横」(同じ業界)からの異動が多いといわれています。
人材紹介でマネジャーを採る
一方、人材紹介は、一般公募とスカウトの、いわばいいとこ取りをしているようなものといえます。具体的には当社のようなエージェントに登録された人(転職希望者)のなかから、要望に合う方をスクリーニングして数名を企業(クライアント)に紹介する、という仕組みです(図表参照)。企業側は紹介者を採用したとき、成功報酬として手数料を支払います。手数料は、当社の場合、採用された方の年収の30〜35%で、スカウトに比べかなり安いコストで済みます。
当社では、転職支援サイトや年収査定サービスを通して、転職希望者の登録を促進していますが、登録者のなかから年間3500人以上の方が採用されています。例えばY社の場合は、関西支社の支社長を採用されたケースです。Y社は健康食品を販売する会社(従業員約20名)で、営業力の強化をはかるため、今まで何度も一般公募を行ったのですが、ほとんど応募者がありませんでした。それが新聞に掲載された当社の広告を見て利用してみたところ、わずか1ヵ月半で、大手の食品販売会社で営業を統括していた40代前半の方を採用することができました。
これ以外にも、中堅・中小企業がよく利用するケースとしては、組織づくりに精通している人を経営企画室長あるいは総務・人事部長に採用する場合、資金調達の多様化を狙って財務に明るい人を採用するケースなど、いろいろあります。
しかし、ここで重要なことはいかにしてミスマッチが起こらないようにするかです。そのためには、第1に経営者自身がエージェントに、今回の採用の狙いは何か、求める人物像はどういうタイプか、年齢や年収についてはどれくらいを考えているか、などを明確にして伝えること。第2にプロパー社員に、今回の採用目的などを事前に説明して下地づくりしておくことです。
今の時代は変化が激しいので、何事もスピードが求められています。ヒトの面でもすべて一から社内で育てるのではなく、最近ではアッセンブリメーカーが部品を調達するように、専門的な技能などを持っている人を採用するケースが顕著になってきています。これを「人材のモジュール化」と呼びますが、人材紹介はその有力な手段として注目されてきています。
(インタビュー・構成/「戦略経営者」岩崎敏夫)
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