Q&A経営相談室
【工場管理】
3S活動を根付かせるには
 
Q:
 3S活動を導入したいと考えています。3S活動を社内に根付かせる方法を教えてください。(部品加工メーカー)
 
<回答者> 中小企業診断士 松本 弘

A:
  整理・整とん・清掃の3S活動は、作業空間の快適化を通じて、(1)「生産コストの低減」と(2)「人的資源の効率化」が期待できるものです。
 (1)の効果は、歩留り率の向上、故障の低減、無駄の排除、クレームの減少によって実現されます。(2)については、従業員のやる気の高揚、モラール向上によってもたらされます。とはいえ3S活動は、製造業を中心に多くの企業が取り組んでいるにもかかわらず、「期待した成果はあがっていない」というところも少なくありません。社内になかなか定着しないというのです。
 3S活動の徹底を図る最大のポイントは、現場スタッフの「意識改革」にあります。現場の人たちが3S活動の意味を理解し、自らの意思で率先して行動を起こすように仕向けていくことが重要になります。そのためには経営者や工場長のリーダーシップと熱意が欠かせません。強い率先力をもって、従業員への「意識付け」及び「教育」をしていかなければなりません。
 意識付けに関しては、まず最初に「1日の約3分の1を過ごす職場を、自宅と同じようにきれいにした方が絶対に気持ちいい」と教えたうえで、3S活動による効果を現場で彼ら自身に体験してもらうことです。さらに、「3S活動によって業務の効率化がこれだけ達成できた」という成果を定期的に報告していくことが必要になります。3S活動が自分たちのためになるのだということを明確に認識してもらうことで、彼らの改善意欲の喚起を図るのです。成果の報告は毎月「作業検討会」を開催するなどして行うと良いでしょう。歩留り率や機械の故障件数の推移をグラフにして報告します。
 一方、教育についてはビデオ教育や他工場の見学会の開催がお勧めです。

従業員を褒めることも大切

 ここで3S活動の実施の手順を簡単に解説します。
 まず第1ステップとしては、半年以上使ったことのない、工具、冶工具、設備機械などを工場とは別の保管場所(倉庫など)に集めてしまうことです。その上で、工場レイアウトや作業の導線(通路や器物位置)を考えながら、一番使いやすい場所に再配置していきます。不要品については廃却します。
 さらに2番目として、“看板作戦”を行います。工具の保管場所の前に「この場所にはこんな工具が置いてある」ということを表示する看板(プレート)やシールを貼っていきます。例えばスパナの置き場所に「スパナ」と記したテプラを貼るなどします。
 3番目には、空調の掃除やデコボコしている床面の補修など、自社では難しい作業を専門業者に頼んで行ってもらいます。
 以上の3つの作業を終えた後は、以前よりも整理されてきれいになった工場を、従業員たちに維持管理してもらうように働きかけます。さらに維持するだけでなく、整理・整とん・掃除をみんなが自発的に行えるようになればしめたものです。そのためには、自らの相違工夫で職場環境の改善に取り組んでいる者に対しては、「よいアイデアを考えついたね」といった具合に褒めてあげることも大切です。
 私が以前にコンサルティングした、ある金属加工メーカーは、まさにこのやり方で3S活動を軌道に乗せました。リーダーのやる気があれば、3S活動は必ず実行できます。「たかが3S、されど3S」です。効果は必ず得られますので、是非とも取り組んでみてください。

提供:株式会社TKC(2004年3月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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