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結論から申し上げます。金融機関のマッチングサービスは、自己責任原則を念頭におきながら、大いに活用してください。
大手銀行の個人の取引先は1000万件をはるかに越え、企業件数も数10万社、貸出先も10万社近くあります。これだけの情報を持っている銀行が、その取引先の紹介をしてくれるわけですから、こんなに有難いことはないと思います。
しかし、企業は生き物です。急に業績が悪化することもあれば、銀行に対して隠し続けている情報もあります。銀行の情報がいくら多いといっても、貴社が知りたい情報をすべて持っているわけではありません。まして、取引先として貴社が知りたい情報と、預金先、貸出先として銀行が知りたい情報は違います。この点、銀行に将来の取引先として紹介をして貰った企業といえども、安心して取引ができるという保証はありません。取引先になる企業は、貴社の将来の業績や与信リスクなどを左右する存在なのですから、自己責任原則でしっかり見極めることが大切です。
さて、総論はこれくらいにして、現時点における金融機関のマッチングサービス活用の留意点をお話しします。それは、次の5点です。
(1) |
貴社の担当者・担当支店にマッチングサービスへの認識はあるか否か。 |
(2) |
取引銀行にマッチングサービスの態勢があるか否か。 |
(3) |
マッチングサービスが貴社の長期戦略に合致しているか、また銀行の経営相談業務が充実しているか否か。 |
(4) |
銀行に対し貴社がマッチングサービスを求める企業について、5W1H(どの方面で、何をしており、どんな経営者と従業員の企業をいつまでに紹介してもらうのかなど)を明確にして申し込むことができるか否か。 |
(5) |
紹介後、その企業と貴社の取引親密化に対する銀行の支援態勢はできているか否か。 |
銀行の実施態勢が不十分
これら5つの留意点に、なぜここまで冷ややかなのかと疑問を持たれるかもしれません。そこには事情があります。実はバブル崩壊後10年以上にわたって不良債権処理に取り組んできた多くの銀行にとって、今は経営相談業務とビジネスマッチングサービス業務のスキルが最も低下しているときだからです。
しかし、現在、政府・金融庁が地域金融機関に旗を振っている「リレーションシップバンキング施策」(心の通うお付合い)の推進のためには、この経営相談業務とビジネスマッチングサービス業務は必須です。そして、それを実現するには、銀行内の取引先データベースの構築とシステム開発が必要です。それがないことには行員のスキルアップもマッチングサービスも具体化することはできません。当然、かなりのコストがかかります。だから受益者負担で利用者から手数料をとることになったわけです。
ところが、金融庁の「リレーションシップバンキン施策」が公表されたのは平成15年3月、またビジネスマッチングサービスの業務に手数料を徴収できるという「事務のガイドライン」が公表されたのは平成15年6月末です。したがって銀行サイドにこのサービスを実施する態勢が十分にできていないというのが実状で、貴社がこのサービスに大きな期待を持つことは、2階に上がって梯子をはずされる可能性もあるということです。
手数料を支払ってまでこのサービスをお受けになるというならば、自己責任原則の考えを持ちながら上記(4)の点と、銀行に対しては(5)の点をしっかり念を押したうえで進まれることをお勧めします。
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