Q&A経営相談室
【マーケティング】
ポイントカードの効果的導入法
 
Q:
 ポイントカードの導入を考えていますが、何からはじめ、どういうことに留意すればよいのか教えてください。(食品小売業)
 
<回答者> データブレーンDMプロデューサー 南原克己

A:
 導入前に真剣に考えていただきたいことは、「本当に競合他店との差別化になるのか」「売上げ増減は顧客満足度の結果だが、導入することによって本当に顧客に満足を与えられるのか」…の2点です。
 他店が導入しているから自店にも…という考え方では、ポイントの還元率・割引率など値引き競争に陥り、これではただの消耗戦になってしまいます。ポイントカードは万能薬ではありません。まずは顧客満足度を上げること。品揃え、品質、接客、清潔さ…等での差別化ができていて、他店よりも十分勝っているかということを検討するべきで、カード戦略はそれを踏まえたプラスアルファの策であることを認識しなければなりません。
 昨今は、小売サービス業でのポイントカード導入が広まっていますが、カード戦略とは、ある程度の規模のビジネスだと考えます。カード単価やカードリーダー、システム構築のコストは導入規模が大きくなればなるほど1店舗当りは安くなります。チェーン店の場合にはコストのスケールメリットが見込めると思います。これを個店や小規模チェーン店に活かそうとすると、メリットはあまり期待できないと考えます。
 一般的にカード発行の意義は次の4点です。(1)固定客化の促進、(2)次回来店の促進、(3)新規客吸引、(4)顧客管理です。小・中規模店の場合には、限りなく(1)と(2)に焦点を絞るべきです。(3)は、カードを持てば5%割引になります、といったような視点ですが、これはカード戦略としては邪道で、カードスタート時や新規出店時の期間限定ならともかく、初回からというのは単なる値引きとなりお勧めしません。(4)の顧客管理については、ケースバイケースでお店の規模・社内体制を踏まえて導入していく事が大切です。

ハンコ・シール形式でも十分

 次に、どのようなカードを発行すべきか…ですが、カードにはアナログシステム(紙カード)とデジタルシステムがあります。どちらを利用すべきかはケースバイケースであり、カード発行の目的を再来店に絞るなら、実は紙カードとハンコ、シール形式で十分なのです。デジタル式カードの場合には、当然のことながらコストはかさみます。カードの種類にもよりますが、1枚あたり50〜100円程度。カードリーダーも機械・機能の程度にもよりますが、端末PCも含めて1セット15〜25万円程度は見ておかなければなりません。しかもそこにはシステム構築や通信費、顧客管理に関する設備は全く含まれていません。機械の導入はただの設備投資であり、デジタル式カードを導入して利益が上がる保証はなく、途中で中止してもリース料(分割払いの場合)は契約期間内は支払い続けなくてはなりません。これらのリスク、コストを負担してまでカード導入を図るべきかは、十分検討の余地があります。多くのポイントカード(デジタル式)販売会社は、顧客情報の入出力や分析の業務も請け負っていますが、分析した数値から現状把握し、どのように販促すれば店舗利益が出せるのかの的確なアドバイスがなされていないのが現状です。また、管理している顧客データを渡さないポイントカード会社もありますので契約時には注意が必要です。
 したがって、デジタルシステム(ポイントカード)は即、売り上げに直結するシステムではなく、逆に設備投資が大きく負担になりかねないと考えます。また、食品小売業において客単価はある程度一定の金額で推移するため、百貨店と違って客単価の高低差が無く、来店頻度が明確になれば、初期は紙カードでも顧客層の区分は十分可能でしょう。  

提供:株式会社TKC(2004年1月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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