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取引先に倒産の兆候を察知したら、すぐに(1)現金取引に変える、(2)売掛金を手形化してもらう、(3)経営者に個人保証をしてもらう、(4)売掛金債権を“公正証書”にしておく、等の対応をとることが必要です。
(1)
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現金取引に変える
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企業活動を行ううえですべてに現金取引を要求していては取引先を増やしたり、事業を拡大することはできません。しかし、取引先に倒産の兆候が見えたら、直ちに取引先に与えていた信用取引(売掛金や手形取引等)の枠を減らして、できれば現金取引に変えてください。
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(2)
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売掛金を手形化してもらう
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有手形取引には▽支払いを拒絶すると不渡り処分という強い制裁が下って信用を失い以後銀行と取引できなくなってしまうので、債務者は手形債務の決済を優先的にせざるをえない、▽手形は譲渡できるので支払期日前であっても手形割引等で現金化できる、▽手形請求のためには手形訴訟という特別の訴訟手続が用意されているので簡易迅速に債権回収できる――といった特徴があるので、普通の売掛金より手形債権のほうが債権者にとっては安心といえます。
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(3)
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経営者に個人保証してもらう
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法律上、会社の債務について責任を負うのは会社だけであり、経営者には責任追及できません。そこで経営者から個人保証をとっておく必要があります。その際には、資力のある者から個人保証をとります。いくら個人保証をとっても、その者に資力がなければ何の意味もありません。個人保証のとり方は別個に保証書等を作るのが基本ですが、手形に裏書させるとか、借用書に添え書きしてもらうだけでもかまいません。
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(4)
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売掛金債権を“公正証書”にしておく
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個々の売買契約書をすべて公正証書にしておけば安心ですが、日々多数行われる取引をいちいち公正証書にしておくのは手数がかかり、到底不可能です。そこで倒産の兆候を察知したら、その時点で売掛金残額について公正証書を作成するといいでしょう。このときは「債務弁済契約公正証書」を作成します。公正証書は、裁判の判決と同じく債務名義としての効力をもつので、公正証書にしてさえおけば、取引先が支払いを怠った場合、直ちにその財産を差し押さえることができます。
ただし、この公正証書が▽金銭債権に関するものであり、▽この公正証書によって直ちに強制執行しても異議はない旨の強制執行許諾文言が記載されていないと、債務名義としての効力はもちません。その点、注意が必要です。
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支払いが滞りだしたら
売掛金の支払いが滞りだし、倒産の心配が現実のものとなってきたら、あらゆる方法で確実に債権回収する努力をしなければなりません。主な回収方法としては(1)内容証明での請求、(2)債権譲渡、(3)相殺――があげられます。
(1)
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内容証明での請求
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内容証明郵便を利用することで、請求した事実が後日の有力な証拠として残るだけでなく、請求に応じなければ裁判になってしまうという心理的圧迫を与えることができ、支払いを促す効果があります。
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(2)
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債権譲渡
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倒産寸前の会社であっても、多少は売掛金などの債権を持っているのが普通です。この債権の譲渡を受けることによって債権を回収するのです。債権譲渡を確実なものとするには、譲渡された債権の債務者へ、譲渡人から内容証明郵便で通知をしてもらわなければなりません。
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(3)
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相殺
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相殺とは、互いに債権を持ち合っている場合に、一方が他方に通知することで双方の債務を対等額で消滅させる制度で、この場合も内容証明郵便で通知するのが肝要です。相殺は最も簡単で効果的な回収方法です。
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