Q&A経営相談室
【労務管理】
技能優秀な社員を定年後再雇用したいが…
 
Q:
 技能優秀な社員が定年を迎えます。定年後に再雇用したいと考えていますが、どんな方法・条件があるのでしょうか。(自動車部品製造業)
 
<回答者> PANフィールド・リサーチ所長 鍋田周一

A:
 定年後も引き続き雇用を継続する方法には、(1)定年延長、(2)再雇用、(3)雇用(勤務)延長、の3つがあります。
 (1)定年延長は、それまでの定年制を改定し、定年年齢を引き上げるものです。が、これはすべての社員の定年年齢を一律に引き上げることになり、残って欲しい人材だけを会社が選別することができません。
 (2)再雇用は、いったんすべての社員を定年で退職させ、その上で引き続き働き続けたいという意思のある社員の中から、会社が認めた者に限って、その者との間に改めて雇用契約を結び直すものです。
 (3)雇用(勤務)延長は、会社が定年後も活用したい人だけについて、定年退職手続をとることなく例外的に雇用継続するものです。
 会社にとって必要な人材のみを対象に、定年後の労働条件を明確に示し、かつ、本人の意識の切り換えを求めるという点において、ここでは定年退職と新たな条件での採用が一体となった(2)再雇用の方法をお勧めします。
 手順としては、通常の定年退職手続を進めるのと並行して(できれば定年退職を迎える日の数ヵ月前から始めるのが望ましい)、対象となる方が定年後も引き続き貴社での就労継続を希望しているかどうかの意思確認を行い、その上で定年後再雇用の労働条件を示し、合意の後に雇用契約を締結します。
 つまり、再雇用の場合であっても、退職金を払っていったん雇用契約関係を終了させるという点では通常の定年退職手続と何ら変わるところはありませんし、新たな雇用契約を取り交わすという点では通常の採用行為とも何ら変わりがないことになります。

再雇用は有期契約で

 したがって、再雇用の際にも、通常の雇い入れの場合と同様、労働基準法、同施行規則、厚生労働省令にもとづき、以下の労働条件については書面によりその内容を明示しなければなりません。
 1.労働契約の期間
 2.就業の場所および従事すべき業務
 3.始・終業時刻、所定外労働の有無、休憩時間、休日、休暇
 4.賃金の額、締切・支払の時期
 5.退職に関する事項
 このうち労働契約期間についてですが、定年前はいわゆる正社員であり、労働契約の期間は定めていなかったと思います。しかし定年後は、会社にとっても本人にとっても、お互いにメリハリのある契約関係を保つため、有期契約とするのが一般的です。
 今回の労働基準法改正に伴い、契約期間の上限は、労働者が満60歳以上の場合で現行の3年から5年に延長されますが、1年契約とし、お互いの様子を見ながら必要に応じて毎年契約を更新してはいかがでしょうか。
 また賃金は、定年前と仕事の内容や責任の重さ、労働時間が変わらないのであれば、理論的には従前と同じとすべきですが、高年齢者雇用継続給付金制度や在職老齢年金制度からの公的給付の活用を見込んで、賃金水準を設定することもよく行われています。詳細は社会保険労務士に相談されるとよいでしょう。ただこの場合でも、賃金が法定最低賃金を下回ることのないよう注意してください。
 定年後再雇用制度で一番大事な目的の一つは、高齢者の優秀な技能を確実に後輩に伝承することです。定年前と同じ職場で、同じ職務に従事させることになるとはいえ、この目的を本人はもちろん、職場の上司・後輩に十分明確に意識させることも大切なポイントでしょう。 

提供:株式会社TKC(2003年10月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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