IT投資促進税制は、真に有効な分野に集中的に政策効果を高めるとの観点から、平成15年1月1日から平成18年3月31日までの期限を区切り、一定の情報通信機器やソフトウエアを取得して、国内の事業の用に供した場合には、平成15年4月1日以後に終了する事業年度において、その取得価額の50%の特別償却と10%の特別税額控除(法人税額の20%が限度)との選択適用を行うことができるという制度です。また、資本金3億円以下の法人については、対象となる情報通信機器等をリースにより使用する場合にもリース費用の総額の60%相当額を対象として、同様の特別税額控除を行うことが認められます。
取得の場合の対象設備の要件は、その事業年度において表の(1)から(8)までの機器については取得価額の合計が600万円以上(資本金3億円以下の法人については、140万円以上)、(9)のソフトウエアについては600万円以上(資本金3億円以下の法人については、70万円以上)となる場合に適用されます。
IT投資促進税制対象設備
(1)電子計算機 |
(2)デジタル複写機 |
(3)ファクシミリ |
(4)ICカード利用設備 |
(5)デジタル放送受信設備 |
(6)インターネット電話設備 |
(7)ルーター又はスイッチ |
(8)デジタル回線接続装置 |
(9)ソフトウェア |
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ご質問の場合も、ソフトウエア自体は上記の要件を満たす限り本税制の適用対象となりますが、「先に支払う一定料金」がソフトウエアの取得価額に含まれるかどうかの問題があります。この費用がソフトウエアの本体価額とは別に、取得後のバージョンアップのための費用としてあらかじめ支出しておくというものであれば、これから役務の提供を受けるための費用の前払と考えられることから、ソフトウエアの取得価額には含まれないと考えられます。その場合には、バージョンアップのための費用を含まないソフトウエア本体のみの取得価額の合計額が、一定の金額を超えるかどうかにより判断することになります。
特別償却か税額控除か
また、取得価額の50%の特別償却と、10%の税額控除のいずれを選択するかは、迷うところと思われます。ソフトウエア等の設備投資した事業年度の税負担を少しでも軽くしたいと考える場合は、特別償却が効果的ですが、資金繰りにゆとりがあるのであれば、税額控除の選択も視野に入れるべきでしょう。
ソフトウエアは、無形減価償却資産に該当し耐用年数5年(複写して販売するための原本は3年)の定額法で償却することとされています。特別償却を選択した場合、初年度は確かに税負担は減少しますが、5年後において通算した場合には税負担は変わらないことになります。
一方、税額控除は、取得価額の10%について、法人税額から直接控除できる制度です。普通償却は通常どおりできますので、税額控除分はそのまま税負担減少につながると言えます。税額控除しきれなかった金額は1年間の繰越控除が認められていることも考慮にいれ、どちらを選択するかの検討をする必要があると思います。
なお、(1)取得価額10万円未満の減価償却資産の損金算入、(2)取得価額20万円未満の一括償却資産の3年償却及び(3)取得価額30万円未満の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(本年の税制改正で創設)を適用した場合のその資産は、本制度の適用対象とはなりませんので注意を要します。