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近年、話題の商業施設が数多く開業し、メディアにも取り上げられていることから、商業施設への出店に興味を持っている経営者は多いことでしょう。そこで、初めて商業施設へ出店する場合の判断基準と注意点を説明します(なお、駅ビルや再開発商業ビル、地下街、郊外のショッピングセンターなどをひっくるめて「商業施設」と呼んでいます)。
1.商業施設の客層を把握する
商業施設は、駅ビルや地下街のように核テナントがないものから、百貨店やスーパー、ホームセンターなどが核テナントになっているものまで、それぞれの特性によって利用客の来店動機は異なります。自店が対象とする客層と、商業施設側が狙う客層の利用動機が同じ傾向かどうかを確かめなければなりません。商業施設の誘致担当者の話を鵜呑みにするのではなく、いろいろな角度から情報収集し判断すべきです。
2.出店条件の検討は売上計画から
商業施設の場合、共用部分(通路やエレベーター、エスカレーター、トイレなど)の管理費用をテナントが分担する仕組みになっているため、共益費はかなり高額です。また、入居前には開業時販促費や内装管理費が、入居後も販促費、駐車場負担金、テナント会費、POSレジ・構内電話・ロッカー・倉庫などの使用料といったさまざまな費用が、賃料の他に毎月発生します。
これらの条件は「相場」で判断するのではなく「出店試算表」を作成して検討します。こうした試算表の作成方法がわからない場合は、専門書を参考にするか、専門家に相談するといいでしょう。
3.出店要請の時期に注意
新しい商業施設のテナント募集は開業の約1年前にはスタートし、人気のある商業施設の場合、早い時期に締め切られてしまうのが普通です。出店要請が、どの時期にあったのかに注意してください。開業近くに打診があった場合には、当初のテナント予定者から出店を断られた結果、という可能性もあります。もしそうならば、なぜ当初のテナントが出店を断念したのかを調べてみる必要があります。
4.経験のあるブレーンを揃える
商業施設の出店条件(賃料や工事区分など)は、テナントごとに異なっているのが普通です。つまり、募集要綱に記載されている条件は、一般の不動産物件と違い、大いに交渉の余地があるということです。こうした交渉には知識やテクニックが必要なので、適切なサポートを得られるブレーンがいるかいないかで出店の採算性が大きく変わります。
5.契約書の検討
商業施設の休日は年間で決められており、それ以外の日にテナントが勝手に休むことはできません。個人店の場合はこれがけっこう負担になることがあります。また、売上金は一括して規定の口座に入金し、支払金額を差し引いてからテナントに戻されるという方式が多くとられています。常に現金が手許にある路面店の場合とは資金繰りが変わってきますから注意が必要です。
その他、契約面積や退店時条件の検討も必要になります。
リニューアル募集を狙う
商業施設に出店しさえすれば確実に大きな売上が得られたのは過去のこと。現在の商業施設は「勝ち組」と「負け組」が明確になりつつあり、比較的業績の良い商業施設でも、テナント間の売上には大きな開きがあります。
そういった意味で、募集は少ないですが、初心者は実績のある既存施設のリニューアル(空きテナント)募集を狙う方が確実です。
商業施設は特殊な要素が多く、著名な繁盛店でも失敗のケースが多々あります。商業施設に出店を検討するならば、まず経験が豊富で信頼できる専門家に相談してみることをお勧めします。
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