Q&A経営相談室
【危機管理】
取引先倒産による連鎖倒産を防止するには
 
Q:
 最近、取引先の不測の事態に備えた連鎖倒産防止策の必要性をひしひしと感じます。効果的な方策があったら教えてください。(建設資材卸売業)
 
<回答者> 中小企業総合事業団 共済推進部 次長 辺見洋一

A:
 連鎖倒産防止のための国の施策の1つに「中小企業倒産防止共済制度」があります。
 本制度は取引先の倒産に遭遇した中小企業者が売掛金債権等の回収が困難になることにより、自ら連鎖して倒産したり、著しい資金繰り悪化に陥ることを防止するために、昭和53年に中小企業倒産防止共済法に基づいて創設されました。現在約38万の企業が在籍しており、平成13年度は貸付件数約1万5000件、金額で1100億円の資金を供給するなど、まさに我が国の中小企業施策におけるセーフティネットとして重要な役割を果たしています。
 この制度は中小企業総合事業団が運営するもので、次のような特色があります。
(1)取引先が倒産した場合、最高3200万円までの共済金貸付が受けられる。
(2)共済金貸付は無担保・無保証人・無利子。
(3)掛金は損金または必要経費になる。
(4)一時貸付金制度も利用できる。

 この制度は別表の条件に該当する中小企業者で、引き続き1年以上事業を行っている方が対象となります。ご質問者の場合は卸売業となるので、資本の額又は出資の総額が1億円以下であるか、従業員数が100人以下のいずれかの条件を満たせば加入できることになります。
 毎月の掛金については、5000円から8万円の範囲で5000円刻みで自由に選択することが可能となっているので、ご自身の企業の経営状況に合わせて選択することができます。また、掛金総額320万円になるまで積み立てすることができます(掛金は税法上、個人事業の場合は必要経費に、法人の場合は損金に算入することができます)。
 共済契約の解除は契約者の意思でいつでも可能です。掛金の納付月数が12月以上であれば解約手当金が支給されます(納付月数に応じて掛金総額80%から100%の率を乗じて得た額)。

臨時の事業資金貸付も

 契約者は本制度に加入後6ヵ月以上経過して、万が一取引先事業者が倒産し、売掛金や受取手形などが回収困難となった場合に、積み立てた掛金の10倍の範囲内で被害額相当(3200万円が上限)の共済金の貸付けが受けられます。ここでいう倒産とは1.破産、再生手続き開始、更正手続開始、整理開始、または特別清算開始がなされた場合、2.手形交換所に参加する金融機関で取引停止処分を受けた場合、のいずれかに該当するものを言い、「内整理」や「夜逃げ」等は対象にならない点に注意をする必要があります。
 貸付条件は無担保、無保証人で、償還期間は5年(据置期間の6ヵ月を含む)の均等償還となっており、取引先の倒産で資金繰りに苦慮する中小企業にとっては返済しやすい配慮がされた条件となっています。
 なお、留意いただく点は共済金の貸付を受けた場合、共済金貸付額の10分の1に相当する掛金の権利が消滅する、ということです。従って、その後別の取引先事業者が倒産したことにより共済金の貸付けを受ける場合や解約手当金の支給を受ける場合には、この権利の消滅した掛金は共済金または解約手当金の算定の基礎となる掛金総額から除かれることになります。これは、本制度が中小企業の方々の相互扶助の精神に基づく共済制度であり、共済金貸付額の10分の1の額などが、他の方々の貸付けの原資等となっていることによるものです。
 なお、取引先事業者に倒産の事態が生じていない場合でも、解約手当金の範囲内で臨時に必要な事業資金の貸付が受けられる一時貸付金制度も設けられております。
 本制度の趣旨を十分ご理解いただき、ぜひこの制度にご加入いただきたいと思います。

提供:株式会社TKC(2003年4月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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