Q&A経営相談室
【法 改 正】
労基法の改正でパート社員等の契約期間は最長3年に
 
Q:
 パート社員や契約社員などの「契約期間」が現在の原則1年から延長されるそうですが、その内容を詳しく教えてください。(飲食業)
 
<回答者> 社会保険労務士 山本礼子

A:
 バブル崩壊後、雇用形態の多様化が進んでいます。正社員だけでなく、パートタイマー、契約社員、嘱託社員、派遣社員など、雇用形態が実に様々になってきています。こうした多様な働き方のニーズに応えるため、今国会に労働基準法の改正案が提出されています。
 第1の改正ポイントは、労働契約期間の延長です。パート社員などが事業主と結ぶ期限付きの労働契約は「有期労働契約」と呼ばれ、期間の定めのない労働契約を結ぶ正社員と区別されています。現在の契約期間は上限が1年のため、それ以上の期間にわたり雇用する場合は、1年ごとに契約を更新しなければなりませんでした。そこで、労使双方にとって、もっと扱いやすいものにする狙いから、今回の改正案では最長3年までの契約を可能にしました。
 また、高度の専門知識などを有する労働者の場合と、60歳以上の労働者に関しては、上限3年の特例が、5年に延長されます。高度の専門知識を有する労働者とは、公認会計士、医師などが該当します。
この専門職労働者の場合は従来、新たな採用者に限られていましたが、今回この要件はなくなり、既存の契約社員との間でも5年契約を結ぶことができます。60歳以上の高齢者に関しては業務の種類に制限がないので、定年後に5年の再雇用契約を結ぶことができます。
 この有期労働契約の期間が延長されると、実務上では労働契約を結ぶとき、期間満了時・更新・雇い止めの際に関する基準を設けることが必要です。具体的には、一定期間以上雇用された有期契約労働者について契約更新をしないときには、更新しない旨を予告することなどが定められる予定です。
 今後は、トラブルが発生しないように契約書に更新や雇い止めなどの事項を明記しておくことが重要になります。また、就業規則についても、契約社員用のものを別途作成するなどして、退職金など正社員と異なる処遇があれば明確にしておくことが大切です。

裁量労働制の改正点

 第2の改正ポイントは、裁量労働制の拡大です。具体的には、1.これまで煩雑であった企画業務型の裁量労働の導入手続き要件が緩和される、2.対象事業場が拡大される、の2つです。
 企画業務型とは、経営企画、人事、財務など「企画・立案・調査・分析」の業務を行う労働者が対象です。業務遂行の方法や時間配分を労働者本人の裁量に任せ、労働時間は実際の労働時間ではなく、協定で定めた労働時間とします。
 現在は、この制度を導入・運営するにあたり、労使で設置した「労使委員会」での決議が全員一致となっていますが、これを5分の4以上の決議へと条件を緩和します。また、労働者代表委員に関しては労働者の過半数の信任が必要という「要件」、委員会の設置に関しては労働基準監督署への届出が必要という「要件」が、いずれも廃止され、手続きが簡素化されます。
 一方、対象事業場に関しては、これまで「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」(本社)に限定されていましたが、本社以外でもできるようになります。ただし、働きすぎにならないように、裁量労働をしている労働者は産業医等による助言・指導を受けさせるなど、健康面に配慮した措置をとることが必要です。
 このほか、今回の労働基準法改正案では、解雇理由文書を交付することや、就業規則に解雇の事由を明確にすることなど、解雇ルールの法制化も盛り込まれています。
 これらの改正法案が国会で可決されると、平成15年10月頃に施行される予定です。

提供:株式会社TKC(2003年4月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
戻る ▲ ページトップへ戻る