Q&A経営相談室
【法 改 正】
サービス業も対象になる下請法改正4つのポイント
 
Q:
 今国会で下請法が改正され、新たにサービス業も規制の対象になると聞きました。改正内容を教えてください。 (ソフトウエア開発業)
 
<回答者> 桐蔭横浜大学法学部教授 鈴木 満

A:
 下請法(正式名は「下請代金支払遅延等防止法」)は、親事業者が優越的な地位を利用して下請事業者に不利益を与える行為を禁止するため独占禁止法の特別法として1956年に制定されました。それが、このたび47年振りに、規制対象範囲を拡大するなどの大幅改正が行われようとしています。
 改正点は大きく分けて次の4点が予定されています。

1.規制対象にサービス委託分野を追加
 ご質問にもあった通り、従来の部品の「製造委託」「修理委託」に加えて「サービス委託」が規制対象となることが見込まれています。日本の製造業は重層的な下請構造で世界的に有名ですが、最近では、経済のソフト化・サービス化、IT化の進展に伴って、運送業、ビルメンテナンス、コンピュータ・ソフト開発、放送番組制作などのサービス分野においても下請取引が広範に見られるようになりました。この分野でも優越的地位乱用行為が頻発しているという調査結果も出されています。こうした実態が規制対象拡大の背景となっています。
 また、金型の製造委託についても下請法の規制対象になる旨が明確にされる予定です。

2.取引記録関連規定での罰則金額の引き上げ
 下請法では親事業者に対し、下請事業者と取引する都度「注文書」の交付を義務付けるとともに、下請取引の記録を2年間保存する義務も課しています。この義務違反に対する罰則金が、従来の3万円から大幅に引き上げられる予定です。

3.禁止項目に協賛金や従業員派遣の強要を追加
 親事業者が注文した部品の受領拒否・返品・値引き・代金の支払遅延、買いたたき、原材料等の強制購入等を禁止する規定に、新たに協賛金や従業員派遣の強制が加えられる見込みとなっています。

4.悪質親事業者の社名の公表
 親事業者が禁止行為を行った場合、公正取引委員会が現状回復措置(受領拒否・返品の場合は部品の引取り、値引きの場合は値引き分の返還、支払遅延の場合は支払いなど)を勧告することになっており、従来は、この勧告に従えば、社名が公表されることはありませんでした。これが違反を繰り返すなどの悪質な親事業者に対しては、勧告に従うかどうかにかかわらず企業名が公表できるように改正される予定です。

規制対象企業が倍増

 公正取引委員会が運用する法律は、「独占禁止法」「景品表示法」「下請法」の3つがありますが、この中で中小企業ともっとも関わりが深いのが下請法です。下請法は、独占禁止法や景品表示法とは異なり派手さはありませんが、行政側から現状回復を求めるという性質上、かなり強力な法律だといえます。
 また下請法では、被害者が公正取引委員会に訴えるのを待って調査を行うという仕組みは採用されていません。下請事業者は、不利益を受けた場合でもその旨を公正取引委員会に訴え出るということはまず考えられず、したがって独占禁止法の申告制度はワークしないと考えられているのです。こうした観点から制定された法律であるため、公正取引委員会は、毎年、親事業者(になり得る者)約1.8万社及び下請事業者約9.4万社に対して調査表を送付し、違反行為の発見に努めています(中小企業庁は各3.9万社、3.5万社を毎年調査)。
 親事業者としての規制対象は、資本金1000万円超とかなり広範にわたっています。さらに今回の改正が施行されれば、製造業のほかにサービス業を営む事業者も規制対象になるので、調査表を受け取る事業者が何倍にも増えることになると推測されます。これを機会に、下請法という法律を再認識されてはいかがでしょう。

提供:株式会社TKC(2003年3月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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