Q&A経営相談室
【税制改正】
外形標準課税は減資すれば適用を免れるのか
 
Q:
 平成15年度の税制改正で、外形標準課税が適用されると聞きました。当社は資本金が1億2000万円ですが、資本金を1億円以下に減資をすれば、適用を免れるのでしょうか。また、減資の際の注意点についてもご教示ください。(機械部品製造業)
 
<回答者> 坂部税理士事務所 税理士 坂部達夫

A:
 自民党の平成15年度税制改正大綱に盛り込まれた外形標準課税は、平成16年4月1日以後に開始する事業年度から適用されることになっています。まだ、適用期限までは多少の猶予がありますから、何らかの手だてがあれば対応しておきたいものです。まず、外形標準課税の概要を簡単に説明しておきます。
 対象法人は資本の金額又は出資金額が1億円を超える法人をいいます。課税標準は、「所得割」と「付加価値割」、「資本割」の合計額です。「所得割」とは、従来からある法人税の課税標準と同じ所得により計算します。「付加価値割」とは、その事業年度の給与総額と純支払利子(受取利息と支払利息との差額)、純支払賃借料(支払家賃と受取家賃との差額)及びその年の損益(繰越欠損金控除前)を合計して計算します。「資本割」は、資本金と資本積立金額との合計額をいいます。税率は、原則として、所得割については現行どおりの3段階課税(税率は3.8%、5.5%、7.2%)で、付加価値割については0.48%、資本割については0.2%とされています。 
 外形標準課税の対象法人は、資本の金額又は出資金額が1億円を超える法人をいいますが、これは商法上の(企業会計上も同意義ですが)資本金をいい、資本積立金を含みません。この場合、各事業年度終了の日における資本金額にて判断することになります。

減資についての商法改正

 その事業年度末の資本金額又は出資金額が1億円以下の法人は、外形標準課税の適用がありません。従ってご質問の場合には、2000万円を減資して、資本金を1億円以下にすれば、外形標準課税の適用を免れることができます。
 ところで、平成13年、14年に商法の大幅な改正があって、減資についての取り扱いに大きな変更がありましたので、ご説明します(ここでは、紙面の関係上、株式会社を前提に話をすすめます)。
 従来は減資については、株主総会の特別決議により、有償あるいは無償により株式消却するか、無償により株式を併合する方法で、株式数を減らす方法が一般的でした。しかし、平成13年6月の商法改正により、額面株式が廃止されることになり、減資しても株式数を減らす必要はなくなり、株式を消却したり、併合したりする必要もなくなりました。
 また、会計上の取り扱いも変わっていますので要注意です。無償減資の場合、資本金の減少額そのものが、有償減資の場合には株式の払戻金と資本金の減少額との差額が「減資差益」として、資本準備金に表示されてきました。今回の改正では、資本準備金ではなく、その他の資本剰余金の部に、「資本金及び資本準備金減少差益」として表示することになりました。これは、資本準備金だと取り崩しに株主総会の決議が必要になり、減資と資本準備金の取り崩しそれぞれに特別決議が必要であるという、使い勝手の悪さを改善するという趣旨からできたものです。また、平成15年4月1日以降については、商法上、「減資差損」が生じる減資はできなくなりました。
 次に、税務上の取り扱いにも簡単に触れておきます。資本の減少は資本取引ですから、減資差益が生じても課税されないのは従前の取り扱いと同じです。無償減資の場合には、資本金減少額に相当する金額を「資本積立金」に加算します。従って、資本等の金額には変化がないことになります。有償減資の場合には、減資に伴って特定の株主が有する株式を任意消却することはできなくなりましたので、「自己株式の取得」と「自己株式の消却」の方法によることになります。この場合、無償減資の場合には「見なし配当課税」が行われませんが、有償減資の場合には、「見なし配当課税」が行われることに注意しなければなりません。

提供:株式会社TKC(2003年2月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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