Q&A経営相談室
【資金調達】
グリーンシート市場登録のメリットとは…
 
Q:
 未上場企業でも株式を公開できるというグリーンシート市場に興味があるのですが、どのようなもので、登録するとどんなメリットがあるのでしょうか。(システム開発業)
 
<回答者> ディー・ブレイン証券 社長 公認会計士 出縄良人

A:
 グリーンシート市場は、日本証券業協会が1997年に開設した未上場企業のための証券市場です。そのなかには3つの銘柄区分がありますが、最も注目されているのが「エマージング銘柄」と呼ばれるもの。ここでは成長を志す中堅・中小企業の公募増資が、ディー・ブレイン証券などの証券会社を通じて行われています。
 従来、株式を上場するためには、売上規模にして30億円程度は必要でした。ところがグリーンシート市場では、2、3億円もあれば十分。成長性が認められれば、1億円に満たない企業でも赤字企業でも登録できます。増資額は1億円弱くらいが多く、大きいところでは2億5000万円を調達した企業もありました。登録手続きの流れはフローチャート(下図)を見ればお分かりいただけると思います。平成14年12月3日現在で40社(エマージング銘柄)が登録され、最近になってその数は急増しています。背景には同市場の知名度の浸透と昨年2月の登録条件緩和(監査資料提出義務が2決算期から1決算期に変更)があります。

目的は「ファンづくり」

 グリーンシート上場のメリットについては、具体的な事例で説明しましょう。
 中国料理の専門店を展開する大秦という会社は、グリーンシート市場で1億円を調達しました。約300人の個人投資家が参加したわけですが、実はその多くがお店の顧客でした。つまり、これら投資家は一ファンとして、長期的な視野から大秦を「育てていこう」という意識を持った方々なのです。
 周知の通り通常の証券市場では、株式投資の目的は、買った株を売買して利益を得ることです。投資家はその企業への思い入れというよりも、マネーゲームとして株式投資を考えています。ところがグリーンシートの場合、この大秦の例のように、顧客や取引先など、その企業の何らかの縁のある方々を優先して募集します。なぜなら、グリーンシートはこれから成長しようとする企業を扱うわけですから、経営者や事業の理念に共感して、長期的な投資をしてくれる「ファン」が必要だからです。そして、その投資家たちは、大秦の例でいうと、お店に頻繁に訪れたり自分の顧客を連れて行ったりすることでダイレクトに応援することができます。要するに、グリーンシートによる増資は「拡大縁故増資」とでも呼ぶべきものなのです。
 しかも、通常の縁故増資と違って、登録時に「成長性」「社会性」「リスク」などが審査され、その審査にパスした後も監査法人の監査付きのディスクロージャーが継続的に行われます。また、日本証券業協会の運営する市場に登録されているので、何かあったときは売ることも可能。つまり、通常の縁故増資と比べて、信頼性と客観性あるいは柔軟性の面ではるかに勝っているわけです。またもちろん、マスコミなどにも紹介されますから知名度は増し、社会的な信用も得ることができます。
 さて、グリーンシート市場への登録、公募、増資まですべてを完了するためには、一般的には700万円程度のコストがかかります。けして安くはありませんが、1億円集めることができれば、9300万円残り、700万円はその調達コストと考えてください。加えて、グリーンシート市場に登録すれば、金融機関からの信頼感も確実に増します。一概にはいえませんが、1億円の増資を行うと、銀行から1億円の融資枠を獲得できるというイメージです。つまり、700万円の調達コストで2億円の資金が獲得できる…こう考えれば安いのでないでしょうか。(インタビュー・構成/本誌・高根文隆)

 【問合せ先】ディー・ブレイン証券 03-5645-8808 

提供:株式会社TKC(2003年1月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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