Q&A経営相談室
【マーケティング】
顧客データベースの戦略的活用法
 
Q:
 以前から店にあった顧客リストをもとに、パソコンで顧客データベースを作ろうと考えています。顧客データベースの上手な活用法を教えてください。(酒販店)
 
<回答者> ジェリコ・コンサルティング 代表 荒川圭基

A:
 まず、顧客リストの重要性を自分のなかでもう一度再認識してください。顧客リストは金銭と同様に商売上の財産です。お金は金庫でしっかり管理していますが、顧客リストはお金ほど大切に管理されていません。顧客リストは何度使っても減ることのない重要な経営資産なのです。この重要性を認識すれば、お客様データを“顧客データベース”という金庫でしっかり管理しようとすることの大切さがわかってくるはずです。この意識が顧客データベースを有効活用する第一歩になります。
 顧客データベースを新たに構築するのでしたら、それと同時にポイントカードを発行し、お客様の購買データを収集できる体制を整えることをご提案します。今後の情報の収集力がまるで違ってきます。さらにPOSと連動させれば、「いつ」「誰が」「何を」購入したかといった情報が収集できます。ただし酒販店の場合、ポイントは1000円1ポイント、1ポイント1円の還元を上限としてください。それ以上の還元をすると利益を落としかねません。ポイントはお客様がデータを提供してくれるお礼と考えてください。

優良顧客を把握できる

 顧客データベースを使えば1ヵ月、あるいは半年ごとの購入回数順や購買金額順にお客様リストを出すことができます。そのリストを見れば、どのお客様が優良顧客であるかが一目瞭然になります。
 一般的な酒小売店の場合、上位10%のお客様でお店全体の売上の40%、上位30%で70%を占めているといわれます。そうしたお客さんたちを大切にすることが、店の売上を向上させるためには何よりも重要なことと言えます。親しい関係になれるようワン・トゥ・ワンのマーケティングを心掛け、友人関係を築けるようにしていくのです。この繰り返しによって親しい関係のお客様を徐々に増やしていけば、必ずや繁盛店の仲間入りを果たせるはずです。
 また優良顧客については、顧客データベースを定期的に観察することで、離反に目を光らせておくことも大切です。離反するお客様が多い場合は、なにか店に気づかぬ問題がひそんでいる可能性が高いので、お客様に手紙を書いたり電話をするなどして早急に原因究明に努めてほしいものです。

商圏調査にも活用できる

 顧客データベースをしっかりと分析すれば、お客様ごとの購入サイクルも見えてきます。たとえば1ヵ月ごとに日本酒『久保田』を購入されているお客様、あるいは1週間ごとにビール10ケースとウィスキー5本を注文されるお客様、といったようにお客様ごとの購入サイクルを理解することができます。それをもとにお客様から注文が入る前にこちらから電話をすれば、ジャスト・タイミングの反応に喜んでもらえること間違いなしです。
 また、顧客データベースは商圏調査にも利用できます。住所・氏名から町内地図に顧客数を記入するなどして、自社の商圏を把握します。この商圏把握によって「強いところ」はより攻める、「弱いところ」は強化するか切り捨てるかを判断します。新聞折り込みチラシを実施しているのなら、この調査からチラシの補強や撤退を検討し、これまでより効率的なチラシが実行できます。
 酒販店の大半は、規制緩和によるドラッグストアやホームセンターなどの量販店の市場参入によって厳しい状況にあります。そんななかでは、対面販売を売り物にする個店の場合、いかに密接な「お客様との関係づくり」をするかがこれまで以上に重要なテーマとなります。顧客データベースはそのための大きな武器になることは間違いありません。お客様のニーズを吸い上げた戦略的な販売方法をどうすれば実現できるかを常に念頭に置きながら活用することをお勧めします。

提供:株式会社TKC(2002年12月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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