Q&A経営相談室
【情報通信】
通信コストの削減に効果がある「IP電話」とは
 
Q:
 インターネット網などを使うことで格安に電話をかけられるという、今話題のIP電話について教えてください。 (食品メーカー)
 
<回答者> ぷららネットワークス営業部長 沼尻 孝

A:
 インターネットなどのIP(インターネット・プロトコル)網を使い、音声を細切れに伝送することで電話をかけられるようにするのがIP電話です。一般の固定電話に比べて市外や海外への長距離通話の通信コストが安くおさえられるので、経費削減の一環として注目する中小企業が増えてきています。
 現在、実用化されているIP電話は2つのタイプに分けることができます。
 1つは、〈一般の電話網に接続した発信側と着信側の間を専用IP網で中継する方法〉で、このやり方は通常の電話と同様に発着信が可能です。端末には一般電話機を使います。現在、IP電話最大手のフュージョン・コミュニケーションズやぷららネットワークスは、この方式で全国一律3分20円という料金体系でのサービスを行っています。市内通話には一般の電話回線を用い、市外通話には独自のIP網を用いることで、低価格の長距離電話の提供を可能にしました。
 固定電話の長距離事業者であるNTTコミュニケーションズの3分あたりの平日昼間の料金は、20キロまでが20円、60キロまでが40円、100キロまでが60円…と距離に応じて上がっていきます。それと比べれば、全国どこにかけても一律3分20円という価格設定がいかに安いかがおわかり頂けるはずです。
 なお、ぷららネットワークスでは8月よりIP電話による国際電話サービスを始めており、3分あたりの通話料は米国が20円、中国が42円、韓国が34円などの価格で200以上の国や地域との通話を可能にしています。大阪に本社を置くある機械メーカーは、このサービスを利用することで1ヵ月間の電話代を従来の半分にしたといいます。中国に設立した工場への通信コストを大幅に削減できたのです。

通話無料のサービスもある

 もう1つは、〈一般の電話網を使わずに専用IP網だけで音声データを運ぶ方法〉で、ビービーテクノロジー(「BBフォン」)やNTT・ME(「WAKWAKコール・ゴーゴー」)のサービスがこれにあたります。いずれの事業者も、発着信の双方が同じIP電話サービスの加入者である場合、通話料金を無料にするというサービスを行っています(ただしADSLの加入が前提)。これはNTTの電話網を使わないことで、事業者側のコスト的な負担を軽減するからこそ可能なサービスといえます。頻繁に連絡を取りあうことが必要とされる取引先企業や提携企業との間にこのサービスを用いて“ホットライン”を設けるという使い方があるでしょう。
 ただし、BBフォンもWAKWAKコール・ゴーゴーも市内・市外を問わず、格安料金で固定電話に発信することができるものの、「固定電話からの着信はできない」という弱点があります。この弱点の改善には、IP電話に固定電話と同じ体系を使った電話番号を行政側から割り振ってもらうことが必要になります。今年9月末から総務庁が「050」ではじまる11ケタの専用番号の申請の受付を始めているので、早晩この問題は解決されるはずです。
 最近は大企業を中心に、2つめのタイプに近いやり方で、IP電話を「内線電話」として使う動きもあります。社内のパソコンとパソコンとを結ぶイントラネット上にIP電話を導入すれば、オフィス移転やレイアウト変更の際に内線電話のケーブル敷設工事が不要になるため、経費節減が期待できるというメリットがあるからです。この内線電話としての活用は、大企業に比べてネットワーク構成が単純な小規模オフィスの中小企業の場合、コスト削減の意味でやってみる価値があると思います。レイアウト変更などの際には一考されてみてはいかがでしょうか。《注:電話料金はすべて平成14年10月現在のもの》
(インタビュー・構成/本誌・吉田茂司)

提供:株式会社TKC(2002年11月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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