Q&A経営相談室
【採用戦略】
この春大学を卒業した未就職者を社員として採用するには…
 
Q:
 新製品開発に成功し、販路開拓に注力してく方針ですが、新戦力として四大卒を若干名採用したいと考えています。手垢のついていない人材を求めているので、できれば今春就職できなかった既卒者を採用したいのですがどんな方法があるでしょうか。 (食品加工業)
 
<回答者> 就職・採用アナリスト 斎藤幸江

A:
 このところ、新規大卒者の採用が早まり、首都圏の大手企業では、3年次の2月に説明会や選考のピークを迎えています。しかし、多くの中小企業にとって、入社の1年以上前に採用選考を開始するなど論外。かといって、夏休み以降の募集・選考では敗者意識の強い学生ばかりで、採用できないことも多いようです。
 それでは、いつ、誰をターゲットに採用を行えばいいのでしょうか。まずは、卒業直前です。就職活動に失敗しあきらめていた学生の中にも、卒論や卒研を終えて、改めて新卒での就職を真剣に考える者が出てきます。同時に学校側も卒業前にひとりでも多くの内定をと指導に熱が入りますから、この時期の学校を通した求人には、期待できます。
 また、4年制大学卒業者のうちわずか57.3%しか就職しない状況(文部科学省『学校基本調査』平成13年3月卒業者対象)にあって、ご質問のような未就職卒業者の採用や、最近急増している入社半年以内の離職者の採用も有効な方法です。後者の場合「すぐ辞める者を採用して大丈夫か」と思われるでしょうが、最近は非常に定着率の悪い企業が新卒就職の受け皿となることも多く、ひどい職場環境に耐えきれずやむを得ず辞めるケースが増えています。
 これら既卒者の採用でも、大学・短大の就職部を活用していきましょう。最近は多くの学校で、「求人情報が送られる度に、既卒求職者に伝えている」といった支援が行われています。企業名や業務内容があまり知られていない中小企業が学校を通じた求人を初めて行う際は、必ず訪問して説明をすることを心がけてください。できれば、訪問校を卒業した社員を連れていくといいでしょう。業務内容だけではなく、雇用システムや教育体系などについても説明すれば、学校側も安心して紹介できますし、産学間で信頼関係も築けます。また、一度信頼した企業に対し、ほとんどの就職部が、継続的かつ積極的に採用活動を支援してくれる点にも、期待したいですね。

試用雇用も選択肢のひとつ

 試用雇用を利用した採用も、最近は注目を浴びています。公的機関では、学生版ハローワークといわれる学生職業総合支援センターなどや地方自治体が、若年求職者をターゲットに短期間(3ヵ月が一般的)の試し雇用を行った上で、正社員採用への移行を進める制度に積極的に取り組んでいます。企業と求職者のマッチングに加え、試用雇用期間中の企業に対する奨励金などの支給や求職者に対する事前のビジネスマナー研修など、受け入れ・採用側の負担を軽減するさまざまな制度があります。詳細は、厚生労働省の職業安定局業務指導課や各都道府県の雇用対策課に問い合わせてください。
 民間の試用雇用には、紹介予定派遣があります。「Temp to Perm」とも呼ばれるこの制度は、一定期間(1年以下)、派遣社員として働いた後、正社員としての採用・就職を検討するものです。ほとんどの派遣会社は新卒未就職者を対象にしたプログラムを持っており、基礎的なビジネススキルやマナーを教えた後、企業に派遣を行っています。派遣前だけではなく、派遣後も手厚いフォローを行っている派遣会社もあり、新卒採用のうち一定枠を毎年この方法で採る企業も出てきています。
 こうした試用雇用の場合、試用期間中から雇用者に対するこまめなヒアリングを実施することが大切です。採用側は、「仕事内容次第で採用したい」と短絡的に考えがちですが、就職側は、人間関係や職場環境も重視しています。試用後、「ぜひ当社の正社員に」といっても、片思いに終わることもあります。就職経験のない人材の採用では、よき相談相手になり、不安や問題点を聞き出すことが重要な鍵になるのです。

提供:株式会社TKC(2002年6月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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