Q&A経営相談室
【電子到達】
原材料や消耗品を入札方式で電子調達する
 
Q:
 文房具などの消耗品を入札方式で電子調達することによってコスト削減を実現している企業が増えていると聞きます。どう行えばいいか教えてください。(旅館業)
 
<回答者>富士総合研究所 主事研究員 相原慎哉

A:
 電子調達とは一言でいえば、インターネットを使って、原料などの「直接材」や、消耗品などの「間接材」を外部の企業から調達することです。入札方式を取り入れることで、複数の企業に価格競争をさせることができます。
 企業間電子商取引(BtoB)の形態には、一企業間同士で取引を行う“一対一”や、多くの企業が集うeマーケットプレイスを介しての“多対多”がありますが、一般的に電子調達と呼ばれているのは、一社が複数の企業に対して広く取引を募る“多対一”のケースを指します。
 電子調達は従来の紙の発注書に代わる取引形態といえるもので、効率的に発注処理ができることや処理コストの削減が望めることから、大企業を中心に採用するところが増えてきています。部品や原料などの直接材の調達においては以前から電子調達を行っていた企業以外にも、最近ではセブン・イレブンや、すかいらーくといった小売り・外食企業が文房具や消耗品などの間接材を中心に電子調達をはじめています。
 大企業の多くは専用ソフトを用いて電子調達の処理をしています。その専用ソフトは、単なるインターネットを使った発注処理の機能以外に、見積書の自動作成、入札の自動集計といったものも備えていますが、価格は数百万円もして高い。このため、電子調達をすることで数億円のコスト削減を期待できる大企業ならまだしも、中小企業にはなかなか手が出せないのが実情でしょう。しかし、最近になって、100万円前後の比較的安価なソフトも登場してきていますので、これなら大規模の企業でなくても、さほど問題なく導入できるのではないでしょうか。
 もっとも、専用ソフトを使わなくても、工夫しだいで電子調達に取り組むことはできます。たとえば自社のホームページに「○○の購入先を募集しています。入札を希望する業者の方は電子メールでご一報ください」と掲げたコーナーを設けて新規調達先を募るわけです。他にも、過去に取引のあった企業に対して、一括して見積書の提出依頼を電子メールで送る、という方法もあるでしょう。そのうえで、各社が提示してきた見積額を見比べながら取引先を選んでいけばいいのです。

間接材からのスタート

 これまで電子調達などの電子商取引を一度も実施したことがないという企業に関しては、会社内部だけで使用する文房具や蛍光灯などの間接材の電子調達からスタートすることをお勧めします。原料の調達先を変えてしまったことで、品質が変わったりしては一大事です。直接材の調達の失敗はそのまま企業の業績を左右してしまうことを考えれば、間接材のほうがリスクが少ない。それに蛍光灯やコピー用紙などはどこのメーカーのものでも大きな差はありません。
 また、間接材のほうが調達コストの削減の成果が現れやすいということもあります。これまで多くの企業では直接材に比べると間接材の調達に関して真剣にコスト削減の取り組みがなされてきませんでした。文房具や蛍光灯の購入は個人や部署ごとに行っていたというケースがほとんどだったのではないでしょうか。それらの物品を全社でまとめることでロット数を増やして値段交渉を行えば、10%近くのコスト削減を実現するのは難しいことではありません。
 厳しい不況の最中、どの企業も乾いた雑巾を絞るようにしてコスト削減に努めています。電子調達はそうした取り組みのなかで、特に効果の期待できる有効な手段です。是非とも自社の身の丈にあった形で電子調達をはじめてみてはいかがでしょうか。
(インタビュー・構成/「戦略経営者」・吉田茂司)

提供:株式会社TKC(2002年6月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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