Q&A経営相談室
【社員教育】
新入社員にビジネスマナーを身に付けさせるには…
 
Q:
 今年、新しく入った女子社員に雑巾を洗うようにと言ったら、バケツになみなみと水を入れ、水が白くなるほどの洗剤を入れて、手でぐるぐる回し始めたのです。「それは違う」と言ったら下を向いてしまいました。基本のなっていない新人類をどのように教育すればよいのでしょうか。(食品製造業)
 
<回答者> 富士環境システム株式会社社長  経営アドバイザー 前田智幸

A:
 常識を欠くと思われる行動も若者たちの責任ではありません。若い社員を育てていく場合、彼らの育ってきた教育環境を知る必要があります。ひと昔前までは子どもたちも中学生になると貴重な働き手として、家業や家事を手伝わされました。
 しかし、今の子どもたちは、ホテル暮らしをしているようなものです。勉強以外に家の中でやるべきことがほとんどないのです。掃除、洗濯などの家事は全て機械任せ、お腹が減ったらレンジで「チン」と、空腹感さえ体験したことはありません。
 しかも、学校では覚えさせるためのテクニカルな教育に偏り、本来教育が果たすべき、目上の人に対する尊敬心、地域社会の中での自分の役割、社会人としての責任、国民としての「義務」と「権利」などの精神教育が全く行われていないのです。ですから、新入社員に挨拶ができないからといって見くだしたり、安易に叱ったりしてはいけません。彼らにとっては一般常識といわれているほとんどが未体験ゾーンなのです。

基本は礼儀、倹約、使命感

 さて 新人研修をしていて感じるのは、以前のように、目がキラキラと輝いている子が少ないということです。毎日がいわばホテル暮らしで、人と競うことに否定的な教育を受けてきたのですからムリもありません。
 しかし、実社会の現実は“強存強栄”なのです。厳しい競争に勝ち続けていくには、1日も早く戦力になってもらわなければなりません。そのためには、かんでふくめるような教育が必要です。ご質問者の「雑巾の洗濯」を例にとると、

(1)

バケツの3分の1のところまで水を入れましょう。

(2)

次に液体洗剤のキャップ4分の1の洗剤を溶かしましょう。

(3)

雑巾を入れ30分ほど漬け置きしましょう。

(4)

1枚の雑巾は40回ほどもみ洗いをします。力を入れる必要はありません。

(5)

ゆすぐときは……というように細かく具体的に行うといいでしょう。

 また、挨拶を教えるときも「明るく、元気よく」では、どうすれば良いか分かりません。こんなふうに教えるとすぐ覚えます。

(1)

挨拶の意味を考えましょう。「いらっしゃいませ」の言葉には「感謝」と「あなたを確認しました」という意味が含まれています。

(2)

それを表現するには、ドレミの「ソ」か「ラ」の声で出しましょう。さわやかに聞こえます。

(3)

お礼をするときは、相手の靴が真正面に見えるまで頭を下げましょう。礼儀正しさが表現できます。

 新入社員が一番初めに恐怖を感じるのは電話の応対です。このため電話の受付をさせるときには、話し言葉を書いて渡し、事前に繰り返し繰り返し練習させる必要があります。自信がないと声が小さく低くなり、しかも早口になってしまいます。これでは、お客様に良い印象を与えることはできません。
 
 新人の教育は、計画を立て、急がず、本人が理解したら次のステップに進むようにします。その基本は、言葉づかいをふくめた礼儀正しさと清掃です。次に教えておかなければならないことは、「わが社は地域社会の中でどんな役割を果たしているか」ということです。礼儀を学ぶことは、人に優しくすることを学ぶことです。職場をきれいにすることで倹約の大切さを学びます。役割を認識することで、社員としての使命感が生まれます。
 
 教育担当者は、新入社員とあまり年の離れていない若手社員に任すことも重要なポイントです。年が離れすぎていると相談しづらくなります。若手社員に任せると、その人自身のやる気も向上します。また、教育しようとすると、自分にもその知識や技能がしっかりと身についていないとできません。だから、新入社員教育は、同時に若手社員の戦力アップ教育の場でもあるわけです。

提供:株式会社TKC(2002年4月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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