Q&A経営相談室
【市場戦略】
ユニバーサルデザイン市場に参入するには…
 
Q:
 いま話題のユニバーサルデザイン製品をつくり、市場に参入したいが、具体的にはどうすればよいのでしょう。(日用品メーカー)
 
<回答者> ユニバーサルデザイン コンソーシアム 代表理事 梶本久夫

A:
 ユニバーサルデザイン(UD)とは「すべての人にやさしいデザイン」という意味合いです。一方「バリアフリー」という概念は、障害を持つ人の特定のバリア(障壁)にその都度対処するという考え方。しかし、最初から、健常者も障害者も高齢者もすべての人が使いやすいようにデザインするUDが普及すれば、自然に対する負荷や社会全体としてのコストが少なくてすみます。
 UDの領域は製品、施設、都市など目に見えるものからシステムやサービスといった目に見えないものまで多岐にわたります。しかしここでは、ご質問の趣旨に合わせて、製造業に絞ってお答えしましょう。
 日本でのUDは、少子高齢化をきっかけに、行政や消費者団体などで盛んに叫ばれるようになってきました。ものづくりの現場がUDを意識することで、相対的な福祉のレベルをアップし、しかも全体としてのコストを抑えようというわけです。
 が、企業レベルでのUDへの取り組みは、残念ながら現在のところ大企業が中心です。しかし、日本の産業の裾野を担う中小企業が積極的に取り組まない限り、UD社会は実現しないのも事実です。
 中小企業は専門的で独自のノウハウを持っています。が、多くの場合それはパーツレベルのもので、最終的なUD製品にまで持っていくには高いハードルが存在します。
 その解決策としては「連携」しかありません。自らの技術がどのようなUD製品に応用可能なのかを見極めながら、様々な連携を模索する必要があります。産業集積地なら、音頭をとる人さえいれば、どんなUD製品でも開発できるでしょう。
 また、ご質問者のような日用品メーカーの場合はUD製品の開発には適しています。たとえば、利き手に関係なくどちらの手でも使えるはさみや、ノブよりも操作が簡単なドアのレバーハンドルなど、中小企業の開発が好評を博している例もあります。ローテクにちょっとした工夫を施すことで、立派なUD製品が出来上がるというわけです。

福祉機器が市場参入への近道

 さて、次に出来上がった製品の売り込み方ですが、一般的には展示会への出展が出発点になります。たとえば、毎年年初に新宿の「オゾン」で開催される「ユニバーサルデザイン展」では、啓蒙を含めて多方面からUDが扱われ、3月初旬に東京ビッグサイトで行われる店舗総合見本市「ジャパンショップ」でも、UDがひとつのテーマになっています。また、5月に開かれる「東京新人クリエーターズコレクション」では、ファッションにおけるUDを取り上げています。さらに9月に開かれる「国際福祉機器展」は毎年のビッグイベントで、様々に工夫された福祉機器が多数出展されます。中小製造業は、ここへの出展を目指して福祉機器を開発するというのが、市場参入への近道かもしれません。
 自治体レベルでも、UDを扱う展示会を開催しているところは少なくありません。「地場産業の振興」というテーマのなかにUDを取り入れている自治体が増えてきたのです。最近UDの全国大会を開催した静岡県を初め、熊本県、高知県が代表的。福井、新潟、岐阜、宮城といった産業集積地を抱える地域でもUD製品の振興に取り組んでいます。
 また、小売りに直接アプローチする方法もあります。スーパーのイトーヨーカ堂や百貨店の松屋は専門の売場を持っていますし、単発イベントなら、それこそありとあらゆるスーパー・百貨店で行われていますから、一考の余地はあるでしょう。
 いずれにしても、これら売り込みに際には、専門のコンサルタントにとりあえず相談してみることをお薦めします。当ユニバーサルデザインコンソーシアム(03-5820-3328)でも相談にのりますのでご活用下さい。

提供:株式会社TKC(2002年3月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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