Q&A経営相談室
【税  制】
企業組織再編に役立つ連結納税制度の中身と注意点
 
Q:
 2002年4月から「連結納税制度」が導入されると聞きましたが、どのような制度でしょうか。中小企業が選択するときの注意点を含めて教えてください。 (製造業)
 
<回答者> TKC常務 税務研究所所長 小林多美雄

A:
連結納税制度の要旨
1.適用法人
親会社とすべての100%子会社
2.適用方法 国税庁長官の承認が必要

3.納税主体
親会社が申告、納付
(100%子会社は連帯納付責任)
4.申告納付期限 連結事業年度終了後2月以内
(申告期限については2月の延長特例)
5.連結所得金額の計算 連結グループ内の各法人の所得金額を基礎とし、これに所要の調整を加えた上で、連結グループを一体として計算
6.税率
親会社が普通法人である場合の税率30%
プラス2%
(2年間)
親会社が中小法人である場合の軽減税率(年800万円以下の部分)22%

 連結納税制度は、企業グループ内の個々の法人の所得と欠損を通算して所得を計算するなど、企業グループをあたかも 1つの法人であるかのように捉えて法人税を課税する制度です。 この制度の意義は、企業の経営形態に対する法人税の中立化を図ることにあります。すなわち、ある企業がA事業とB事業の2つの事業を営む場合、従来のように社内事業部方式で行う場合も、100%子会社を設立してそこでB事業(親会社はA事業のみを)を行っても、どちらの形態をとっても法人税を同じにするというものです。要は、法人税を気にせず、企業がより発展するようにその組織を編成してください、という趣旨です。
 同一法人社内事業部方式から親会社・子会社方式への変更が企業分割であり、その逆は企業合併です。それらに対する税制は昨年4月に整備されていますので、今回の連結納税制度と併せて、企業組織再編税制が確立したと言えるでしょう。

税負担はどう変るか

 連結納税を適用するかどうかの検討にあたっては、単体納税の場合に比べ、税負担がどう変るかが気になるところです。
 一般に、連結納税の場合は、企業グループ内の個々の法人の所得と欠損が通算されますので、グループに欠損法人を抱えているときは課税所得が減少し、従って税負担が減少します。また、企業グループ内の法人間の資産(棚卸資産を除く)の譲渡によって生ずる譲渡益は、その資産が連結グループ外に譲渡されるまで繰り延べられますので、この点も税負担の減少要因となります(譲渡損が生ずる場合は逆の要因)。
 しかし、この制度には、当面、連結納税制度創設に伴う税収減に対応する措置が盛り込まれたため、次のような税負担の増加要因があることに注意しなければなりません。まず、税率ですが、2年間の措置として(平成14年4月1日〜16年3月31日までに開始する連結事業年度)、通常の税率に付加的に2%上乗せされます。次に、連結所得の計算において、(1)連結子会社の連結開始前に生じた欠損金は繰越控除をすることができない、(2)連結グループ内の法人間の寄附金は、全額損金不算入とする、とされており、これらは課税所得の増加要因となります。
 さらに、中小企業特有の税負担増加要因として次のものがあります。グループ内法人が何社あっても、(1)軽減税率の対象となる所得は、グループ全体で年800万円以下、(2)グループ全体の交際費損金算入限度額は、親会社の損金算入限度額に限定されます。

 このように、連結納税制度は当面の間、単体納税に比べ、少なからぬ税負担の増加要因を持っていますので、選択するかどうかよく検討する必要があるでしょう。
 その際、平成14年1月1日以降に100%子会社とした法人の資産については、連結納税を適用する直前の事業年度において、時価評価による評価損益を計上しなければならないことを忘れてはなりません。
 連結納税は、最も早い場合は、平成15年3月期から適用できます。この場合は、14年9月30日までに承認申請書を国税庁長官に提出する必要があります。連結納税を選択するかどうかは企業の自由ですが、選択した場合は、100%子会社はすべて連結に加入しなければならないこと、次年度以降も継続する必要があることにも注意を要します。

提供:株式会社TKC(2002年3月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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