Q&A経営相談室
【人材採用】
即戦力営業マンを採用する効果的な手法は
 
Q:
 事業の飛躍的拡大を期し、1年半後に戦略的な新商品を市場に投入する計画です。その営業部隊を組織するために即戦力となる営業マンを採用したいのですが、どんな方法があるか教えてください。(食品製造業)
 
<回答者> 株式会社ライト・ウェイステーション チーフマネジャー 藤田純久

A:
 お訊ねの即戦力営業マンの採用は、多くの中小企業が共通して抱える悩みです。新聞や雑誌などで求人活動をしても、実際に即戦力となり得るような人材が応募してくるのは稀で、たとえ応募してきてもなかなか定着してくれないからです。そこで、ここでは最初から対象を絞り込んだ形での方法を紹介します。
 そのうちの有効な手段のひとつが経営幹部が自ら人脈を駆使し、これと思った人材を一本釣りするスカウト人事です。中小企業ではよく間に人を介して紹介してもらう方法をとりますが、この場合はどうしても人材に対し妥協が生まれます。そうではなく、あくまで経営幹部が業務などを通じ日頃注目している人物に直に接触し口説き落とすのです。それには自らの言葉で“思い”を語り、その人物と人生観や就労観を共有することです。多少時間はかかるかもしれませんが、事業戦略にかなう人材を採用するうえでこれに勝る方法はないように思えます。
 ヘッドハンティングの専門会社へ委託することもできますが、大変なコストがかかります。通常は着手金にプラス成功報酬としてその人材の初年度年収の30%前後を負担しなければなりません。
 もうひとつは人材紹介会社を介して採用する方法です。企業が求める経験やスキルを積んだ人材に出会うということでは効率のいい手段ですが、やはり相応のコストがかかります。一般的には初年度年収の20〜30%くらいといわれています。
 公的な機関では人材銀行があります。ここには求職中の管理職経験者や技術職、専門職の人が登録されており、営業管理職経験者も当然含まれます。それらの人材に企業がアプローチするには事業所登録するだけでよく、費用もかかりません。
 再就職支援(アウトプレースメント)会社を通じての採用も非常に効果的です。今や多くの大企業が事業再構築の一環として雇用調整を行っていますが、再就職支援会社はそれらの企業を早期退職優遇制度や希望退職制度で離職した人たちの再就職のお手伝いをする組織です。したがって業界のリーダー企業などで豊富な人脈やノウハウを培った中高年層の求職者が多く、即戦力として通用する人材が揃っています。しかも費用は求職者の出身企業が負担するので、求人企業にコストは発生しません。とりわけ私どもライト・ウェイステーションではカウンセラーが求職者の自己改革のお手伝いをしたり、専任コーディネーターが求人企業の話を聞き、その条件にあう人材を本人の納得を得たうえで紹介するので、企業の採用実務の負担軽減にも貢献します。

会社の魅力を語れ

 さて即戦力営業マンの採用では、何を基準にそれを判断するかですが、私は営業という仕事への意識の高さを最も重視すべきではないかと思っています。したがって年齢や業種にこだわらず、むしろ異業種の営業文化や中高年人材の経験を積極的に取り込んでいく発想を持つべきです。
 また私どもでは求職者に「いつ、どこで、どんな背景のもとで、何をやり、どんな成果をあげたのか」というキャリアの棚卸しを必ずしてもらいますが、そうした内容を記述した職務経歴書を提出させたり、面接時に語ってもらうことで窺い知れる部分もあるように思えます。
 一方で外部から新しい血を導入し戦力強化をはかる以上、従来の年功序列ではなく成果に応じて報酬が増えていくような、成果主義にもとづいた賃金制度や適正な評価制度の構築に取り組むことも不可欠です。
 そして企業に何よりも求められるのは、経営者が求職者に対し将来ビジョンを語るなどして経営の現実的な裏づけを示すことです。つまり即戦力営業マンから選んでもらえるような魅力が企業の側にもなければならないということです。

提供:株式会社TKC(2001年11月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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