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あなたは若い店長ですね。一生懸命さが空回りしているようです。ウソとわかる病欠や、人手の必要なのがわかっていての定刻退社などは突き詰めれば仕事への不満のシグナルなのです。もしかして、業績を上げるために店長自身がものすごく忙しい1日を送っていませんか。パート社員の仕事がアシスタントな業務に偏っていないでしょうか。
仕事上手は頼み上手
誰だっていちいち指示されながら働くのはイヤなものです。せっかく仕事にリズムが出てきたのに、横から「あれ頼む」「これ頼む」と割り込み仕事を入れられれば、ロクに確認もしないで「ハイわかりました」と答えたくもなります。その結果を見て「良子!お前は何を聞いていたのだ」と怒鳴ってみても、それは頼んだ方に非があるのは明らかです。
人にものを頼むときは、まず相手の都合を聞くこと。「良子さん、お願いしたいことがありますが、いつ頃聞いてもらえますか」と。伝えるときは、重要なところはメモにして渡し、伝え終わったら復唱してもらって、正確に理解されているかを確かめる。決して急いではならなりません。それを忙しがって相手の仕事の段取りも考えず、ベラベラ早口で伝え時間を節約したつもりでも「良子呼べ」と怒りたくなるような仕事をされたのでは、結果として大きなロスが出たことになります。そればかりか、「いつも怒鳴ってばかりいて…」と嫌われてしまうでしょう。
仕事を頼むときは、頼む側の都合に合わせるのではなく、頼まれる側の都合に合わせること。決して急な割り込み仕事を入れない。入れなければならないときはその理由を説明してください。1つの割り込み仕事は少なくても30分のロス時間が出ます。仮に1日の実働時間6時間のパート社員に、日3回の割り込み仕事を入れたとすると、5日に1日の有給休暇を与えているのと同じことになります。
「どうですかウチの社員は元気でしょう」と、自慢する中小店の店主がいます。確かに店内は大きな声が飛び交っています。そんなに社員が元気ならばさぞかし儲かっているのだろうと聞いてみると、とたんに声が小さくなり、背中を丸めました。大きな声は互いに割り込み仕事をやり合い時間を無駄に使っていたに過ぎないのです。儲かっている店ほど静かなものです。その訳を説明します。
ヤル気を引き出すコツ
究極の店長像とは、何もしないが、店長が店にいると社員もお客も安心する、そんな店長ではないでしょうか――。それに近づくにはできるだけ多くの仕事を分担してやってもらうことです。これにはコツがあります。店長自身が重要だと思っている仕事から順に任せていきます。
軽い仕事から重要な仕事へと思われるでしょうが、それでは人は育ちません。店長が“軽い”と思っている仕事は、任された方も“軽い”としか考えず「どうせ補助要員よ」ということになってしまいます。店にとって最も重要な仕事は、値づけ、陳列、発注の業務です。
値づけを任されれば、ライバル店の値段も気になるようになります。陳列を任されれば、売れ筋・死に筋商品は何かをいつも考えていなければなりません。発注を任されれば、日に何回も在庫を確認する必要があります。どれも売上に直接影響するから真剣になるのです。
「良子さん、もう店になれましたね。明日から美容健康器具コーナーを担当してもらいます。でも、わからないことがあったら何でも聞いてください」と任せたらどうでしょう。きっと目が輝きますよ。任せれば店長も指示することも報告を聞くこともなくなります。こうして静かで美しい店に変っていきます。
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