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暴力団対策法の施行以来、縄張り内の営業者に「挨拶料」「みかじめ料」などを要求する、従来型の金品要求は目に見えて減ってきました。しかし、全国暴力追放運動推進センターがまとめたアンケート調査によると、過去に金品の要求や契約締結の強要を受けた企業は全体の43.7%にのぼり、そのうちの60%が過去1年間にそのような要求を受けたと回答しています。目に見える形での金品の要求は減ったものの、最近は、より巧妙な形での要求行為が増えてきているわけです。
たとえば同和活動や右翼活動に名を借りて、会社に入り込み、ちょっとしたことで難癖をつけたり、ご相談にあるように、製品の欠陥や社長のスキャンダルを突破口に、しつこく金品を要求したりといったことです。また、通常の取引業者として入り込み、ある時点でがらっと態度を変えて、無理難題を押しつけるというパターンもけして珍しくありません。全体として、暴力団が見えにくくなっているといえるでしょう。そして、そんな要求に応じるのは、従業員100名以下の中小企業が最も多いという結果も、先のアンケート調査で明らかになっています。
大事なのは、当然のことですが、そのような理不尽な要求には一切応じないという強い意思を持つことです。最近の暴力団は驚くほど情報化が進んでおり、いったん応じてしまうと、次から次へと違った団体から要求され、莫大な金額をかすめ取られることにもなりかねません。
毅然とした態度で対応する
さて、そんな暴力団の巧妙なやり口にどう対処すればいいのでしょうか。ご相談の内容からは詳しいことは分かりませんが、外してはならない基本的な対処法を述べてみます。
まず、暴力団員との応対の局面。社長以外の複数の人で対応してください。勇気を出して、毅然として対応すること。必ず相手の目を見て、ゆっくり丁寧に話してください。相手が危害を加えることはまずありえません。そして、最初から「立証措置」を強く意識してください。相手の確認、不当要求行為の事実や交渉経過等の証明措置のことです。そのためには、各種録音機やビデオカメラなどを設置しておくことも必要でしょう。その際、部屋のドアは極力開けておいてください。湯飲みを投げられる恐れがあるので湯茶の接待は厳禁です。
そして、論争や弁解を避けながら、相手の要求を明確に確認します。が、その要求に即答したり約束したりしてはいけません。謝罪もダメです。「一筆書け」などという要求に応じるのはもってのほかです。理不尽な言動をはねつける隙のない態度は、暴力団側の追撃意欲を萎えさせるものなのです。
その上で、警察や弁護士に相談することになりますが、まず、手始めに各都道府県に設置されている、暴力追放運動推進センターに通報されることをお薦めします。同センターはスタッフに警察OBや弁護士などを抱えており、ケースに応じた適切かつ迅速な対処が期待できます。
相手が指定暴力団で、会社の商品等に因縁をつけたり、債務免除を求めたりと、暴対法に定める暴力的要求行為があれば、公安委員会から中止命令を発してもらい、そうでないときは、弁護士から相手に対して、内容証明郵便で警告してもらうことになります。ほとんどの不当行為はこれで止むはずです。その際、相手との交渉を伴う問題であれば、弁護士に委任し、社長は前面に出ない方が無難でしょう。どんなことがあっても、お金で解決することは避けてください。
とはいっても、これらのことは暴力団対策のほんの一部に過ぎません。会社は付け焼き刃ではなく、普段から危機管理の一貫として、全社的に暴力団対策を考えておくことが必要でしょう。全国の暴力追放運動推進センターにはこの種の様々な情報がありますので、参考にされることをお薦めします。
(インタビュー・構成/「戦略経営者」・高根文隆)
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