Q&A経営相談室
【人事戦略】
採用のミスマッチを防ぐ紹介予定派遣の活用と留意点
 
Q:
 昨年12月に解禁された「紹介予定派遣」が産業界で注目されているようですが、その仕組みやメリット、活用法について教えて下さい。(自動車販売業)
 
<回答者> 月刊人材ビジネス編集主幹 株式会社オピニオン 代表 三浦和夫

A:
 まず紹介予定派遣を簡単に説明しましょう。採用企業がほしい労働者を当初は派遣で使い、契約派遣期間中にその人のスキルや仕事ぶりなどをよく観察します。そして期間満了時に派遣労働者と採用企業の双方が合意すれば、直接雇用できる仕組みを紹介予定派遣と呼んでいます。労働省はこれを制度化して昨年12月1日から合法化しました。
 バブル景気の崩壊以後の不況が長引き、雇用の確保が国家的なテーマとなっていることが今回の制度化の背景にあります。現在の失業率は4%台で推移していますが、その4分の3が採用の際のミスマッチが原因といわれています。このため、ミスマッチの防止は失業率を抑制する上でも急務であり、労働省は従来認めていなかったこの紹介予定派遣を解禁したというわけです。
 ところで、この紹介予定派遣を制度化するためにわざわざ新しい法律が制定されたものではありません。紹介予定派遣の前段階は派遣でスタートするために改正労働者派遣法の規制が課せられ、後段の直接雇用の際には当該派遣元から当該人材の紹介を有料で受ける形を採るために、有料職業紹介事業を定めた職業安定法の規制が課せられる、と理解してほしいのです。ですから、これらの法規制の要点と紹介予定派遣制度のための労働省の指導事項を遵守しなければなりません。
 その留意点を簡単に説明すると、(1) 派遣期間は最長1年であること、(2)事前面接はできないこと、(3)最終的な雇用は双方合意を原則とすること、(4)雇用以後にふたたび試用期間を設定しないこと、(5) 契約書は紹介予定派遣契約書を使用すること、(6) 紹介予定労働者に対する知識・能力テストを実施してもよいが、派遣期間満了後の双方合意がえられえた時点で行うこと、(7) 紹介予定派遣事業を行うためには一般労働者派遣事業許可証と有料職業紹介事業許可証の2つを持たなければならないこと、(8) 当初契約の派遣期間を途中で短縮または延長は可能だが、当該労働者の同意が必要――などが規定されています。
 紹介予定派遣の前段の派遣期間については、(1)の1年以内であればよいのですが、実際には職種によってまちまちとなる可能性が高く、平均して2、3ヵ月間程度が一般的になる模様です。詳しくはこの事業を行う派遣元の営業担当に尋ねればよいでしょう。

利用に適した分野・職種は…

 紹介予定派遣のメリットはすでに述べたように、派遣契約期間中が事実上の試用期間に該当するため、採用以後のミスマッチが抑制される点にあるといえるでしょう。わずかな面接時間だけでの採否には合理性がないのは周知の事実です。実際の労働を通じて、当該人材の技能、環境対応力などが推し量られるのは採用側にとってメリットだし、応募する側も同様です。
 紹介予定派遣に馴染む分野としては、一般的な事務スタッフはもとより、1.マネージャークラス、2.経験豊かな技術者、3.中高年、4.新規学卒者――の採用の際に有効機能するのではないかと期待されています。
 紹介予定派遣の解禁は昨年12月1日ですが、実際に稼動するのは今年の2、3月からと予想します。すでに首都圏、近畿圏の有力な人材派遣会社ではパンフレットの整備、紹介予定派遣で働きたい人たちの募集活動、派遣先企業の開拓などの準備に取りかかっています。したがって、今年4月に配置する新卒者から紹介予定派遣の活用を勧める派遣元が増えています。
 この紹介予定派遣は、アメリカでは「テンプ・ツー・パーム」(temp to perm)という呼称で一般化されています。合理的な採用システムとして誕生し、定着しているわけですが、日本の採用も欧米並みに規制緩和されたと理解してよいでしょう。

提供:株式会社TKC(2001年2月)
 
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。
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