■TKC会計人による支援体制

■創業支援の実際と最新情報

<寄稿>

TKC会員による創業支援(個人・法人)の具体的事例

TKC北陸会 西岡 義晴

 創業を廃業が上回る今日、日本再生の鍵は新規創業と経営革新にある。そこで、TKC会員が依頼者から「創業を個人・法人のいずれで進めるべきか」の相談を受けた際、シミュレーションにより、スピーディーに、ビジュアルに説明できるよう、TKC巡回監査・書面添付推進委員会で会員事務所支援小委員会専門委員を務めた西岡義晴会員に執筆いただいた。


 とある依頼者からの相談

 依頼者 「先生、今度美容院を始めようと思うのですが、個人で始めた方がいいですか? それとも法人で始めた方がいいですか?」

 こんな相談は、税理士ならば1度や2度は受けたことがあるはずです。
 個人、法人のメリット・デメリットは頭ではわかっているものの、いざ具体的に相談されると一般的な回答しかできません。

 所長 「法人はいろいろと手続きが面倒で、費用もかかるので、なにもそんなに焦って法人で始める必要はないでしょう。まず個人(青色)で始めて、2、3年様子を見てから法人成りを検討されればいいでしょう……」と。

 それはそれでいいのかもしれないが、税の専門家の回答としては、ちょっとさみしい限りです。
 依頼者は、新規に創業するにあたって、いろいろと不安もあり、また一方では、希望もあるはずです。
 税の専門家としてこのような回答で、はたして依頼者の不安を取り除き、また希望なり元氣なりを与えることが出来るでしょうか。

 まずフローチャートで簡易判定

 当事務所では、まず右図(創業時における「個人」「法人」判定フローチャート)に示すフローチャートを依頼者に提示し、個人か? 法人か? の判定を依頼者からよく話を聞きながら進めています。
 このように、事業の内容・形態等また、各支援制度の要件等により法人でスタートした方がよい場合もあります。
 特に、株式公開型ベンチャー企業支援などを受けようと考えている事業者は、法人であることが求められています。
 また、今年の4月に、税理士仲間11人で運営している法人(経営セミナーや簿記講座の開設)において教育訓練給付金(受講料の80%が受講者本人に国から補助される制度)の講座指定を取得しましたが、これも法人であることが取得の要件とされているよい例だと思います。
 肝心なのは、依頼者から今後将来にわたっての事業展望について十分に話を聞き取り、こんなはずではなかったと依頼者が後悔しないように、的確なアドバイスとサポートをしていくことが必要ではないでしょうか。


 シミュレーションで、より具体的に判定

 それでは、実際の具体例を使って判定に入りましょう。まずは、継続MASを使って創業事業計画を策定し、変動損益を把握します(下掲の簡易変動損益計算書シート参照)。
 ここでは、妻の給与をいくらにすればよいかのシミュレーションは割愛していますが、実際は、依頼者とよく相談しながらシミュレーションして決めていきます。
 このシミュレーションの特徴は、税額等の負担額での比較ではなく、資金手元残(実際にいくら手元に資金が残るか)での比較検討している点にあります。
 ですから、社会保険や交際費課税については税への影響も考慮しています。
 また、将来法人成りを検討する時にも利用できます。

 最終決断は依頼者に……

 とかく、税理士主導で物事が決められがちですが、一連の説明を依頼者にしたならば、ここはやはり、依頼者自ら決断し実行していただくのがあるべき姿ではないでしょうか。
 例えば、社会保険の負担をどのように捉えるかは、人それぞれ異なっています。社会保障と考えるか、税金の一種と考えるかは、依頼者が決めるべきことでは……。
 負担額のみで、個人がいいか、法人がいいかの判断をすることは、厳に避けたいものです。
 これだけの説明を聞くと依頼者は、「先生、個人法人のメリット・デメリットがよく分かりましたし、これからの事業展開も見えてきました。将来は、出店もしたいと考えていますので、今年は個人で申告しますが、来年は法人にし、優秀な人材の確保にも努め、事業を大きくしていきます。今日は、本当にありがとうございました」と目を輝かせました。


 TKC会計人は創業・経営革新を支援しています

 平成13年6月にTKC出版より『Q&A創業の基礎知識から信頼される創業計画づくりまで』が刊行され、7月にはTKC継続MASシステムの中に「創業事業計画策定システム」が組み込まれました。

 さらに、7月9日よりTKC全国会のホームページ(http://www.tkcnf.or.jp/)に創業者を支援する「これから事業をはじめる皆様へ」が開設され、より一層創業に対する支援体制が拡充したと言えるでしょう。
 これから創業しようと考えていらっしゃる起業家の皆さんは、ぜひTKC会計人の門をたたいてみてください。
 きっと、あなたのよきパートナーとして相談にのってくれるはずです。
 霧がかかってもやもやしたあなたの気持ちが、晴れることを願って。

(会報『TKC』平成13年8月号より転載)

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西岡 義晴プロフィール

昭和31年12月1日富山県生まれ。55年法政大学経営学部卒業。63年税理士登録。その後、約7年間の勤務税理士を経て、平成7年6月独立開業と同時にTKCへ入会。TKC全国会巡回監査・書面添付推進委員会会員事務所支援小委員会専門委員を経て、現在、TKC北陸会研修所副所長を務める。