■「連結納税制度」活用のメリット 〜損益通算で節税効果も期待できる〜

 秋葉会計事務所税理士 秋葉芳秀(TKC千葉会)

 連結納税制度とは、企業グループ全体を1つの法人とみなして課税する仕組みのことだ。親会社と国内の100%出資子会社が対象となる。2002年度からはじまったこの制度を導入する企業は増えており、連結財務諸表を提出している上場企業等だけでなく、中堅・中小企業のなかにも適用申請するところが徐々に現れてきている。法人税率2%を上乗せする付加税の時限措置が今年3月で終了したこともあり、その傾向は今後ますます強まるはずだ。そこで、関与先の中小企業が連結納税に移行する際のサポートを行っている秋葉芳秀税理士に、連結納税のメリットや導入時の留意点等について聞いた。
 

■損益通算で節税できる
 連結納税の活用によって中小企業が得られるメリットとは?

 一番のメリットは「連結グループ内の各会社間の損益通算が可能になる」ことです。つまり、グループ内に赤字会社と黒字会社が混在している場合、その赤字と黒字が相殺され、グループ全体として法人税額が少なくなるという効果が得られるのです。
 連結納税制度の意義は、企業の経営形態に対する法人税の中立化をはかり、企業組織再編成の促進に役立てることにあります。すなわち、ある企業が2つの事業を営む場合、1つの法人で2つの事業を営む「社内事業部方式」でも、親会社と子会社でそれぞれ別の事業を行う「子会社分離方式」の場合でも、法人税額は同じになるというのが連結納税の基本なのです。したがって、企業が組織形態を選択するうえでの租税の中立性が確保でき、組織再編・改革がやりやすくなります。
 中小企業が異なる事業部門を抱えている場合、ある事業部は収益性が高いが、ある事業部は不採算ということがしばしばあります。不採算部門があると、企業全体としてはその部門の損失が節税効果になることから、権限と責任を明確にするために「企業分割」(別会社化)をしようにも躊躇せざるを得ません。しかし、連結納税を導入すればそのどちらのメリットも得られることになります。

 デメリットについても教えてください。
 主なデメリットとして注意したいのは以下の3点です。
(1)欠損金の切り捨て
 連結欠損金額は5年間で繰越控除されますが、子会社が連結納税前に抱えていた税務上の繰越欠損金については控除の対象となりません。子会社に高額の繰越欠損金がある場合にはデメリットになるので注意が必要です。
(2)継続適用が原則
 連結納税をいったん選択すると、取り止めることができるのは「やむを得ない事情があるとき」に限られます。税負担の軽減を考慮して、企業グループでの連結納税と個別法人ごとの単体納税とを任意に繰り返して選択するようなことは認められません。
(3)事務作業量の増加
 これまで親会社と子会社とで決算期が異なっていたとしても、連結納税導入後は親会社に合わせざるを得なくなります。親会社にとっては一気に仕事が集中することになるため、事務作業量の増加は避けられません。決算期におおわらわにならないためにも、「月次決算」などを通じて日頃から準備を整えておきたいものです。

■事業年度は親会社に合わせる

 連結納税を始めるには、どんな手続きが必要ですか。
 連結納税を適用する事業年度開始の6ヵ月前までに親会社とすべての100%子会社の連名で、親会社の所轄納税署長を経由して国税庁長官に承認申請書を提出することが必要です。
 また、そのための事前準備として、連結グループに入れたい子会社の出資比率を、株を買い取るなどして100%にしておくことが求められます。他にも、100%子会社の一定の資産(固定資産、土地等の時価評価資産)について、時価評価を行い評価損益を計上しておく必要があります。

 連結納税を導入するにあたっての留意点は?
 これは見落とされがちなのですが、連結納税を選択する以上、企業グループの100%子会社すべてが連結納税に強制加入しなければなりません。つまり個別の連結子会社は、単体納税を別途に選択することはできないので注意してください。
 それ以外にも、連結事業年度を親会社の事業年度に合わせることが必要になります。子会社の商法上の事業年度が親会社と異なる場合は、親会社の事業年度に合わせた「みなし事業年度」を設けて再計算したうえで、連結することになります。そうなると、子会社は事実上決算を2回実施しなければなりませんので、事業年度を一緒にしておいた方がよいといえます。


 連結納税導入後の申告と納付は親会社が行うのですか。
 連結所得に対する法人税(連結法人税)の申告と納付は親会社が行わなければなりません。ただし親法人が滞納した場合には、子会社も連帯納付の責任を負います。

 連結納税を実際に導入した中小企業の事例を教えてください。
 私が連結納税導入のお手伝いをした千葉県の建材卸業者X社(年商4億円)は、連結納税の節税効果にメリットを感じ、不動産貸付を行う別会社を100%子会社にし、連結グループ化しました。親会社の赤字と子会社の黒字との損益通算で節税に成功しています。「これだけの節税効果があるのなら、もっとはやく連結納税を始めるべきだった」と社長は語っていました。
 それ以外にも、金融機関の企業格付けをあげるために赤字部門を切り離したいが、税負担のことを考え、それをためらっていた企業が新たに連結納税を始めたというケースは全国にたくさんあります。

 連結納税を導入する際のアドバイスは誰に求めたらよいですか。
 もちろん、税理士や公認会計士などです。とりわけ、「連結納税システム(eConsoliTax)」の立ち上げ・運用コンサルティングに定評のある、TKC全国会の税理士に相談することをお勧めします。

(インタビュー・構成/『戦略経営者』・吉田茂司)

(『戦略経営者』2004年7月号より転載)