TKC全国政経研究会活動

 計算書類の信頼性を高める会計参与制度の創設を


 村井仁自民党政務調査会筆頭副会長に聞く

  と き:平成16年6月9日(水)
  ところ:衆議院第二議員会館

 法務省法制審議会が見直しを進める会社法の原案が明らかになった。注目すべきは、新しい会社の機関として「会計参与」が設置されること。これは税理士と公認会計士が会計参与として取締役と共同で計算書類の作成にあたるというもの。TKC全国政経研究会(篠澤忠彦会長、髙田順三事務局長)は、過日、村井仁自民党政務調査会筆頭副会長を訪ねた。村井筆頭副会長は「会計参与制度」に賛意を表明するとともに、記帳条件の整備に言及した。

会計参与は画期的な制度
 
法務省において会社法制の見直し(現代化)が進められています。
 今回の改正は、「国際的に見ても遜色のない制度」「利用者の視点に立った規律の見直し」を基本方針として、21世紀に相応しい会社法制にするのが目的です。
 先頃明らかになった法制審議会案では、株式会社と有限会社の一本化、株式会社の最低資本金制度の撤廃などが盛り込まれ、なかでも注目すべきは、税理士・公認会計士がなることができる「会計参与」を新たに会社の機関として設置し、取締役との共同による計算書類の作成を認める考えを打ち出したことです。
 一般的に中小企業は内部統制や会計知識が希薄といえます。しかし、税理士や公認会計士を会計参与として置くことで、会計帳簿の作成から計算書類の作成に至るプロセスにおいて、会計専門家の視点から支援、指導が受けられ、計算書類の信頼性を高めることができます。また、会計専門家が計算書類の作成に関与することによって、取締役も経営に専念できるといえます。
 これは、まさにこれまでTKCの皆様が実践されてきた決算書の信頼性を高めるための月次巡回監査の考え方と似ていると思います。
 加えて、急速に進むIT化は、痕跡を残さずに記録を改竄するなどの不正が容易にできる社会環境を作り出しています。
 しかし、会計参与を設置した場合、経営者と会計参与がそれぞれ別個に計算書類を5年間保存することが義務づけられるので、記録の改竄の抑止が図られます。
 いずれにせよ、会計参与制度の創設は、計算書類の虚偽記載や改竄を抑止し、計算書類の記載の正確さに対する信頼性を高めるものとして大変画期的な制度であると思います。
 これまでの会社法制等は、どちらかといえば、大企業のスタイルに合わせる形でその制度が整備されてきました。私は中小企業法制にずいぶんと関わりましたが、例えば、取締役が同時に従業員であり株主である、そういった面では個人事業と変わらないというのが、実際の中小企業の姿です。
 昭和38年に中小企業基本法が制定された際、中小企業の定義づけがなされ、その要素の1つに資本金5千万円以下というのがありました。これは当時の東京証券取引所の上場基準と同じでした。つまり、もともと上場できるような企業は大企業、それ以外は中小企業という考え方だったのです。
 株式を公開する、すなわちパブリックに資本を集めるような大企業においては、監査役の機能の充実は必要といえるでしょう。しかし、株式を上場していない中小企業においては、記録の正確性を確保するというだけであれば、会計参与のほうがむしろ制度としては馴染みやすいといえます。
 今回、法制審議会案において、大会社を除く譲渡制限会社のうち、取締役会を設置する会社においては、会計参与の選任により、監査役の設置を省略できるとされたことは、その効果や経済効率の面から評価できます。同時に、中小企業金融の円滑化の要請にも十分応える制度であるといえます。
 いずれにせよ、今回の見直しは、中小企業にとって現実的な内容になっています。

記帳条件の法整備が必要
 会計参与制度の創設によって、計算書類の信頼性向上が期待されますが、その前提となるのは記帳条件の整備です。
 飯塚毅先生(TKC全国会名誉会長)は常々、「会計帳簿の信頼性確保のため、記帳条件に完全網羅性、真実性、適時性、整然明瞭性を盛り込むべきである」と訴えておられました。
 確かに、商法には「整然かつ明瞭に記載することを要す」としかなく、正確、また適時に記録するといった概念が規定されていません。これには、私も非常に衝撃を受けました。
 ましてやIT化が進んだ今日においては、記録の改竄、虚偽記載、証拠隠滅などがいとも簡単になってきています。
 計算書類の記載の正確さに対する信頼性を高める前提として、まずは記帳・記録を行う者がその重要性を強く認識しなければなりません。
 以前、TKCの皆様から提言いただいた通り、欧米では記帳条件が整備されています。ドイツ商法は真実性と適時性とも明記され、アメリカで最も権威があるとされるデラウェア州の会社法には「計算の正確かつ完全な帳簿」と規定されています。わが国もきちんと商法に記帳条件を明記しなければなりません。
 記帳と記録を正しく行うというのが、結局は会社の債権者、利害関係者を保護することになります。またそれが健全な社会の姿だと思います。とにかく、正直者が馬鹿を見るような社会があってはなりません。健全な社会にするための立法や制度環境の整備は、私たちローメーカー(Law Maker)の務めです。
 最近の日本社会においてどうしても無視できないことに治安の問題があります。言い換えますと、不正を働くことに対して、何の抵抗も感じないような世の中、倫理観が欠如した世の中になってきたように思います。このような社会の傾向は、飯塚毅先生をはじめとするTKCの皆様のこれまでの活動を無意味にすることにもなりかねません。
 最近の某自動車メーカーの事件などに見られるように企業倫理が問われていますが、これは企業の問題だけではなく、世の中全体に、ただ、儲かればいい、自分が得さえすればいい、という雰囲気が蔓延しつつあるのではないかと大変危惧しています。
 この社会をどのように再構築していくかが、いまの政治に課せられた大きなテーマだと思っています。

村井 仁(むらい・じん)氏 プロフィール

昭和12年生まれ。東京大学経済学部卒業。34年通産省入省。61年衆議院議員初当選。大蔵政務次官、衆院大蔵常任委員長、金融再生総括政務次官、内閣府副大臣金融担当、国家公安委員長、防災担当大臣、食品安全委員会担当大臣、党広報本部長、衆院個人情報の保護に関する特別委員長等を歴任。現在、党政務調査会筆頭副会長。長野県第2区。

(構成/TKC出版 豊開弘行)

(会報『TKC』平成16年7月号より転載)