■<寄稿> 連結納税に注目を


TKC税務研究所 所長 小林多美雄

 わが国においても、連結納税制度の導入に向けた検討が進められている。連結納税は、法人課税全般にかかわる問題であり、税理士業務にも大きな影響を及ぼすことが予想される。TKC税務研究所小林多美雄所長に、検討が進むわが国の連結制度の解説について寄稿していただいた。

 はじめに

 連結納税制度は、企業集団の経済的一体性に着目し、企業集団内の個々の法人の損益を集約することにより、あたかも企業集団を1つの法人であるかのように捉えて課税する仕組みである。
 政府税制調査会は、昨年12月の「平成13年度の税制改正に関する答申」において、連結納税制度は、21世紀のわが国経済のインフラとなる制度として、速やかに整備すべき重要な課題であり、「企業集団の一体性に着目して制度を構築するという理念の下、アメリカにおいて導入されているような本格的な連結納税制度の導入に向けた検討を進めている」旨表明していたが、本年に入り、5月以降、法人課税小委員会で精力的に審議を行っている。
 連結納税制度が導入されると、その仕組み如何によっては、産業界では、企業再編が促進され、税務行政においては、親会社、子会社の一体的調査が強化される、といった動きが予想される。これらの動向は税理士業務にも影響を及ぼし、場合によっては、税理士法人設立のインセンティブになることも考えられる。それ故、連結納税制度がどのように組み立てられていくか大いに注目する必要がある。
 本稿では、連結納税制度の主な論点について、アメリカの制度と対比する形で、税調・法人課税小委員会の議論の方向を紹介することとしたい。



II 連結納税制度の枠組み

1.連結グループの範囲
【米国の制度】
 連結グループは、株式所有関係を通じた親会社と子会社により構成される。
 親会社とは、企業グループ内の1社以上の法人の議決権株式及び株価総額の80%以上を直接保有している法人をいい、子会社とは、議決権株式及び株価総額の80%以上を企業グループ内の他の1社以上の法人により直接保有されている法人をいう(図1参照)。
 なお、外国法人は、親会社・子会社から除かれる。
【税調の議論】
・企業グループを単一の主体と捉えて課税を行う本格的な連結納税制度を導入するのであれば、連結グループは、完全に一体となっている企業グループとすべきである。また、完全に一体となっていない子会社まで連結納税の対象とする場合には、少数株主持分に対応する所得の取り扱いをどのようにするかなど様々な問題が出てくる。したがって連結対象となる子会社は、連結グループの株式保有割合が100%の子会社とする。
  但し、社員持株会の持株やストックオプションの行使により役職員が有する株式の取り扱いについてはなお検討する。

2.連結納税制度の適用要件
【米国の制度】
 連結グループは、そのグループを構成する全ての法人の同意を条件に、個別納税申告に代えて、連結納税申告を選択できる(即ち、企業グループが連結納税申告を選択するかどうかは任意であるが、選択したときは、連結の対象となる子会社は全て加入しなければならない)。
 連結納税申告を選択した場合には、その取り止めについて内国歳入庁長官の承認を受けた場合を除き、継続して連結納税申告を行う必要がある。
【税調の議論】
・企業グループが連結納税制度を選択した場合に適用することとし、1度選択したときは基本的には継続適用とすべきである。
・連結対象となる子会社は全て加入すべきとするか、選択できることとするかについては、連結納税制度が完全に一体となっている企業グループに適用されることからして、全社加入が筋であり、しかるべき理由があるものに限り除外できるとすべきである。

3.連結納税申告書の提出・連結税額の納付
【米国の制度】
 連結グループの親会社は、連結納税申告書を提出し、連結税額を納付する(連結納税申告に係る納税の義務は、連結グループの親会社及び子会社がそれぞれ負うが、親会社は自らの義務の履行と子会社の代理人たる地位に基づく子会社の義務の履行として、これらの行為を行う)。
 なお、連結税額は、親会社と子会社との契約により、親会社及び子会社に配分される。
【税調の議論】
・連結グループの納税義務、連結納税に係る申告・納付については、地方税や税務執行の問題とも絡むので、親会社及び各子会社の個別申告を残すかどうかも含め、今後さらに検討する。
・連結税額の配分については、それが恣意的に行われないように、法令で配分方法を明確にする。

4.事業年度及び会計処理方法
【米国の制度】
・子会社の事業年度は、親会社の事業年度に合わせる必要がある。
・会計処理方法についての統一は求められていない。
【税調の議論】
・事業年度については、統一すべきである。
・会計処理方法については、同様の業種は統一した方法を採用すべきであるが、違う業種については別にせざるを得ないという意味で、全般的に統一を求めることはできない。

III 連結所得金額及び連結税額の計算

1.基本的な仕組み
【米国の制度】
 連結グループ各社の単体所得金額について、内部取引に係る損益の繰り延べ等の連結調整を行った上で、連結所得金額及び連結税額を計算する。その手順は以下のとおり。
(1)連結グループ各社の単体所得金額を計算する。
(2)次の(第1次)連結調整を行い、各社の単体所得金額を修正する。
 イ 受取配当金の益金不算入、寄附金の控除などの一時消去(これらは連結ベースで計算する)
 ロ 連結グループ内取引の損益の繰り延べ
 ハ 子会社株式の譲渡損の損金不算入
(3)前記(2)で修正された各社の単体所得金額を合算し、次の(第2次)連結調整を行って連結所得金額を算出する。
 イ 受取配当金の益金不算入、寄附金の控除など一時消去をした項目についての連結ベースの計算
 ロ 連結ベースの繰越欠損金控除
(4)連結所得金額を基に連結税額を算出する。

【税調の議論】…図2参照
・連結所得金額は、連結グループ各社の単体所得金額を基礎とし、連結調整を加えた上で、連結グループを一体のものとして計算する仕組みとする(アメリカ方式の(1)―(3)と同じ)。
・連結税額の計算は、次の手順で行う。まず
 イ 連結所得金額に税率を適用して「調整前連結税額」を算出し、
 ロ これを各社に配分し、各社毎に(第1次)連結税額調整を行う。次に、
 ハ 各社の(第1次)連結税額調整後の税額を合算し、
 ニ これに連結グループ全体としての(第2次)連結税額調整を行って、連結税額を算出する。
 (第1次)連結税額調整として特定の業種にしか適用できない租税特別措置法上の税額控除が、(第2次)連結税額調整として所得税額控除や外国税額控除が考えられる。
・子会社が連結グループから離脱し、単体課税に移行することがあることを考慮すれば、連結所得金額、連結税額を算出するための調整計算の過程において、(第2次)連結調整の金額を連結グループ各社に合理的な基準で配分する必要がある。
・現行の単体課税においては、法人の規模等に応じて法人税率に格差が設けられているが、連結納税制度において、連結所得金額に対する法人税率をどのようにするか(例外なく基本税率を適用するか、親会社に適用する税率を適用するか、連結グループの全ての法人が中小法人である場合だけ中小法人に適用する税率を適用するか)は今後検討する。


2.連結納税制度に特有な事項
(1)内部取引に係る損益の繰り延べ
【米国の制度】
 連結グループ内で行われた資産の譲渡等(内部取引)により生じた損益については、その資産の連結グループ外への譲渡等が行われるときまで、繰り延べる。
【税調の議論】
・上記に同じ
 なお、損益繰延べの対象とする取引は、基本的には、全ての内部取引とすべきであるが、棚卸資産の取引については納税者の事務負担についても十分に配慮し、さらに検討する。
〔減価償却資産の譲渡の例〕
・連結グループ内で譲渡が行われた減価償却資産は、時価により取引されたものとして、譲渡を行った法人において損益を繰り延べ、譲り受けた法人において時価による取得価額を基に減価償却費の計算を行う。
・繰り延べられた損益については、その減価償却資産が償却されるときにはその償却費に応じた額を、連結グループ外へ譲渡されるときには繰り延べられた損益の残額を実現した損益として計上する。

(2)損益の二重計上の防止
【米国の制度】
 連結所得金額として課税された子会社の所得金額が、子会社株式の譲渡により、再度、子会社株式の譲渡利益として課税されたり、連結所得金額から控除された子会社の欠損金額が、子会社株式の譲渡により、再度、子会社株式の譲渡損失として控除されることを避けるため、子会社株式の帳簿価額について、その子会社の所得金額を加算又は欠損金額を減算する修正を行う(図3参照)。

【税調の議論】
・子会社株式の譲渡により生ずる実質的な二重課税や二重控除を回避する必要があり、その方法として、毎期子会社株式の帳簿価額を修正する方法、又は譲渡時に、子会社株式の譲渡損益の額を修正する方法を検討する。

(3)繰越欠損金額の控除の制限
【米国の制度】
 連結欠損金額は、2年繰戻し・20年繰越しのルールに従って連結所得金額と相殺できる。
 但し、子会社の連結グループ加入前に生じた欠損金額の繰越控除については、その子会社の連結申告年度における累積の所得金額に制限される(SRLYルール/図4参照)。
 (参考)子会社が連結グループ加入時に有していた資産に含み損がある場合において、加入後にその含み損が実現したときも、上記と同様の制限が適用される。
【税調の議論】
・連結欠損金額は、単体課税における青色欠損金額の繰越控除と同様に、その連結欠損金額が生じた連結事業年度から5年間で繰越控除を行う。
・子会社が連結グループから離脱し、単体課税に移行するケースがあることを考慮すれば、連結欠損金額、繰越連結欠損金額やその控除額を連結グループ各社に配分する必要がある。
・連結グループに加入した子会社の加入前の欠損金額については、その子会社の単体所得金額においてのみ繰越控除するなど、連結グループ外で生じた欠損金額を連結グループ内に取り込んで行う租税回避を防止するための万全の措置を講ずる必要がある。
・連結グループに加入する子会社の加入前に生じた資産の含み損を利用して連結所得金額の軽減を図ることを防止するための措置を講ずる必要がある。


3.連結納税制度における各個別制度の取り扱い
【税調の議論】
 各個別制度については、連結グループを一体として要件の判定や計算を行うことを基本としながら、制度の趣旨を踏まえ、また技術的な問題点を十分に検討して、それぞれに相応しい仕組みとする。

(1)受取配当の益金不算入
・連結グループ内の子会社からの受取配当については、負債利子の控除を行わず、その全額を益金不算入とする。
・連結グループ外の法人の株式が特定株式に該当するか否かは、連結グループ単位で判定する。
・連結グループ外の法人からの配当に対する負債利子の控除額は、連結グループ全体で計算する。

(2)寄附金
・寄附金の損金算入限度額の計算の基礎となる所得金額及び資本等の金額は、連結所得金額及び親会社の資本等の金額とする。
・連結グループ内の寄附金の授受による租税回避(黒字会社が繰越欠損金額を有する会社に寄附金を支出することにより、前者は所得金額を減少させ、後者は受贈益をもって繰越欠損金額を控除する)を防止する必要がある。このため、連結グループ各社の間の寄附金は損金不算入とする方法、あるいは、寄附金の授受はないものとして支出側の損金と受取側の受贈益の双方を消去する方法などを検討する。

(3)交際費
・交際費の損金不算入額の計算の基になる資本の金額は、親会社の資本の金額とする。

(4)貸倒引当金
・貸倒引当金については、確定決算において損金経理によりその計上を行うことが前提となっていることを考慮すれば、連結グループ各社が個別に計算した損金算入額を合算する。
・連結グループ各社の間の金銭債権は、貸倒引当金の繰入限度額の計算の対象となる金銭債権から除く。
・一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額を計算する場合の貸倒実績率については、連結グループ内の法人に対する売掛債権等の貸倒損失を除いて計算する。

(5)外国税額控除
・外国税額の控除限度額については、連結ベースの法人税額、所得金額及び国外所得金額を基礎として計算を行う。この場合、子会社が連結グループから離脱して単体課税に移行することがあることを考慮すれば、連結グループ各社に控除限度額を配分する必要がある。

(6)特別税額控除
・例えば、増加試験研究費の税額控除について、税額控除の限度となる「法人税額を基準とした金額」について、連結税額を基準とするか各単体法人の連結税額に対応した金額を基準とするかについては、試験研究費の増加額の計算と整合性のあるものとする。

IV 地方税

税調の議論】
 法人事業税、法人住民税は、現行どおり、個々の法人を課税単位とし、連結グループ各社の所得金額、法人税額をどのように補足すべきか検討する。


〔補記〕
  本稿は、第12回(平成13年5月11日開催)、第13回(6月1日)、第14回(6月26日)の法人課税小委員会の資料及び議事録並びに第15回(7月24日)の同小委員会の資料に基づき作成した。さらに詳しく知りたい方は、財務省ホームページの税制調査会の部に掲載されているこれらの資料等を参照されたい。
  なお、本稿では触れなかったフランスの連結納税制度は、第12回小委員会で説明されている。   



 小林多美雄プロフィール

昭和20年3月生、秋田県大館市出身。東北大学法学部卒業。昭和43年国税庁入庁後、島原税務署長、大蔵省証券局企業財務課課長補佐、金沢国税局調査査察部長、熊本国税局直税部長、東京国税局徴収部長、札幌国税局総務部長、国税庁長官官房事務管理課長、国税庁徴収部管理課長、熊本国税局長等を歴任。平成9年7月退官。運輸施設整備事業団理事を経て、12年8月TKCに入社。同年12月に常務取締役、税務研究所所長に就任。

(会報『TKC』平成13年9月号より転載)