■公認会計士試験制度に向けての緊急提言


 職業会計人統一試験制度に向けての提言

平成15年3月6日


職業会計人統一試験制度は、行政改革の基本とする「自由で公正な合理的制度の構築の趣旨に沿うものであること
職業会計人統一試験制度の構築により、公認会計士試験と税理士試験とを別個に施行する現行制度に比し、行政コストの削減をもたらし、行政改革の精神に沿うものであること
規制緩和の真の意味は、専門職業士がそれぞれの領域において高度な専門知識を身につけて、終局的には国民一般に対して高い質のサービスを提供できる仕組みを作ることにあること
統一試験の実施は、職域の違いによる「役割期待の相違」を、受験生自らが意識し、誇りを持ってそれぞれの職域活動に従事する人材を育成することができる仕組みにつながること
統一試験制度の創設により、職域を異にする職業会計人の「協同体制の確立」へ向けての双方向的交流が図られること

 

「監査」および「税務」に係る専門職業士となるための「統一試験制度」に向けての提言

平成15年2月3日


〈この文書は、「公認会計士監査制度の改革についての金融庁としての考え方」への提言として執筆したものである。〉
TKC全国会会長 武田隆二

1.公認会計士と税理士の職域における基本課題

  公認会計士は「監査と会計の専門家」として「公正かつ誠実に業務を執行」する職責を果たすべきであり、税理士は「税務と会計の専門家」として「租税正義の実現」のため、「独立した公正な立場」において「納税者の信頼にこたえ………納税義務の適正な実現を図ることを使命」とする職責を果たすべきものである。
 公認会計士も税理士も共に専門職業士として「会計の適正化の実現」を図ることを共通基盤として共有し、その上で「監査」と「税務」という異なる職域において、その使命を果たすことに基本的な課題がある。

2.規制緩和に即した制度構築の必要性

 殊に、行政改革推進本部「規制改革委員会」の公表した「規制改革についての見解」(平成12年12月12日)において、「関連・類似資格の統合、乗り入れ」についての項目で、「合理的な範囲で試験………科目の共通化………等を進める」べきことが提案されている。
 行政改革の基本は、「抜本的な構造改革」を図ることで、「国際的に開かれた、自己責任原則と市場原理に立脚した自由で公正な経済社会をつくること」(総務庁『98年版規制緩和白書』)に、その狙いがあるのであるから、試験制度についても、行政コストを削減し、「自由で公正な」しかも「合理的かつ有効な制度」を構築し、もって公認会計士は国内社会においてのみならず、国際社会における国際文化活動を「監査の側面から支えつつも、グローバルな視点に立って「世界経済の適切な運営」と「世界各国における投資者保護」を果たさなければならない。
 また、税理士は、その主たる活動が国内税務であり、かつ、わが国企業の99%を超える中小企業がその対象となっていることから、「国内経済の適切な運営」に役立つよう、「税務の側面から「納税義務者の納税義務の適正な実現」を図ることを通じて、「納税者の保護」を果たすべき職責を担うものである(税理士法第1条参照)。
 かかる観点に立って、課題条件の異なる専門職業士の制度構築に目を向けなければならない。

3.専門職業士となるための「統一試験制度」

 試験制度の改革に当たっては、「専門職業士」としてのそれぞれの職責を果たす上で、

(1) 公認会計士と税理士とで共通的な基盤となる「簿記」と「財務諸表論」とを「共通試験科目」として統一化し、
(2) 公認会計士と税理士とで、その「専門職業士としての使命・職責」が異なることに由来する異なる試験科目について必要とされるものを、それぞれの領域における専門職業士となるための「専門固有試験科目」として設けること

 により、それぞれの「専門職業士」たる資質を国内的に保証できるような制度を構築しなければならない。
 それゆえ、今回の公認会計士法の改正に当たっては、試験制度の抜本的な改正を図るために、税理士法の改正を含めて、試験制度の一本化を図ることが規制緩和の施策の上で欠くことのできない視点である。すなわち、規制緩和という大きな国家的施策の方向に沿って、「専門職業士となるための統一試験制度』」を確立することが緊要である。

4.「共通試験科目」としての「簿記論」の必要性

 公認会計士や税理士の職業の基本となるものは、企業内に生起した経済事象を余すところなく、正しく記録することから出発している。これら企業取引を処理するシステムとしての「会計」は、
1. 企業の「入り口段階」での経済事象の識別と記録――エントリー段階(簿記
2. 識別された取引が「処理される過程」――プロセス段階(内部統制機構の信頼性
3. 処理結果をとりまとめて財務諸表として、外部に公表する「出口段階」での情報の伝達――エクジット段階ディスクロージャー

 という3つの段階から構成されている。
 上記3段階の各段階での処理が適切であることが、「企業情報の信頼性」を保証するものとして重視されなければならない。上記1.の役割が「簿記論」の領域を司り、2.の領域が「監査論」での主要課題である「内部統制機構の信頼性」の問題領域となり、3.の領域が証券取引法の目指す「企業内容開示制度」の問題領域を形作るものであって、どの領域も「会計」を職業とする公認会計士や税理士にとっては、必須の領域となっている。
 ただ現状での簿記論の問題点は、高等学校教育では日本商工会議所の簿記検定試験に合格させることが、生徒たちの就職に関わる問題として、もっぱら「受検簿記」に偏る傾向があるため、真に実務上必要とされるエントリー段階での「記帳の重要性」――裁判のおりに重視される「帳簿の証拠性」――についての教育上の配慮に欠ける面がある。
 また、公認会計士監査においては、上記2.の「内部統制機構の信頼性」を確かめた上での「試査」による監査方法が一般化しているために、エントリー段階での問題意識が相対的に希薄化してきている。このことがアメリカのエンロン問題のきっかけをなしているのである。つまり、損失事象をオフバランス化することによる不正である。プロセス重視の監査では、見逃される危険のあることを承知しての不正行為であった。「職業会計人の倫理観」が問われ、コンプライアンス重視の志向が大きく浮上しているのは、まさにエントリー不在の制度に胚胎するものである。
 公認会計士試験や税理士試験における「簿記論」の問題内容は、現在のコンピュータをベースとしたネットワーク社会に相応しくないものとなっていることは、「制度運用の問題点」であって、「簿記論不要論」には繋がらないものであろう。情報整理学としての簿記のもつ有用性は、コンピュータ処理という世界においてすら、人間の英知を結集した産物としての役立ちをもつものであって、いかなる時代においてもこの問題(エントリー段階での問題)をないがしろにすることは、誤った方向性であるといってよい。
 「電子開示制度」による情報のネットワーク化において、殊に、会計の共通言語としてのXBRL(eXtensible Business Reporting Language)を普及させるためのベースには、簿記による「記帳の信頼性」がなければならず、その上に立って構築されるべきものである。正しいエントリーが存在するという前提があってのディスクロージャー制度であることを忘れてはならない。
 以上の理由から、公認会計士であれ、税理士であれ、会計職業に携わるものが、簿記の重要性を認識しない時代を迎えることは、職業の亡国時代を形作ることになりかねないのである。
 その意味において、「簿記論」を専門職業士の試験科目から外してはならず、試験制度の運用において、教育面の改善を含め、試験問題の内容点検と反省の下で、よりよい専門職業士の世界を築かなければならない。この試験制度の運用面における改善に当たって、試験を担当する省庁の指導力に期待するところが大きい。

5.規制緩和の精神に沿った職域協同体制の確立

 既に提案されている公認会計士法の改正が、国際社会への対応という形での新たな提案である以上、現行制度にみられる既得権的なものを維持しながら、改革に踏み切ることは、将来に大きな禍根を残すことになると考える。
 今回の公認会計士法の改正に当たって、監査業務の他に、税理士業務を「監査業務以外の業務」として位置づけ、公認会計士試験の論文試験の中に「租税法」という1科目を設けるだけで、税理士業務のできる公認会計士を生み出そうとする制度づくりが行われようとしている。かかる改正において、公認会計士が監査人としての自らの「使命・職責」を果たす傍ら、税理士としての「使命・職責」を果たすためには、試験において税理士となるに必要な科目を税理士と同様に合格することが必須であり、租税法という1科目の合格をもってしては、税理士としての「使命・職責」を果たすことはできないであろう。
 「租税法」という1科目をもって税理士たる資格を与え、現在の税理士とほぼ同数の公認会計士を産出しようとする企画策定には賛同しがたい。
 かかる改正は、規制緩和による自由な職域活動を促進し、国民生活の向上と安定を促すとする規制緩和の精神にもとるものであるだけでなく、円満な職域を明確にした上での職域協同体制の確立という民主的で平和な均衡ある制度づくりに逆行するものといえる。
 このように、半世紀に亘り培われてきた税理士制度の根幹を揺るがすような法改正は、「社会的均衡の論理」からみても、厳に慎むべき改革である。

6.真の制度改革に向けて

 以上提示した試験制度の改革(「専門職業士となるための『統一試験制度』」の確立)により、従来みられた業際問題の解消が図られ、日本公認会計士協会と日本税理士会連合会とのそれぞれの「自主的な取り組みの充実を期待しつつ、行政が公平性・中立性・有効性を確保」することが可能となる。
 「統一試験制度の確立」により、それぞれの異なる業法下において、それぞれの異なる「法の目的」実現に貢献できるものであると信ずるのである。

 

 公認会計士試験制度の改正は、税理士制度の発展に逆行する

平成15年3月6日

〈この文書は、「TKC全国会正副会長会」の席上、公表されたものである。〉


1.逆行する制度改正

 今回の公認会計士法の改正が、第二次世界大戦後の日本経済を会計の側面から支えてきた2つの制度、すなわち、公認会計士制度と税理士制度の調和的・協同的・発展的な展望のもとでの提案となっているかどうかということが重要である。
 今回の公認会計士法の改正において、
 (a)公認会計士の数を平成30年までに5万人に増強することを含み、そのことを達成するために、
 (b)公認会計士試験制度の簡易化を図る
 という提案は、前者(a)において、現在の税理士の数にほぼ等しい程の増員を提案しているのであり、後者(b)において、現行税理士試験制度に比して安易な試験科目をもって、税理士業務が可能であるとする改正である。
 かかる改正は、制度改革において心すべきである「職域協同体制の確立」という「民主的で平和な均衡ある制度づくり」に逆行するものである。

2.制度改革に当たり心がけるべきこと

 今回の改革案は、国際基準に合わせた公認会計士制度を確立するという大義名分をもっての改正提案である。

「本部会としては、企業会計不正事件に対する米国政府の対応などの国際的動向も踏まえ、グローバルな経済環境のもとにある今日の我が国の経済社会において、資本市場に対する信認をいかに確保し、その機能を向上させるべきかという観点から、公認会計士監査制度のあり方についての検討を行った。」(金融審議会・公認会計士制度部会報告「公認会計士監査制度の充実・強化」総論1.)

 「国際的動向を踏まえた」方向での制度の改正提案は、必要なことであり、大いにその線に沿った公認会計士制度の充実・強化を図るべきことは論を待たない。
 だがここで重要なことは、国際文化制度の中で育まれた思想を直ちに日本の制度文化に持ち込み、既存の制度との調和を考えることなく、改革を進めることは厳に慎まなければならない態度である。国際的動向との関わり合いで国内制度を改正しようとする場合、国内における文化制度の中において調和のとれた発展均衡的な改革を行うべきであるということである。
 わが国の制度的事情から、第二次世界大戦後において創設された職業会計人制度の2つの制度が、大会社領域と中小会社領域において、監査と税務という職域を分かちながら、戦後日本経済の発展を会計・監査・税務の側面から支え、今日に至っている。
 公認会計士は「監査と会計の専門家」として「公正かつ誠実に業務を執行」する職責を果たすべきであり、税理士は「税務と会計の専門家」として「租税正義の実現」のため、「独立した公正な立場」において「納税者の信頼にこたえ………納税義務の適正な実現を図ることを使命」とする職責を果たすべきものである。
 公認会計士も税理士も共に専門職業士として「会計の適正化の実現」を図ることを共通基盤として、その上で「監査」と「税務」という異なる職域において、その使命を果たすことに基本的な課題がある。

3.規制緩和の下での試験制度改革

 制度改革は、規制緩和の潮流の中で正当に位置づけられた変更提案であることが望まれる。規制緩和は、次のような狙いをもって推進されている。

「内外の厳しい環境の下………規制緩和とそれを通じたシステム改革により我が国経済社会の抜本的な構造改革を図り、国際的に開かれ、自己責任原則と市場原理に立つ自由かつ公正で民間活力が最大限に発揮される創造的な経済社会へと変革し、行政の在り方をいわゆる事前規制型から事後チェック(事後監視)型に転換していくことが急務となっている。」(総務庁「98年版 規制緩和白書」「発刊に当たって」)

 ここでは、次のことが重要である。

(1)

規制緩和は、システム改革にとって基本となるものであること

(2)

システム改革により、我が国経済社会の抜本的な構造改革を図ることが企図されていること

(3)

構造改革は、国際的に開かれた社会の構築に向けてなされなければならないこと

(4)

自由かつ公正……な経済社会への変革」を実現することに目的があること

(5)

そこには、「市場原理」に立脚した「自己責任原則」が基本となること

(6)

市場原理に立脚したチェックのあり方としては、事前規制型行政から事後チェック型行政へ移行すること

 このような考え方の下で、試験制度のあり方の検討に当たっては、
「自由かつ公正な経済社会への変革」を目指して、現行制度間での調和のとれた改革が求められる。この点に関して、行政改革推進本部・規制改革委員会から公表された「規制改革についての見解」(平成12年12月12日)において、次のように述べられている。

「関連又は同種類似の資格等については、資格の統合や業務の相互又は一方的乗り入れを積極的に推進することを検討するとともに、求められる能力・資質の確認を適正に行いつつ、合理的な範囲で試験・講習科目の共通化・免除、履修科目の免除等を進める。」

 ここでは次のようなことが、指摘できるであろう。
(ア)

公認会計士と税理士との「資格の統合」や「業務の相互又は一方的乗り入れを積極的に推進すること」

(イ)

求められる能力・資質の確認を適正に行いうるシステムが必要であること

(ウ)

「合理的な範囲で試験・講習科目の共通化・免除」が必要であり、また、「履修科目の免除等」を推進する必要があること

 前記(ア)における「資格の統合」の問題は、(イ)において述べられている「求められる能力・資質の確認を適正に行い」うるような形であることが望まれるであろうし、(ア)における「業務の乗り入れ」の問題についても、(イ)の条件を充足する必要があるであろう。
 そのようにみてくると、(イ)において求められている条件は「統一試験制度」を設け、公平・適正な条件設定を行うことによって可能となるのではないかという結論へと導かれる。そのための「合理的な範囲」での「試験科目の共通化」とそれぞれの資格において求められている
専門性を問うような試験科目の特定化」とが明確に打ち出されるような体系だった試験制度が構築されるべきであるということになる。

4.専門職業士統一試験制度

 公認会計士と税理士は、前者が「監査と会計」の専門家として、後者が「税務と会計」の専門家として、それぞれの「役割期待」において共通する面と異なる面とをもつものであり、しかも、「仕事領域」において、前者は大会社を、後者は中小会社を主に分担する職域を担い、更に、その「活動領域」において、前者は国際活動をも視野に入れた行為基準を充足しなければならず、後者は主に国内活動がその活動範囲として措定されているために、国内基準に従った行為基準を満たすことが基本的な要件とされる。
 現行の試験制度を前提に公認会計士と税理士とが、それぞれの領域において「専門職業士」としての職責を果たす上で、

(1)

公認会計士と税理士とで共通的な基盤となる「簿記」と「財務諸表論」とを「共通試験科目」として統一化し、

(2)

公認会計士と税理士とで、その「専門職業士としての使命・職責」が異なることに由来する異なる試験科目について必要とされるものを、それぞれの領域における専門職業士となるための「専門試験科目」として設けること

 により、それぞれの「専門職業士」たる資質を国内的に保証できるような制度を構築しなければならない。
 規制緩和という場合、試験制度について簡易化することが規制緩和につながるとする理解は、誤っている。規制緩和の真の意味は、専門職業士がそれぞれの領域において高度な専門知識を身につけて、終局的には国民一般に対してよりよいサービスを合理的な価格で、適時・適切に提供できる体制を整備するということにあるとする理解が必要である。かかる目的に沿うような試験制度であることが求められる。
 当会が提言した前記の「専門職業士統一試験制度」ないし「職業会計人統一試験制度」では、少なくとも現状を前提としての職域役割を重視した調整案である。この統一試験制度により、従来別々に実施してきた試験制度を一本化することにより、少なくとも、国家試験に伴う行政コストを引き下げる効果が期待できるばかりでなく、職域の違いによる役割期待の相違を受験生自らが意識し、誇りを持ってそれぞれの職域活動に従事する人材を育成することが可能となるという長所を備えている。
 統一試験制度が創設された場合、簡易な試験制度により安易に他の職域に参入することで、国民へのサービスの質を低下することにはつながらず、それぞれの試験を通過したもののみにその職域の資格を与えるという、極めて当然なことが実現されるのである。
 現行の試験科目を前提として、統一試験制度を概念図で表せば、下図のような形で表現できるであろう。

5.提案されている公認会計士試験制度の概要

 現在、金融庁から提示されている新たな公認会計士試験制度の試験科目を図形化して示すと、下図のように表現される。


 当初案では、試験科目中、「簿記」は含まれていなかった。その理由は、公認会計士監査が専ら「財務諸表監査」であって、「記帳」(簿記)を経て出来上がった財務諸表から出発して、試査による監査を行っている現実の実務慣行の中には、簿記の重要性についての認識が全く存在しなかったことによるものであろう。
 この点において、税理士が中小企業を対象として、「記帳」(簿記)を重視しなければ、正しい税務申告はなし得ないとする考え方をもっていることと比較して、大きな隔たりがあることが理解される。この点に関して、簿記を試験から排除しては、職業会計人としては成り立ち得ないとする当会の主張が認められたことにより、修正案において追加されたものである。だが、財務会計論の中の一部に簿記の出題を行う程度として扱われ、また、短答式の科目として位置づけられただけで、十分であるとはいえないであろう。
 また、「租税法」という1科目の試験に合格するだけで、税理士と同一の資格を得て、税理士業務が可能となるという法案には問題が多く、これを容認したのでは、税理士制度の基盤を脆弱化する由々しい結果を伴うものというべきであろう。そこで前述の提案において、次のように述べた。

「かかる改正は、規制緩和による自由な職域活動を促進し、国民生活の向上と安定を促すとする規制緩和の精神にもとるものであるだけでなく、円満な職域を明確にした上での職域協同体制の確立という民主的で平和な均衡ある制度づくりに逆行するものといえる。
 このように、半世紀に亘り培われてきた税理士制度の根幹を揺るがすような法改正は、「社会的均衡の論理」からみても、厳に慎むべき改革である。」

 この問題を解決する唯一の道は、「統一試験制度」を設けて、それぞれの職域において活動するためには、それぞれの領域での資格試験に合格することを要件とする制度による以外にない。
 すなわち、簡易な試験制度で公認会計士の資格を得れば、税理士資格が自動的に取得でき、税理士と同数の5万人体制を構築しようとする行き方はあまりにも一方的であり、そのことに歯止めを掛けるには、統一試験制度を措いて他にない。いまや半世紀以上に亘り培われた職業会計人文化制度が一方的な制度改革によって破壊されようとしている危機に直面している。税理士は、このことに、しっかりと目覚めなければならないのである。

6.むすび

 問題は、わが国における2つの職業団体である日本税理士会連合会と日本公認会計士協会とが、国の政策である「規制緩和政策」に即して、制度的に円満に共存し、日本の職業文化の担い手として、繁栄しうる道は何かという観点が欠けていることであろう。

 当会では、制度の衡平性を保ちながら、両制度が「持続的に発展」するための方途を模索し、提言してきた。                

                  (会報『TKC』平成15年4月号より転載)