■システム座談会

 わが事務所の関与先企業への連結納税導入を語る

<誌上セミナー>
「連結納税制度」活用のメリット
 連結納税のメリットや導入時の留意点等については、こちらをご覧ください。>>

 【出席者(敬称略・順不同)】
  上原 貢(TKC北海道会)
  伊坪 眞(TKC関信会)
  井上 孝(TKC西東京山梨会)
 ◆司会:須永浩二
  (TKC連結納税システム推進プロジェクト事務局長)

 平成14年度から、法人税の連結納税制度が導入され、すでに400を超える企業グループがその適用申請を行っている。中小企業グループにおいては、まだまだその利用は少ないが、今後は連結納税への移行が進むといわれる。TKCでは、大企業が利用する「TKC連結納税システム(eConsoliTax)」の他、TKC会員事務所が利用する中小・中堅企業向けの「会員利用型eConsoliTax」を提供している。そこで、すでに会員利用型システムを活用して、関与先中小企業グループへの連結納税の導入を実践した会員による座談会を開催した。

■子会社の利益を活用して親会社の繰越欠損金を解消

 ――中小の企業グループにおいて連結納税の利用が少ないのは、「大企業向けの税制、処理が複雑」といった誤解がある、あるいは損益通算などの様々なメリットへの理解が浸透していないことなどに要因があるようです。そこで、関与先企業に連結納税を導入されている3人の会員の方から、その取り組みについて忌憚なくお話をいただければ幸いです。まずは連結納税の指導に取り組まれたきっかけをお聞かせください。

 上原 私が手掛けたのは、5社ほどの企業グループですが、以前より、地元の金融機関から「取引先企業がバブル崩壊で抱えた損失を企業再編によって処理できないか?」との打診がありました。そこで、分社型分割、分割型分割、合併などを含めた企業再編を検討するなかで、連結納税が一番良いと判断しました。
 連結納税は、法案成立前から調べて、成立後にすぐに取り組みました。制度ができる前から楽しみにしていたんですよ(笑)。

 伊坪 上原先生と同様、バブル時代の過剰な設備投資を抱えたグループ内の企業に対してどのように資金援助をするかという点から検討し、最終的にグループ内でその会社を救済するために連結納税を選択しました。

 井上 連結納税は、平成13年頃から勉強をはじめ、制度ができる前から、関与先の企業グループに利用できるかどうか検討し、制度ができるとすぐに関与先に提案し、連結納税上の親子会社になるための手当てもしました。規模の小さい2、3社の企業グループですが、2グループが連結納税を採用しています。

 ――中小企業が連結納税を導入するメリットはどこにあるとお考えですか?

 井上 最も大きいのは節税効果が期待できること、とりわけ所得と欠損の通算と繰越欠損金の有効活用ですね。もう一つは、赤字法人のキャッシュ・フローが改善できることでしょうね。
 私どもでは、連結納税制度の対象となる関与先企業グループの状況を踏まえて、シミュレーションを行い、全体としてメリットのある企業に対し、将来の収益予測と節税効果を提案しました。なかには年商1千万円以下の子会社もあります。連結納税に会社の規模は関係ありません。
 具体的には、親会社の繰越欠損金は連結納税に持ち込めますので、まずは繰越欠損金の有効利用を提案いたしました。
 ある企業グループでは、親会社がバブル期に取得した資産の含み損を処理して欠損金を計上しており、さらに子会社のほうで利益が見込めるようになってきましたので、子会社の利益を活用して親会社の繰越欠損金の早期解消をはかりました。
 中小企業では、5社、10社を超えるような企業グループは少ないにしても、子会社を1、2社持っているケースは多いと思います。連結納税は、政府が初年度で8千億円の減収を見込んでまで導入した制度ですから、その節税メリットを活用しない手はありません。


■節税効果を利用したグループ内金融によって企業を再建

 ――伊坪先生や上原先生のケースは、企業再編のなかで連結納税を活用して、企業活力の強化をはかられたということですね。

 伊坪 10社ほどのグループだったのですが、そこは子会社だけでなく親会社にあたる会社も傷んでいたために、株式移転や株式交換によって親会社となる持株会社(ホールディング・カンパニー/HC)を新設し、親子会社間の完全支配関係を新たにつくりました。
 節税については、オーナーの期待もあったのですが、あくまで節税効果を利用したグループ内金融という点を前面に打ち出して提案しました。併せて、中小企業への優遇措置の面などのデメリットについても説明して、オーナーに最終的な判断をいただきました。
 グループ内で資金支援する場合には、寄附金の問題があります。連結納税であれば、赤字会社は黒字会社から法人税の減少額を受け取れますので、資金調達が難しい赤字法人にすれば、非常に大きなメリットですね。
 HC制には、複雑になっていたグループ会社間の持株関係を整理する目的があったのですが、結果として、将来の事業承継もやりやすい形になりました。金融機関からも、グループ全体を見た場合の評価を得られるようになりました。ただ、企業格付けの面からは、グループ全体で格付けすると下げざるを得ないので、あまり賛成はできないといった意見もありました。
 再生するなかで、傷んでいる企業を清算するのではなく、どのように生かしていくかについて金融機関からの理解も得やすくなっています。
 中小企業でも企業再編は有効な手法だと思います。

 上原 連結納税には、目に見えない形で企業を一つにする効果がありますね。

 伊坪 もう1つ付け加えますと、オーナーはHCの社長に、専務や常務など現場の責任者は子会社の社長に就任していただきました。自分の会社という意識を持たせることで、経営に対する責任感も生まれています。

 ――グループ内の企業のシステムは統一されていたのですか。

 伊坪 子会社のうち2社が他のTKC会員の関与先でした。今回、連結納税の採用にあたって、お二人は関与を降りようとされたのですが、子会社の関与を引き続きお願いして、FX2を導入していただきました。
 連結納税にあたっては、子会社から申告のための基礎データを収集しなければなりません。TKC会員同士なら、同じシステムを利用しているので、データが収集しやすいし、すべてFX2なら言うことなしです。

 上原 私の場合は、すべて自分の関与先でしたが、少し規模の大きな企業グループになると、そのような例は今後も増えそうですね。

 伊坪 他の先生の関与先を奪う形になるのではなく、お互いが良くなるような方向で行きたいですね。

■バブル期の損失解消に利用
 金融機関からも後押し

 ――上原先生のケースも、金融機関との関わりがおありのようですね。

 上原 大企業グループと中小企業グループの特性の違いを考えた場合、中小企業グループは、オーナーが同一地域内において異業種での展開をしていて、それぞれの企業の風土や文化が異なることが多いのです。それを無理に1つの会社にするとトラブルが発生するおそれがあります。実際にそのような雰囲気を感じていました。そういったグループ全体の絡みのなかで、連結納税がベストだったわけです。
 私どもが含み損や繰越欠損金の解消、節税効果といったメリットを踏まえ、「赤字をこの年度にこれだけ減らす、これだけ損益を通算したい、含み損を抱える資産を売却して損失を計上したいので担保を外してほしい」といった具体案を金融機関に提案しました。金融機関にとっても、企業格付けのアップにつながるとのことで、背中を押していただきました。
 世間一般では、不良債権処理の影響もあり、企業を清算するとか、やや強引な面が目立っているようです。そうではなく、持株比率を4、5年かけて整理したり、またはあえて時価評価の適用を受けたり、その過程で連結納税を利用する。そこで、資金を移動させ、例えば返済に12年かかるものが7、8年で済むなど、いわば国の税コストをうまく利用することによって、加速度的に企業を良くする。それが中小企業の再生だと思います。

 伊坪 中小企業グループの場合は、企業同士を一緒にするのは難しい面があります。連結納税であれば、それがいわば「みなし」でできるということなのです。

 ――デメリットや注意点などはありますか。

 井上 株式移転の特例を利用して子会社の繰越欠損金も引き継ぐことができたのですが、過年度の繰越欠損金をどう引き継ぐかがメリットに影響してくると思います。
 また、連結納税の開始にあたり、一部の例外を除いて子会社の資産は原則として時価評価となりますから、そこには大変気を使いました。実際、気になる資産もあり、事前に国税局にも問い合わせたりしました。

 上原 租税回避の疑いがある場合には、連結納税を認めないなどと非常に曖昧な表現があります。租税法律主義なのですから、もう少し具体的にしてほしいですね。

 井上 租税回避については、同族会社のケースのように考えればいいと思うのですが、やはり気になるところですね。

■中小企業向けの連結納税システムはTKCだけ

 ――グループ経営を行うTKC会員の関与先中小企業向けの「TKC連結納税システム(会員利用型 eConsoliTax)」は、24事務所、28企業グループでご利用いただいています(平成16年7月末現在)。皆様は、eCon-soliTaxをご利用いただいたと思いますが?

 伊坪 昨年5月に、中小企業向けの連結納税システムを開発してほしいとTKCに頼んだことがあります。そのときは、TKCのほうもまだ中小企業向けまでは考えていなかったそうなんです。すでに連結納税の依頼を受けていたので焦りました(笑)。
 それが急転直下、しかも大変安い料金体系で中小企業向けを提供いただいたので本当にありがたかったです。
 会計事務所の関与先向けの連結納税システムを提供しているのはTKCだけです。他社システムだと数千万円などとんでもない価格ですから、TKC会員の武器として大いに利用すべきです。
 利用した職員の話では、「非常に良くできたシステムで、大変助かった」ということでした。利用2年目になりますが、連結納税の申告の一連の流れが職員にもよくわかってきましたので、次に何をすべきかの判断もやりやすかったようです。

 井上 今年2月に平成15年度版を利用したときには、私のやり方も良くなかったのですが、データのやり取りに時間がかかってしまいました。
 7月に初めて16年度版を利用しましたが、利用した職員の話では、データのやり取りに時間がかからないと、絶賛していましたよ。

 上原 eConsoliTaxを利用するより前に、有名上場企業の子会社である関与先2社が連結納税をすることになり、親会社から送られてきたエクセルのシートに必要なデータを入力する作業を経験していました。エクセルを利用するやり方では、親会社とのデータのやり取りが何度もあり、大変だったのですが、eConsoliTaxでは、そのようなデータのやり取りが全くなく、レポーティングパッケージ通りに入力すれば、すべてきちんと出力されるので職員が驚いていました。
 連結納税の基本さえしっかり理解すれば、あとはeConsoliTaxが処理してくれるので、業務は非常に楽です。本当に素晴らしいシステムですよ。

連結納税は関与先拡大のビジネスチャンスになる

 ――会計事務所においては、すでに法人税業務の一定のプロセスが構築されているなかで、新たに連結納税となると、どうしても特別な業務になる、あるいはルーチン化しにくいという話をよくお聞きするのですが。

 井上 事務所や関与先の事務において、特に影響というものはなかったですね。
 連結納税といっても、従来通りそれぞれの会社の決算を行って、それを集めればいいだけですから、これまでの業務と何ら変わりはないと思います。

 上原 連結納税であれば、それぞれの会社の個別の決算書を持ってきて連結納税の申告書を作成するわけですから、親会社の理解さえいただければ、申告書の作成は、従来通りでスムーズにできるのです。

 伊坪 一部には、連結納税をするために連結決算もしなければならないといった誤解もあるようですが、連結納税のベースは従来通りの単体での決算ですから、特別なことはほとんどありません。

 ――連結納税に取り組まない理由として、「大企業だけの税制、処理が複雑」などのお話もよくお聞きするのですが、連結納税に取り組む意義についてはどうお考えですか。

 井上 法人税の申告は、われわれの中枢となる業務ですから、そのなかの連結納税ができないというのは問題だと思います。
 導入した関与先では、1期目から2千万円ほどの節税効果が得られています。
 関与先は、まだ連結納税そのものをよく知らないと思います。導入の判断は経営者にしていただくわけですが、私どもから連結納税のメリットやデメリットを踏まえた提案をする必要があります。
 連結納税への取り組みはビジネスチャンスととらえるべきでしょう。

グループ経営全体の見直しの意義も大きい

 ――企業再編への活用という点ではいかがでしょうか。

 上原 「企業再編は大企業のことであって公認会計士の仕事」という話を他の税理士の方からもよくお聞きします。ある金融機関の本部の企業再生の担当者からは、「株式交換、会社分割、連結納税について税理士の方に相談すると、『わからない、それは公認会計士の仕事です』と言って、逃げてしまわれるのです」という話を聞きました。
 税理士の業務領域である法人税とは何かと考えたとき、そもそも法人の特性として、設立、現物出資、合併、会社分割、株式移転、連結決算、連結納税、そして破産、清算、民事再生などがあります。その分野に税理士が取り組まない、大企業だから申告業務はしないとなれば、それは税理士が自ら仕事を放棄することになります。無償独占である以上、目を背けることはできないと思います。
 新しい業務分野が広がっているにもかかわらず、それに取り組まない、対応できないとなれば、税理士業界やTKC会員のレベルダウンにつながるのではないかと危惧しています。そのうち名刺に「法人税はできません。企業再編はできません」と書かないといけなくなってしまいます。

 伊坪 連結納税を単なる税金の一計算方法とは考えられないんですね。連結納税を足がかりにして企業再編に結びつけるのは一つの手段として当然のことなのですが、別の見方をすれば、オーナーや経営担当者にグループ経営について考え直していただく良い機会だと思うのです。
 時価評価を含めたグループ全体の資産の洗い出しなどは、こんな機会がないとなかなかできません。連結納税を採用することが個別納税と比較して有利か不利かという計算技術的な問題のみならず、企業グループ全体の棚卸しになれば、それ以上のメリットはないと思います。そういう視点から提案する価値はあるでしょうね。

タックス・プランニングの観点からも避けて通れない

 ――中小企業における連結納税の今後の広がりついてはどのようにお考えですか。

 上原 会員のなかでも、連結納税は今後増加するとの認識をお持ちの方が多いようです。

 伊坪 連結納税のメリットなどが、まだ周知されていないような気がします。実際、メリットの具体的な事例が少ないですし、関与先も3年目になって効果が現れてきましたので、今後3年くらいたって、企業再編や節税面でのメリットが見えてきて、それから一気に広がるかもしれませんね。

 井上 連結納税への様々な誤解などが解け、メリットが広がっていくことで、制度の利用も広がると思います。

 伊坪 ある程度メリットが広がれば、関与先から要望が出てくるようになると思います。すでに、関与先以外の企業から、連結納税についての相談がありました。連結納税に対応できる税理士を探している企業もあります。

 ――最後に、今後の方向性についてのご意見をお願いします。

 井上 これからの税理士は、連結納税も視野に入れて、お客様に将来予測やタックス・プランニングも含めたプレゼンテーションをすることが付加価値の高いサービスの提供になると思っています。これは避けて通れない、また真剣に取り組まなければならない業務なのでしょうね。
 企業の利益の予想やタックス・プランニングについては、継続MASなどをきちんと実践していくことが有効だと思います。

 伊坪 最初は、自分が連結納税に取り組むなど思いもよらず、実際に取り組んでみて、いかに商法やその周辺の法律知識が足りないかということを痛感しました。
 しかし、連結納税を選択する以前の段階で、商法の範疇において企業再編、特別清算など、これまでの税理士業務とは直接関係ないようなことを経験し、単に税金の計算だけが税理士の仕事ではないとも実感しました。
 タックス・プランニングを、最も具体的に提示できるのが連結納税です。企業再編の問題ももちろんですが、そのなかにおいて税制上可能なことを提案すれば、お客様の信頼も向上するでしょう。

 上原 従来は、決算直前の2、3か月前に今期の税額予測をするぐらいでしたが、連結納税の提案の場合には、5年先、10年先にこうなりますという提案で、そこには不確定な要素がかなり入ります。その将来予測に基づいて、お客様は判断されるわけです。
 連結納税の提案は、タックス・プランニングが中心なのです。今までの過去会計における税務計算より将来予測に基づく税務計算が主体になってきます。
 企業再編も含めてわれわれの業務の幅が広がっていくと思います。

(構成/TKC出版 豊開弘行)

 大企業向け「TKC連結納税システム(eConsoliTax)」のコンサルティング活動については、こちらをご覧ください。


(会報『TKC』平成16年10月号より転載)