■中小企業を元気にする経営革新事例

高齢者・障害者向け賃貸住宅
その名は「バレンタくん」!!

村野建設株式会社 代表取締役社長 村野栄一
関与税理士:税理士岡野哲史事務所 所長 岡野哲史(TKC西東京山梨会)

 「街は家という箱で形成され、育みは家庭という集団から生まれ、個の生きがいの一助を空間が育てる、それが住宅建築」。東京都あきる野市で創業70年の村野建設(株)村野栄一社長は住宅建築をこう捉える。初代が宮大工の棟梁として会社を興し、二代目が事業を拡大し、そして三代目の村野社長は、抱負なアイデアと社会貢献への意欲から高齢者・障害者専用賃貸住宅「バレンタくん」を登場させる。兄弟のような間柄という岡野哲史会員のフォローもあり、当サービスは、昨年都庁から経営革新支援法承認のお墨付きを得る。

高齢者向けバリアフリー住宅の
レンタルだから「バレンタくん」

 ――「バレンタくん」という言葉の響きがとってもいいですね。

 村野 ありがとうございます。昨年11月、中小企業経営革新支援法(革新法)の承認を受けました。この響きと合わせて全国区の名前になればいいのですが。

 ――ネーミングの由来は?

 村野 バリアフリー(高齢者や障害者の生活に不便な障害=バリアを取除く)のレンタルシステムの略です。これはバリアフリーの賃貸住宅の建築を、土地の有効利用を考える地主さん(オーナー)に提案し、その建築物件を当社がサブリース形式で借り受け、高齢者や障害者への入居の斡旋、入居後のフォローまでを一括して行う介護住宅サービスです。
 これまで高齢者や障害者が物件探しをする場合、保証人がいなくて断られるとか、車イスが使える住環境がない。あるいは身寄りもなくさみしいのにペットと暮らせないなどの不都合がありました。また資産の有効活用を考えるオーナーにしても、高齢者の一人暮らしは心配だし、家賃の滞納も気になるなどの事情がありました。しかし「バレンタくん」なら、バリアフリー住宅の提案・施工、入居の仲介等を当社が代行するので、そうした悩みが一気に解消されるのです。

 ――どのような住宅を提案するのですか。

 村野 バレンタくん仕様といって、玄関・トイレ・浴室の手摺り、洋式便器、段差なし床板、ルームエアコン、自動給湯器付風呂釜、出入り口スロープ等が完備された住宅です。あきる野市ですと3DKで9万3千円、1DKで6万5千円の賃料です。相場からいえばやや高めの値段ですが、入居後のサポート料も含まれています。これまで3世帯が入居しましたが地主さんとの関係も良好。入居者にも大変喜んでいただいております。


 ――部屋探しから入居までの流れを教えてください。

 村野 プランA・プランBのツーパターンがあります。プランAは入居者の斡旋から契約までの気に入る物件探しのお手伝いです。そして入居先に介護設備工事が必要なときは、最適工事計画や適正見積、補助金申請等の助言をします。プランBは入居者の物件探しの丸ごとお任せプランとなります。
 入居後のサービスもツーパターン用意しました。「一般管理システム(月額会費6,500円)」といって見守り管理サービスや不審時の連絡等を当社が請負うものと、保証人がいなかったり残存家財の受入れ先のない方には、「特別管理システム(月額会費11,500円)」といって、生活のお手伝いや死亡時の立ち会いなどを行うサービスがあります。こちらの場合は保証人不在の担保資金として入居時に家賃7か月分の預託金を納めていただく仕組みです。
 賃料は毎月当社が一括して受け取り、管理料を差し引いてオーナーに支払う方法を取っております。また当社が土地を借り、バレンタくん仕様の住居を建設して賃貸業を行い、地代のみをオーナーに収める定期借地権を活用したケース、あるいは既存の賃貸住宅をバレンタくん仕様にリフォームして提供するケースもあります。

 ――入居者がお亡くなりになると、どのようなサポートが行われるのですか。

 村野 保証人がいれば身元引受をお願いします。しかし身寄りのない方は、預託金を活用し、死亡時の立ち会いや葬儀等の代行を行う公的福祉団体への連絡・調整等を行います。

車イスのゆっこさんとの
物件探しでわかったこと

  ――このサービスを始められたきっかけは?

 村野 ある方から「高齢者と障害者の二人きりの家族がいて……」と部屋探しの相談を持ちかけられたのです。もし年配の親御さんが亡くなれば残された障害者の方は身寄りがなくなる。受け入れ先を探すといっても家主側も不安、そこで何かあったときの保全処置を講じて入居者も家主も安心して暮らせる住宅のアイデアがないものかと思いました。

 ――御社ホームページにある「ゆっこの体験記」を拝見しました。

 村野 埼玉県在住の車イス生活の女の子が自立を目指し、必死に物件探しを始めるという体験記です。私も二
度足を運んでお手伝いしました。障害者の自立でまず最初にぶつかる問題は、資金でも介助でもなく住居なんです。車イス生活者への認識のなさや偏見、障害者が普通に暮らすことへのバリアの多さ。物件探しの右も左もわからず途方に暮れるゆっこさんのような方を知り、建設業を通じて何とかお役に立てないものかと思いました。

 ――ゆっこさんの物件は見つかりましたか。

 村野 もちろん(笑)。当たり前の優しさがあれば自然と相手の立場を思いやれるのに、心にバリアがあるから本当のバリアフリー社会が実現しない。偉そうですが、「バレンタくん」は、そんな使命感で始めました。

都庁で的確な助言をもらって
計画に一段と磨きがかかった

 ――では岡野先生、「バレンタくん」の承認申請をどのように支援されましたか。

 岡野 去年8月に、東京都の経営革新課に赴き、計画内容を相談したのです。そのとき担当の方から、ITをもっと活用すべき等の的確な助言をいただいたのです。

 村野 それで見守り管理サービスに人の動きを察知する最新式のセンサーを導入し、入居者の動向や体調不調を感知できるよう改善しました。結果として、いろいろなアイデアを煮詰めることができて、計画の完成度を高めることに繋がりましたね。

 岡野 そして10月に申請書が受理され、11月に承認のお墨付きをもらったのです。

 ――継続MASの五か年経営革新計画システムを活用されたのですか。

 岡野 ええ。5年で15%の付加価値額アップを目標に作成しました。事前に村野社長がエクセルで計画の青写真を作っていたのでとてもすんなりできました。ただし東京都の場合、「(別表3)経営革新計画の具体的内容」という独自の添付書類があり、これだけは都庁ホームページからダウンロードしました。

 ――政府系金融機関などから融資を受けられたのですか。

 岡野 融資は受けていません。村野建設さんは無借金経営で財務面が健全ですから税法上の特典を期待した程度です。

 村野「バレンタくん」というアイデアを公の機関に認めてもらいたかったのです。厳しく見てもらって磨きをかける。そんな感じです。

 岡野 ある金融機関の支店長からは、「建設関係で承認を得るのは難しいといわれるのにすごいですね」と言われました。

 村野 地域の新聞にも紹介されました。これまで手摺りの取付けが271本、段差の解消工事を87か所行いましたが、介護に強い村野建設というイメージが以前にもまして定着したと思います。福祉や行政の方からも「ああ、バレンタくんの……」と言われるようになりました。
 

社長のビジョンを頭の外へ
継続MASで力づよく決断

 ――岡野先生とはJC(青年会議所)を通じてお知り合いになったそうですね。

 村野 2人とも福生青年会議所のメンバーでした。97年に、岡野先生の呼びかけで、あきる野青年会議所を設立することになり、私にもお声がかかったんです。

 岡野 私が初代理事長で、村野社長には総務委員長を担当してもらいました。

 村野 だから関与云々以前から兄弟のような付き合いをさせていただいております。社長になる前は、村野建設のリフォーム部門の(有)リテリアの顧問をお願いし、会社全体の財務は2年前に岡野会計に移行しました。

 ――TKC会計人は、毎月企業を訪問して財務内容を精査し、正しいデータに基づく数字面でのアドバイスを行うわけですが。

 村野 巡回監査担当者の吉岡さんとは親しく話せる関係で、迷ったときはいつも相談します。岡野先生の手厚いフォローもあって本当に助かっています。昔は帳簿をつけるのみで決算はお任せでしたが、現在は月々の利益をきちんと把握できるようになりました。

 ――TKCシステムのご感想は?

 村野 DAIC2と継続MASを活用しています。DAIC2を入れて、現場ごとの損益状況をタイムリーに確認できるようになりました。採算面でプラスと見積もっていた現場がじつは赤字だったなんてこともわかる。例えば、手摺りの取り付けで壁の裏側の水道管を傷つけたりすると総入れ替えとなる。そうした「だめ直し」が施工段階で確認できます。
 また継続MASのおかげで目標を作るとき、どの部門を抑えどこに力を注ぐべきか、経営者として大局的な視野で考えることができるようになりました。通常、会社のビジョンは社長の頭の中だけにあります。しかし目標と戦略を練り、文書化して第三者に伝えることで、計画が一気に現実味を帯びるのです。数字の裏付けをとりながら目先の現象に流されずに計画を練れますし、壁にぶつかったら岡野先生に聞く。すると「よしやろう」という気持ちになります。社長のビジョンを整理し、決断を後押しするツールとして継続MASはすごくありがたいですね。

伸びる会社はここが違う!
JCマン魂で上場を目指す

  ――社長に就任して何年になりますか。

 村野 3年です。当社は、あきる野市で大工だった祖父が昭和元年に創業し、父の毅(現会長)がついで、私が三代目。祖父は腕利きの棟梁で宮大工としても地元の神社を手がけています。以前私は、住宅メーカーで営業をやっていて、26のときに脱サラして、33で社長を任されました。現在は、従業員は9名、新築、リフォーム、不動産の仲介、「バレンタくん」と会社全体をマネジメントする立場になりました。

 ――村野建設が建てる家の特長は?

 村野 家族のため、地球のため、生きがいのための健康住宅です。アレルギーの元となる材料は使わない。太陽熱利用などで地球に優しい快適な住環境も工夫し、また介護する側介護される側の気持ちも汲んだ住まいを心がけています。デザイン面も古材などを使ったこだわりの家造りをしています。

 ――この3年間を振り返ってご感想は?

 村野 ただ単に村野建設を踏襲するのでなく、永年の地元の信用と新しい建築スタイルを融合させることに必死でした。新しい方針に協力してくれない人もいてかなり厳しい決断も迫られました。人事、給与体系の変更、部門の再編、財務と何でもやって、どうしたら従業員が私の方を向いて仕事をしてくれるのか。この3年間はまさに会社の内固めの時期でした。
 現在の課題は営業スタイルの模索です。これまで新規開拓についてはチラシの配布やら現場公開をしてきましたが、ここにきて家を建ててもらったお客さんに満足してもらえる村野建設でいいのではないかと思えるようになりました。新規顧客よりも既存のお客さんに納得してもらい、その信頼で新しいお客さんを紹介してもらえばいい。そのためには定期巡回サービスを充実させ、診断報告書の作成、消耗品の交換サービスや住宅相談を実施する。それと同時に安全講習などの社内研修もきちんとする。今後は現場の声を汲んだ工事施工事例集を作ろうかとも考えています。

 ――これからの村野建設を語ってください。

 村野 地域・人から応援される企業になる。「村野建設はよくやっているから頑張って続けてくれ」といってもらえる会社にしたいですね。お金儲けだけでは会社は伸びないと思うんですよ。私は「奉仕・修練・友情を信条としてよりよい社会づくりを目指す」JCマンですから、地域社会に貢献していきたいと思っています。そして将来は上場を目指す。

 岡野 売上プラス社会的な存在価値。伸びる会社の条件はそこだと思います。今後とも村野社長に慕われる兄貴的存在として、つけあがったときには厳しく、落ち込んだときには優しくサポートしていくつもりです(笑)。

 村野 この頃、なかなか飲みに連れて行ってくれないんですよ(笑)。

         (TKC出版 程田靖弘)

村野建設株式会社

代表取締役社長 村野栄一
創業 昭和元年(法人化 昭和47年)
業種 建設業(リフォーム・不動産業含む)
年商 約2・5億円  
従業員 9名
経営革新の内容 新役務の開発又は提供
(高齢者・障害者専用住宅の建築・賃貸借)
住所 東京都あきる野市二宮2389‐4
電話 042(558)1138
  
税理士岡野哲史事務所
所長 岡野哲史(西東京山梨会/創業・経営革新支援委員会委員長)
住所 東京都あきる野市秋川3‐6‐9 フレグランス秋留台A‐102
電話 042(550)0222

会報『TKC』平成15年 7月号より転載