■中小企業を元気にする経営革新事例

良品が客を呼ぶ・仕組み
業界随一の技術力で選ばれるフジタへ

株式会社コイルセンターフジタ 代表取締役社長 藤田守興
関与税理士:税理士天野清一事務所  所長 天野清一(TKC東京都心会)

 「いや〜、昨日はいい元気をもらいました」。(株)コイルセンターフジタ 藤田守興社長は、東京都心会主催「TKC経営革新セミナー」講師セーラ・マリ・カミングス氏(桝一市村酒造場取締役)の話を聞いた翌日、そう感想を述べた。当社は、ステンレンス・チタン・アルミ等の委託加工業を営み、創業48年、その技術力は業界でも随一。昨年9月、天野清一会員支援のもと経営革新支援法に挑戦し、アルミの新加工技術に必要な開発資金を手に入れた。社長曰く「青い目のセーラさんじゃないけど、何も知らない素人の発想だからできた」という新技術は環境にも貢献するという。

ニューヨークの地下鉄の材料加工もわが社の技術

 ――コイル加工業とは耳慣れない言葉ですが……。

 藤田 簡単に説明すると、大手製鉄メーカーから出されるステンレス・チタン・アルミ等の鋼板やコイル状のもの(金属鋼帯)を、建設資材や自動車部品に使えるように指定された寸法に切断したりする仕事です。

 ――加工技術には自信をお持ちですか。

 藤田 この業界ではトップだと自認しています。永年、切断加工と平坦度矯正技術を専門としてきたノウハウは、創業以来、わが社の歴史であり自信です。関東だけでなく全国から加工依頼がきます。国内ナンバーワンの技術ですから海外からも発注がくる。NYの地下鉄車両やマレーシアの世界一高いペトロナスタワーの外壁素材も請け負いました。
 国内では東京ビッグサイトの幾何学模様の外壁もうちのシャーリング(剪断加工)技術があったからできたのです。大阪ドームの湾曲した屋根や長野五輪ドームもそうです。

 ――藤田社長は二代目だそうですね。

 藤田 先代の父藤田守夫が昭和24年に創業し、39年に法人化しました。現在従業員は70名。本社は本所で、千葉に工場があり、関連会社には(株)フジタ運輸倉庫があります。製鉄運搬用大型トラック10台を常時運行させ、受注品の引取り納入・工場加工・出荷という一括した流れで取引を行っています。敷地3,000坪の千葉工場には、「薄板用」「中板用」「厚板・特殊用」「極薄用」の4ライン(レベラーライン)と2機のシャーリング機械があり、昼夜2交代制で稼働しています。

 天野 現在売上は約15億円ですが、全額加工賃で原価を含みません。利益ベースでは通常の100億円企業に相当します。

世界で1つの第3号ラインでブランド力(加工賃)を死守

 ――どんな営業方針をお持ちでしょうか。

 藤田
 受託といっても、待っていれば仕事がくるわけでなく、やはり提案型の受注も行います。営業のモットーは、お客様に満足していただける製品を確実・迅速に出荷する。「良品は客を呼ぶ」という言葉がありますが、営業は中身で勝負です。

 ――景気低迷で受託量に増減はありますか。

 藤田 やはり業界のパイ自体は減りました。ただ景気が落ち込んだといっても日本のものづくりは生きてるし、より高度化するニーズもある。その仕事をいかに取り込むかということだと思います。

 ――高度化するニーズとは?

 藤田 高機能材といってハイテク関係や鉄道車両、航空機に使われるチタン等の加工度の困難な鋼材がどんどん出回っています。ステンレス一つとっても使用意図によって種類がいくつもある。一般のステンレス加工はどのコイルセンターでもできます。でもステンレス合金となると、強度・耐食性等に応じて固くなったり形状が悪くなったり加工が難しい。それはうちにしかできない技術です。

 本多(専務) 技術力、即ち機械力なんです。特に先般リニューアルした第3号ラインは、世界で1つといっても過言ではありません。

 ――設備投資が大変ではありませんか。

 藤田 第3号ラインは13億円かかりました。ですから設備投資と売上回収の兼ね合いが一番のキーとなります。機械は10年ほどの償却期間で購入します。幸い、この業界には価格破壊というのがなく、継続的な売上が見込めます。もちろん加工賃の引下げ要求はありますが、1本のラインにはそれなりの知恵とお金が注ぎ込まれており、フジタの生命線です。この技術力はわが社のブランドですから最低限の採算性は譲れないのです。

 ――機械はオリジナルですか。

 藤田 製造は機械メーカーがしますが、うちの場合、設計の段階から独自のスキルを盛り込むわけです。他社は出来上がった機械を購入し稼働させるだけです。通常7億円も投資すれば相当な機械ができます。うちはその2倍の13億円。矯正力、品質、量ともにケタ違いです。それだけ設備投資をして回収できる会社はまずありません。

 天野 その機械が4つ、つまり4ラインであらゆる加工に対応できるのです。だから全国から仕事が集まる。この業界では圧倒的な技術力と加工量だといえます。

 ――クレームゼロにも挑戦されているとか?

 藤田 「ISO9002」を認証取得し、安全・品質・生産に関わる「重点管理項目」を設けてクレーム発生防止に取り組んでいます。クレームが一番応えるのです。お客様に迷惑をかけ、かつ信用を落としますから。

 ――ISO取得の効果は?

 本多
 万一クレームが発生しても徹底した原因究明を行い、二度と起こさない対策を講じ、取引先に報告します。

 藤田 従業員の意識改革もできました。従来の口頭報告から文書提出となり、原因と結果が瞭然となりました。また年2回の維持審査があるので常に一定の品質が保たれる。
 お陰様で、製品にならないようなコイルはフジタに持っていけば直してもらえるという認識のようです。波打っている鋼板をうちの技術で平坦にすれば、廃棄処分でなく再商品化できる。難しい仕事を任せられるというのは、本当に有り難いことですね。

投資と回収の隙間を突く
融資の決め手は積極公開

 ――財務面の支援状況をお聞かせください。

 天野 FX2と継続MASを導入し、毎月巡回監査を行い、月次決算を提供しています。四半期ごとの業績検討会では、経営計画の実施状況を検討し、ラインごとの部門別管理、取引先ごとの出入金の管理、また金融機関との折衝も任されております。

 本多 年3回、幹部職員が財務資料を囲み、先生から生産目標や収入金額に関する達成度合いを各責任者に逐一質問をされるので、こちらもしっかり勉強していないといけない(笑)。

 天野 設備投資の額が膨大ですから、その間の運転資金が最大の課題なんです。現在は低金利ですが、金融情勢の変化に備えて借入金利の固定化を心がけています。
 
 藤田 機械導入後の1、2年が厳しいのです。新ラインですぐ良い製品ができるかといえばそうではなく、何度もメンテナンスを繰り返し、自分の手足のように使いこなすまでにはどうしても2年はかかります。

 天野 この時代、メインとサブという借入形態は通用しません。都銀、政府系金融機関、地銀、信金というように複数の金融機関とお付き合いし、融資も順繰りで交渉するようにしています。また試算表を定期的に提出し、交渉の際は1年先の資金繰り計画をきちんと提示します。すると銀行の方から「いつ頃資金が必要ですか」と逆に提案されるわけです。

 藤田 先生とは15年以上のお付き合いですが、いつも数字以上のお仕事をしていただいて感謝しております。

素人の発想が革新法に合致
新加工技術は環境にも貢献

 ――革新法に挑戦されたきっかけは?

 藤田 新規のアルミ合金加工の受注があって、その加工には鋼板を伸ばすロールの改良が必要で、実験をすると結果は上々、でもお金がない。そこで設備資金をなんとかできないかと思ったわけです。

 ――どのような改造を?

 藤田 ロールの改造です。ちょっとした発想の転換でした。

 天野 社長曰く「全くの素人の発想」だそうです。

 藤田 簡単に言うと、鋼板を伸ばす際に生じる板の湾曲を平坦にするロールの開発です。皆さんにマネされると困るのであまり詳しくは言えないのですが(笑)。

 本多 アルミの厚い板をコイル状にする技術はありましたが、これを板状に戻し平坦にして切断する技術がなかったのです。従来は、ある一定の長さの鋼板を、パチンパチンと切って加工するしかなかった。でもそれだと板の両端は余って廃棄処分です。しかし薄く伸ばしてコイル状にすると連続加工ができ、これまで「歩留まり(素材に対する製品化率)」が4割だったのが、なんと7割に向上させることに成功しました。

 藤田 アルミは高価ですから大手製鉄メーカー側も大助かりです。しかもアルミの溶解は高温の電気炉でなされますから精錬の6割が電気代です。新加工技術で廃材が大幅に減れば、日本経済の無駄もなくなり環境にも寄与する。経営革新計画には「化石燃料の節約とCO2の削減に貢献」と記入しました。

 ――申請から承認までの流れは?

 天野 昨年8月下旬に都庁に相談に行き、9月半ばに提出、10月下旬には承認を得ました。東京都心会の創業・経営革新支援委員長をしていたこともあり、都の経営革新課の安田隆一課長補佐を勉強会に2度講師としてお招きしていました。ですから相談の際は、安田課長補佐も同席してくださり、担当者が革新法の説明からはじめたので「天野先生はもうわかっているんだから」という具合でした。

 ――TKC会計人に対する都の評価は?

 天野 この半年で認知度がぐんと変わりましたね。「今後もどんどん申請をお願いします」と言われました。担当者からは「会社の現状と課題」「その解決策」「新技術の導入でどう改善されるのか」と訊かれ、継続MASのPDCAサイクルそのままにお答えしたらOKがもらえました。
 計画に関しては、新加工技術に関する雛形文書を社長に作成してもらい、それに継続MASのデータを活用し、5年計画・付加価値率3%で、1週間で作成して申請しました。
 また事前に中小企業金融公庫に革新法申請の経緯をお話しし、融資の依頼をお願いしました。公庫さんからも「承認があり次第応じます」ということで、設備資金1億1千万円の融資の確約と革新法関連の運転資金の優遇融資の提案も受けました。

勇・猛・精・進
このままに進む

 ――これまでを振り返っていかがですか。

 藤田
 この道ひと筋30年です。15年前、先代の跡を継いだときはまだ従業員も20名弱でした。それから地道に拡大を続けた。そこから独自の技術と信頼が生まれました。やはり企業は1日ではできない。

 天野 それと社長は従業員の方をとても大切にしますから、定着率が非常に高いのです。

 藤田 機械が良くても人が駄目なら製品も駄目。従業員の腕が良くても機械が駄目ならやはり駄目。人と機械のバランスですかね。景気が落ち込んでも給料は下げずに何とかやっています。いまを凌げば先が見えてくる。

 本多 フジタは創業以来、独立系のコイルセンターとして頑張ってきました。今後は大手製鉄メーカーも事業再編で、社内精製加工をやめる方向です。すると合理化でオーバーフロー化した仕事を外注化します。その引受先としても当社は評価されるようになりました。

 藤田
 「フジタさんの加工じゃないと使いたくないよ」と言われるようになりました。やはり同じ値段を払うなら良い加工品で製品を作りたいわけです。
 すると自然とわが社は「選ばれるフジタ」になるわけです。

 ――今後の意気込みをお願いします。

 藤田 規模でなく質を追求する。近年この業界では、加工業と倉庫業を兼務した仕事が多くなりました。以前は、素材を加工したらまたメーカーに納品し、そこから二次加工メーカーに配送されましたが、合理化の波で当工場から直接出荷という流れになりました。将来的には備蓄倉庫を建設し、大手製鉄メーカーからより安定的な受注が確保される体制にシフトしたいですね。
 それとこれは将来の夢、クリーンルームの加工工場を作ってみたい。空調も温度調整も完璧で塵一つない工場で、ハイテク機器向けの素材を扱いたいのです。板から箔への挑戦、鉄の感覚からの脱却です。
 いままで工場内で大きな事故もなく無事やってこられました。70名の命と生活を今後も大切にしながら新しい挑戦を続けます。
 私は柔道をやっていて三船久蔵十段という柔道の大家からいただいた書を社長室に飾ってあります。「勇猛精進」。この言葉のままに進みますよ。

 本多 あとは人材育成ですね。我々の世代から次の世代にこの会社をどうつないでいくのか。人材こそ会社の宝だと思うのです。

 藤田
 いい若い子たちが育ってきていますからね。

         (TKC出版 程田靖弘)

株式会社コイルセンターフジタ

代表取締役社長 藤田守興
創業 昭和24年7月(法人化 昭和39年10月)
業種 金属加工業
年商 約15億円  
従業員 70名
経営革新の内容 新技術の開発
(アルミニウムの新加工技術)
住所 東京都墨田区本所3-22-7(本社)
電話 03(3625)3346
  ※千葉工場
   シャーリング工場
   関連会社に(株)フジタ運輸倉庫

税理士天野清一事務所
所長 天野清一(東京都心会)
住所 東京都新宿区天神町63志村第2ビル5階
電話 03(3269)2687

会報『TKC』平成15年 3月号より転載