■中小企業を元気にする経営革新事例

地震・台風・冷害に強い防災性抜群の「屋根土」を開発

有限会社瓦工事ミヤケ 代表取締役社長 三宅黎志郎
関与税理士:馬越会計事務所 所長 馬越晃一(TKC中国会)

 「甍の波と雲の波」と唱歌に歌われた日本家屋の瓦屋根。しかしその美観に反し、瓦屋根には、台風や地震等に弱いという、防災上の欠点が指摘されてきた。これは瓦の下地材である「屋根土」の強度の問題と言われている。瓦工事ミヤケは、試行錯誤の末、震度5でも着脱しない屋根土の開発に成功。経営革新支援法の承認を受けた。高い施工技術を支える黎志郎社長と、満男部長の若々しい発想が結合して、飛躍に備える同社を、馬越会計事務所が全力で支援している。

三宅黎志郎社長(左)と現場をあずかる満男部長(右)屋根工事には、良いものを形にして残す喜びが…

 ――瓦工事を始めて30年とうかがいましたが、端的に言ってどんな特長のあるお仕事でしょうか。

 三宅(黎) 私自身もそうですが、この仕事は、小資本・少人数で始められるという利点があります。その反面大きな規模になりかかると分散します。厳しい条件の仕事ですが、屋根というのは建物の本体と分離された世界で、創造の世界です。自分のやった結果が相当長く残ります。いいものを形にして残す仕事に携わっているという喜びがあって、そこに生き甲斐を感じてやってきました。

 ――会社にしたのはいつ頃からですか。

 三宅(黎) 私はサラリーマンとして建設会社に14年勤めて瓦工事を担当したのですが、昭和60年5月に独立して自分で始めました。その頃から、青色申告にして馬越先生にみてもらっていたんですが、先生から会社にした方が得じゃないかと言われて、平成5年に有限会社にしました。

 馬越 売上のほうも順調に伸びていましたので、法人化を勧めました。

 三宅(黎) 会社にした当時、社員は私と職人4、5人の規模でした。仕事は大手ハウスメーカーS社からのものが多くて、工事収入の60%から70%でした。

 ――大手ハウスメーカーとのコネクションはどのように作られたのですか。

瓦中央の白い部分は同社の開発した防災性抜群の屋根土 三宅(黎) 勤務しているときに、S社に瓦屋根を扱うことを勧めたのは、実は私なんです。それ以前は、S社のプレハブ住宅には、カラーベストしかなかったんです。岡山県では最初にN社が、プレハブに瓦屋根を載せており、その施工の9割は、私のいた会社で受けていたわけですが、受注先を増やそうと、S社に瓦屋根の施工を提案したわけです。

 ――今もS社の仕事が多いのですか。

 三宅(黎) 今は殆どありません。というのは、1社のウエートが大きいのはよくないと、6、7年前から意識的に減らしてきました。大手は支払いなどはきっちりしていますが、しんどい思いをするわりに、見積金額は平米いくらと決められていて、瓦はどこから、ビスはどこから、いくらで買え、と指定され。こちらは手間賃だけですから、どうしても利益は圧迫されていくわけです。

 三宅(満) そこで、リフォーム事業へ少しずつシフトしようとしたわけですが、直接お客様と対面する仕事なので、かなり気を遣いますし、知識も必要で最初は大変でした(笑)。

新商品開発のきっかけは石灰汚泥処理のテレビニュース

 ――平成12年に「屋根土の新商品開発と生産」で経営革新支援法を申請されたそうですが、新商品といいますと。

 三宅(満)
 屋根土の場合は、大きな地震や台風に遭うと瓦ごと着脱しやすいという弱点があります。実際に瓦の被害というのは、かなり多くて、私も阪神大震災の後、神戸で復旧工事をして実感しました。地震で崩れやすく、水にも弱いので、瓦を公共建築からはずそうという、声が出たくらいです。
 国土交通省としても、この点を重視して、瓦工事については、より厳しい建築基準を設けようとしていて、平成13年8月に出たガイドラインでも、震度5がきても着脱しないようにという厳しい内容になっています。

 ――強い屋根土の開発は、国の防災対策上の要請でもあるわけですね。

 三宅(満) 石灰を混ぜて固めるという方法が、神戸で使われました。鉱山資源のある岡山県、岐阜県、山口県などの限られた地域でも行われていましたが、飛躍的に強度を高めるところまではいっていませんでした。

 ――どのようにして、新しい屋根土を開発されたのですか。

 三宅(黎) その頃、たまたまテレビを見ていたら、夕方のニュースで、岡山のN石灰工業という会社が、石灰の最終工程で石灰を洗浄した後の汚泥(炭酸カルシウム)を有効利用しようとしているが、なかなかよい活用法がなくて困っていると言っていたのです。
 早速、息子がN石灰工業さんに飛んでいって、泥を見せていただいて、これならいけそうだということになって、N石灰工業さんの施設をお借りして、向こうの研究員さんとともに、何度も成分の配合を変えながら試作品を作り、私が現場で使用してテストしながら、共同開発という形で、今までにない強度の新しい屋根土の開発にこぎ着けたわけです。

 ――強度のチェックはどのようにするのですか。

 三宅(満) 耐震テストをします。新しい屋根土を使って実験した結果、震度5に棟11段積みでも、耐えることが証明されました(従来は最高が棟5段積み)。国土交通省のガイドラインでは、震度5の地震でも崩れない屋根を作りなさいと示されていて、やがて建築基準法にも取り入れられると見られていますので、それを先取りした形です。

馬越会計事務所の助言で経営革新支援法を申請

 ――経営革新支援法を申請したきっかけは。

 三宅(満) 最初は、私が労働省の新規事業への雇用助成制度のちらしを見て、馬越先生に相談したのです。そうしたら馬越先生から、中小企業庁の方にも、経営革新支援法という制度があるので、申請してみてはどうかと勧めていただいたわけです。

馬越晃一税理士と今後の戦略を話し合う 馬越 うちの事務所の元社員で、独立してやっている中小企業診断士がいます。彼を紹介して、申請書類の手続き等の一切をサポートしてもらいました。それで、満男さんにうちの事務所に来ていただいて、5か年にわたる収支計画や資金計画を話し合いました。様々な角度から売上分析等を行いシミュレーションした結果を申請書に添付しました。

 ――支援法では、付加価値の伸びが重視されるようですね。

 三宅(満) 馬越先生ともよくご相談して、申請時の付加価値額を3年後に168%にすることを目標にしました。

 馬越 付加価値額を3倍近くにする目標ですが、高い商品力を持っておられますので、支援法の助成を受けて、生産体制を整備し、販売促進に力を入れていけば、達成可能だと判断しています。

岡山県内300社の中から「チャレンジ企業」に選ばれる

 ――申請から承認まではどのようなプロセスですか。

 三宅(満) 平成11年の暮れから準備を始めて、12年1月の初めから2週間の県の公募期間の間に提出し、2月16日に承認の通知が来ました。しばらくして、県が承認企業を集めて、各々の申請趣旨を説明する会がありました。支援額を決定するためだと思います。私が説明しましたが、科学によく精通した質問者もいて、屋根土の成分等を詳しく聞かれて緊張しました(笑)。

 ――支援金はどのくらいですか。

 三宅(満) 研究開発と販路開拓の名目で200万円が出ました。
 支援金は、研究開発のための費用や県外への情報収集等に有効に活用させて頂きました。

 ――経営革新支援法の承認を受けたことによる影響は何かございましたか。

 三宅(満) 信用保証協会を通して、地元銀行からの融資がスムースに受けられたことが一番大きかったです。この他に、平成13年末には、岡山県中小企業総合指導センターが、経営革新を支援する「チャレンジ企業支援ネット」というのがあって、「独創的なアイデアによる新商品や新技術開発等の有望なビジネスプランを持つ10社」の中に選ばれました。それと従業員の意識変化ですね。努力してきた結果、新聞に載ったり、県の認可を受けたということで励みになったと思います。

ウエルカム 巡回監査

 ――馬越会計事務所としては現在どのような支援をされているのですか。

 馬越 毎月の巡回監査で担当職員から、経営実績の説明をさせていただいていますが、2年前からFX2を導入されて、有効に活用していただいています。継続MASで経営計画を立てて、四半期検討会も必ず行っています。

 三宅(満) TKCのFX2のデータは分かりやすいですね。屋根土販売と工事の売上がそれぞれいくらかすぐに分かるし、屋根土は、どこが主力な取引先で、何%のウエートか。工事は、直接販売と工務店さんの比率はどうかなどと、柱ごとに見ていくと参考になります。四半期実績検討会の実績資料を見て、自分の立てた目標売上を達成していない場合には、まず営業利益率を見るんです。そこが低くなっていれば、どこが原因かを確認して、これをカバーするためにどこを伸ばそうかと対策を立てるんです。よく見ると、企業の弱点が見えてきます。
 目標が達成されていなければ、今月はこの費用を抑えていこうという判断ができます。損益分岐点も、うちの規模で、何人の従業員で、最低どれだけ売上があればよいかがすぐに分かります。

 ――有効に役立てておられますね。月1回の巡回監査の時にもいろいろ質問されますか。

 三宅(満) 担当の方には、午後1時に来ていただいて、夕方6時過ぎまで、いろいろな質問をさせてもらっています。

 馬越 鋭い質問をされるので担当者も非常に勉強になります(笑)。

販売と施工の売上割合をどうするかが目下の課題

 ――今後の屋根土の販売見通しはいかがですか。

 三宅(黎) 中国地方の瓦工事業者にダイレクトメールを送ったところ、非常に評判が良くて、1割ぐらいから注文が来ましたので手応えを感じています。

 馬越 現在は、屋根土の売上が瓦工事とほぼ同額にまで伸びています。しかも屋根土の利益率が比較的高いので、経常利益が上がってきています。

 ――両者の構成を、戦略的にどの程度の比率にしようとお考えですか。

 三宅(黎) それを今、息子と喧嘩しながら話し合っているところです(笑)。  屋根土の販売は営業をかければ、需要は増えるでしょうが、全国展開をした場合、輸送費が課題になります。現在20キロの袋を350円で卸していますが、100袋で2トンですから、どうしても割高になります。

 三宅(満) 瓦工事の方は、今数が減ってきているので、人を増やして伸ばそうと考えると、人件費を増やして、果たして売上が伴うかどうか要するにどっちにどれだけ費用をかけて、利益を上げるかという判断が重要になります。

 ――そうした意思決定への助言も含めて会計事務所に期待されることがありますか。

 三宅(黎) 私自身が数字に弱いので、馬越先生のお陰で、その点から解放されました。それからいろんな業種をご覧になっているので、助言が的確で安心しています。後は、こちらが行動できるかどうかにかかっています。

 三宅(満) 馬越先生や事務所の担当者の方が、前月の実績等について、きちんと解説していただいているので有り難いです。もしこれを説明してくれる従業員を雇ったら大変な費用がかかります。これからも戦略的なサポートを期待しています。

         (TKC出版 石野 清)

有限会社瓦工事ミヤケ

代表取締役社長 三宅黎志郎(みやけ・れいしろう) 61歳
設立 平成5年(有限会社設立)
業種 瓦工事
資本金 300万円
年商 7000万円
従業員 13名
経営革新の内容 新商品の開発・生産
住所 岡山県倉敷市粒江858‐2
電話 086(420)2511
馬越会計事務所

住所 岡山県倉敷市児島下の町1‐11‐45
電話 086(474)3719
会報『TKC』平成14年 5月特別号より転載