まつもと合成株式会社 代表取締役社長 松本昌芳
関与税理士:稲田実税理士事務所 所長 稲田 実(TKC近畿兵庫会)
ポリエチレン加工販売業のまつもと合成は、円形寿司容器をワンタッチで包むポリエチレン袋「バンバンバッグ」をはじめ数多くの特許権及び商標を有する。平成11年10月には容器包装リサイクル法に則り、十字結束に対応する商品「むすぼー」を開発。独自のアイデアと技術で、常に新商品開発に取り組み経営革新を図っている同社の松本昌芳社長、稔史常務、並びに関与税理士稲田実会員に話を聞いた。
数多くの製品の特許権を持ち
「バンバンバッグ」等の商標は一生もの
――まつもと合成様では、幾つものパテントを取られているとお聞きしました。
松本(昌) はい。持ち帰り用円形寿司容器のポリエチレン袋「バンバンバッグ」や新聞回収ひも「むすぼー」などが主なところですが、ほかにも幾つかありますし、特許出願済みの商品もあります。
パテントの製法特許は20年、実用新案(平成5年以前)は15年ですから、「バンバンバッグ」は特許権がすでに切れたんですが、改善特許でまだ維持しています。しかし、商標については一生ものですから、私があの世に逝っても会社で息子が引き継げるということです。
――円形寿司容器のポリエチレン袋は、我々もよく目にします。創業はいつでしょう。
松本(昌) 当社は、昭和41年8月にポリエチレンの加工販売で創業し、43年5月に法人成りしたわけですが、私が事業を始めた頃は、日本国内における包装資材は紙袋でした。それから2、3年たって今主流になっているポリエチレン袋が世に普及し始めました。ですから創業当初は営業も飛び込み。主に外食産業が中心で、現在当社の売上高の6割を占めています。
――営業活動では、どういうことをアピールされたのですか。
松本(昌) お客様のニーズに応え、中身に合わせたパッケージを作り提供するということを強く訴えました。
寿司詰めは袋に入れて持ち帰る場合、横にも縦にもできませんね。寿司が荷崩れしないようにするには容器が丸にしろ四角にしろ、そのままの平面体で持ち運びができなければいけない。それをクリアするポリエチレン袋を作ってくれないかという提案が、小僧寿司さんからあったわけです。
それじゃあといって製作し完成させたのが「バンバンバッグ」なんです。
パッケージ製作の基本は折り紙細工
――「ニーズに応える」ということですが、市場調査等を行うのですか。
松本(昌) いえ、いえ。デパート、スーパーや小売店を参考にするんです。実際に買い物をして、一般社会で使われているポリエチレン袋に目を向け、もっと使い勝手の良いものができるのではないかという意識を常に持つようにしています。
そうでなければ、これだけ激しい時代の変遷に対応できませんよ。特許権を持っているからといって、それにあぐらをかいてしまっては会社の発展はない、常に新しいものを求めていかなければいけないわけです。
――いちばん最近の新商品は?
松本(稔) 平成12年11月24日付で特許権が認証(特許第3133743)された古紙回収袋「むすぼー」です。
――新商品開発はどのように……。
松本(昌) 基本は折り紙細工なんです。考えてみてください、いまはポリエチレン袋に入れて運ぶのが当たり前になっていますが、小僧寿司さんの持ち帰り用包装資材は、昔はポリエチレンの四角い風呂敷だったでしょう。
私は、電車のなかで新聞紙をあーでもないこうでもないと折って破って何度でも繰り返すわけです。そして袋状にする。袋状からコンパクトに畳み込めるか確かめ、余分な箇所があるかないかをチェックする。形ができたら今度は、折り紙の金型を作り設計する。例えば作ろうとしているポリエチレン袋がいままでのマシンの切断の長さとか、圧縮値とか、抵抗値とか、角度の調整だけで対応できるかトライしてみる。できるようであればいいのですが、できなければ新しいマシンの設計・開発も手がけます。ですから「むすぼー」の製袋機は当社オリジナルで企業秘密です(笑)。
容器包装リサイクル法に対応した新聞・古紙整理袋「むすぼー」が誕生
――「むすぼー」の発想は?
松本(稔) 平成12年4月から容器包装リサイクル法施行により、新聞・古紙の十字結束が義務づけられました。これは以前、袋詰めが認められていたのですが、回収業者が選別する際、例えばダイレクトメールとかティッシュペーパーの空き箱にビニールが付着しているなど、古紙以外の異物が混入しがちだからなんです。
松本(昌) そこで、新聞・古紙を袋に入れて整理しながら、最後に十字結束ができるようにすればいいじゃないかと考えたわけです。十字結束したら余分な箇所を切除してしまえばいい。それにはあらかじめミシン目をポリエチレン袋に付けようと。
そんな発想から、袋がワンタッチでひもになってしまう「むすぼー」が生まれました。ロゴマークは社員から募集したのです。リサイクル法に則った商品が完成したことで、全員の意識が活性化したのか、やる気が出てきたなというのを感じますね。作業も生き生きとやっていますよ。
―― 一般のひもよりも幅がありますね。
松本(稔) それがメリットなんです。新聞販売業者で配られる紙の袋と違って、外から一目で見えるから異物の選別に役立つ。ドンッと置いても荷崩れしない。一般のひもは十字部分を持ったとき手に食い込んで痛いでしょう、「むすぼー」は幅があるからそれほど痛みを感じません。それから切除した部分をまたひもとして使える。
単価についても、通常1か月分の新聞を十字結束するのに一般の紙ひもでは30円弱かかる。新聞販売業者で配られる紙の袋で26円くらい。でも「むすぼー」は10円以内の製造コストです。紙袋や紙ひもは水に濡れると切れてしまう可能性がありますでしょう、ですから「むすぼー」は雪国にはもってこい(笑)。
新商品のデモンストレーションが兵庫県の聴聞会で好印象を
――さて、御社では中小企業経営革新支援法の認定を受けたそうですが……。
松本(昌) 平成11年8月頃でしたか、中小企業金融公庫神戸支店の方から、中小企業経営革新支援法の認証を得てみてはどうかと勧められました。そこで「むすぼー」の特許申請を10月25日に出した後すぐ、稲田先生の事務所で経営コンサルタントを担当されている阿野英文さんにお手伝いいただき、兵庫県商工部(現産業労働部商工労働局経営支援課)に2回通って窓口の方と調整を図り、経営革新支援法の申請書を作成し、12月20日に提出しました。
稲田 平成11年7月に中小企業経営革新支援法が制定されてから、ポリエチレン事業における先例がなかったものですから、兵庫県としてもどのような書類が必要なのか手探りの状態だったと思います。
――経営革新計画の事業活動の内容は?
松本(昌) 「商品の新たな生産または技術革新・販売開拓の方式の導入」で申請しました。すでに「むすぼー」は開発を終えて量産体制に入ろうとしていましたから、生産及び販路拡大のための融資を得られるようにということです。
稲田 経営計画目標数値は継続MASシステムを使って、3年で200%の付加価値額アップに設定しました。
松本(昌) 年明けの1月14日に、兵庫県による聴聞会がありまして、最初に決算書、経営計画書の数字について簡単に聞かれました。どういう行動計画でこの目標数値を実現しようと考えているのかとか。
それから新商品の説明を求められました。これについては当然あると思っていましたから、新聞の束を持参していたのです。そして皆さんの目の前でデモンストレーションしたわけです。これがけっこうインパクトがあったようで、それ以降は「むすぼー」の話に終始していましたね。
申請してから1か月後くらいに認定書が届きました。
稲田 まつもと合成さんは、おそらく兵庫県ではいちばん最初に承認が下りたと思います。
――承認後、融資をしていただけましたか。
松本(昌) 平成13年に入ってですが、中小企業振興公社の保証のもと西兵庫信用金庫から融資を得られるようになりました。
会社の生き残りは人材次第
「袋屋のプロ」を育てる
――経営革新支援法の申請に販路開拓もありますが、これについてはいかがですか。
松本(稔) それがいま当社の課題なんです。
いちばん最初は、大手4つの新聞社やその組合、つまり上から攻めようということで、「むすぼー」をPRしました。また、これまで取引のあった新聞販売業者を中心に北海道から沖縄まで回りました。それから、取引先百貨店にお願いして粗品として配ったり、朝日新聞系の媒体に広告を掲載。東京・神戸・姫路で開催されたビジネスフェアにも出展しました。
「むすぼー」が出た当初は、真新しいということで1億の売上があったわけです。しかし、それ以降はいっこうに成果が上がらない。
――新たな戦略は?
松本(稔) 社長が方針として「草の根営業」を打ち出したわけです。地道にコツコツだと。それから以降は関西、中部地区の新聞販売業者を1軒1軒回るようにしました。時間はかかるかもしれませんが、私ども中小企業が生き残りをかけて大手に対抗していくには、ニッチというか小さいところから絶対の信頼を得ることだと思うんです。それが少しずつ少しずつ社会に浸透し、売上アップへとつながっていくような気がしますね。
――何か成果は上がりましたか。
松本(稔) 中日新聞社には「むすぼー」を大量に採用していただきました。それから昨年末、朝のテレビ番組で「むすぼー」が紹介されました。そのときは年末の大掃除に便利なグッズということで、東急ハンズ取扱商品として取り上げられインパクトがあったようです。それをご覧になった新聞販売業者からけっこう問い合わせがありましたからね。
また、そのすぐ後に郵政省の指定商品に入れていただき、1枚の広告チラシと一緒に粗品として「むすぼー」を配布してくださったのも効果がありました。
――今後の抱負をお聞かせください。
松本(昌) 私は「普通の会社でありたい」と思っているんです。そこには自分に与えられた当たり前の仕事を一所懸命にやっていただきたいという願いがある。一所懸命取り組めば、次に知恵が生まれてくるのです。中途半端では何も生まれてこない。
業績は人材次第。ニッチ産業で会社が生き残っていくためには"人材"が必要であり、彼らの作業スピードが求められるわけです。その人材には、新しいものに常に取り組み、完成した商品に対して自分が手がけているという自信を持ってもらいたい。だからこそ私は率先垂範で常に新しいこと、新商品開発に情熱を傾けていきたいのです。それが当社にとっての経営革新だと思っています。
それから、環境問題に類する地球に優しい商品を世にどんどん出して、社会に少しでも貢献していきたい。その一環としてボランティアもしていきたいと考え、今年4月1日に地元山崎町の皆さんが身体障害者の授産施設を立ち上げられたわけですけれども、私どもはそこに仕事を提供して参ります。その施設の方には、うちの従業員が「袋屋のプロ」として指導に当たっていくわけです。みんなに幸せを感じてもらいたい、それが願いです。
(TKC出版 青山雅美)