株式会社上田製作所 代表取締役社長 上田雅春
日野建材興業株式会社 代表取締役社長 首藤昭夫
関与税理士:吉田正之税理士事務所 所長 吉田正之(TKC近畿兵庫会)
吉田正之税理士事務所では、関与先企業の経営革新支援に積極的だ。ここで紹介する上田製作所(上田雅春社長、朋之専務)は「生ゴミ処理機」「たばこ消火装置」で、日野建材興業(首藤昭夫社長)は「バイオトイレ」で、それぞれ新商品開発分野において中小企業経営革新支援法の承認を得ている。これら異業種2社がこの度、タイアップし個々のノウハウや技術注入により第1号の生ゴミ処理機を結実させた。
異業種2社がタイアップし
商品開発にノウハウ・技術を注入
――今年3月に、2社タイアップによる新商品が完成したそうですが、その経緯を……。
上田(雅) 当社は平成11年から、生ゴミ処理機の製作を手がけ試作品もいくつか作っていたわけです。生ゴミの分解処理は菌を使うわけですが、生ゴミの悪い菌を殺して悪臭が出ないよう実験を何度も重ねました。でも、装置自体は稼働するのですが、どうしても生ゴミ処理の成果が上がらない。ですから開発資金の問題もあり、平成13年に入って一応中止したのです。
それが10月に入って、日野建材の首藤社長から突然、バイオ菌を使った生ゴミ処理機製作の貴重なノウハウをいただき、そのうえ製作要請もあったわけです。
首藤 私どもでは仮設水洗トイレ「パルト―5」を扱っておりまして、そこから排出される汚物処理をバイオ菌を使って容易にしようという「バイオトイレ」の構想を持っていました。また、その前段階として、バイオ菌を使った生ゴミ処理機製作を試みようと、設計図・企画書までできあがっていたのです。しかし技術がなかった。
そのような折に、吉田先生から「上田製作所さんとタイアップして新商品開発をしたらどお?」といった感じで勧められたのです。
――両社は以前から交流があったのですか。
吉田 上田製作所の富夫会長が太子町商工会主宰の経営者協会会長で、首藤社長が理事、私が副会長。私は両社が関与先で社内事情を知っていましたので、首藤社長に上田製作所さんを勧めたわけです。
首藤 昨年の10月頃、私から会長と専務に生ゴミ処理機製作の構想の話をしました。そうしたら二つ返事で「一緒にやりましょう」と。そこで、日野建材の企画書をお見せして意見を出し合ったわけですが、上田製作所さんにそういったノウハウや技術があることは、共同製作することになってから知ったんです(笑)。ですから、着工して第1号が完成するまで3か月とかからず、ものすごいスピードで仕上げてくださいました。
上田(朋) 当社は「菌」をクリアできずにいたわけですから、バイオ菌のノウハウをお持ちだった日野建材さんから話をいただいたときには「願ったり、叶ったり」でした(笑)。
上田(雅) 念願叶って、この3月に生ゴミ処理機「e‐ASUKA」が完成したわけです。
首藤 今後、この商品についての営業活動は当社が展開していきます。そして、上田製作所さんには製作を通していろいろとノウハウをいただきましたので、必ずや近い将来「バイオトイレ」を実現させたいと思っています。
[上田製作所]自社オリジナルの「はながた商品」がほしかった
――それぞれ会社の概要をお聞かせいただけますか。まず、上田製作所様から。
上田(雅) 昭和2年、祖父が鍛冶屋から上田農具製作所として創業し、23年に法人成りして社名を三徳金鍬上田製作所に変更しました。そして、時代の変遷で人力の農具が耕耘機へと移ってきたものですから、従来の事業だけでは需要がそれほど見込めなくなり、36年に今の社名に変更し、製缶事業を開始したわけです。
上田(朋) そのとき耕耘機の部品製造を手がけたのですが、コストに利益が見合わなくてね、めちゃくちゃ失敗しましたよ。それで、これからは機械化が進み、その必需は電気の世界になると。時代背景も手伝ってその頃、親戚から電気関係の仕事をしてみないかという話があって、配電盤、制御盤の設計製作事業を開始することになったのです。当時は、新日鉄が急成長しており、うちもその波に乗って一時は売上がすごく伸びましたね。
――ヒット商品は何か出されたのですか。
上田(朋) それが当社のいちばんの悩みでした。というのも、うちは新日鉄への依存傾向が一時強く、いくつかの単品を受注生産していたために、忙しいときと暇なときが極端にあって、設備投資や資金繰りが非常に厳しかったんです。新日鉄に勢いがあった頃は良かったのですが、下降してくるとその影響をまともに受けてしまうわけです。
上田(雅) でも、そういうときにそれまで築いてきた信頼関係といいましょうか、「上田製作所はきちっとした仕事をしてくれる」と評価してくださり、取引先から注文がありました。とりわけ2段式立体駐車場はヒットして、バブルのときには月間120台くらい生産していましたよ。
上田(朋) しかし、これらについても受注製品ですから、なんとしてでも自社オリジナルの「はながた商品」を持ちたかったんです。これは先代の夢でもありました。
――完成しましたか。
上田(雅) 昨年3月にたばこ消火装置が完成しました。
[日野建材]3社がグループ化し環境問題に取り組み社会貢献したい
――日野建材様の概要をお聞かせください。
首藤 私どもの会社は日野建設興業(株)、日野建材興業(株)、日野物流(有)、この3社でグループ化しております。法人設立は順に昭和53年、63年、平成5年です。
日野グループは、日野建材興業として法人を設立したのに始まります。事業内容としては、ユニットトイレやユニットハウス等仮設資材の販売、施工及びリース、レンタルですが、これらはすべてメーカーから資材を仕入れて加工しユーザーへと渡るわけです。そこには受け身の体制がありますから、こちらの意にそぐわないことが多かったのです。そこで攻めにも転じようということで、営業活動を主体とする部門を立ち上げ日野建設に社名変更しました。それに伴い、これまで事業展開していた部門を日野建材として法人設立したわけです。
――営業部門はどのような事業展開を?
首藤 新日鉄さんと手を組みまして、ユニット化された工場や倉庫、マンションなどの施工販売が可能となり、ある程度ユーザーへ営業活動を展開できるスタイルになったわけです。活動範囲も兵庫県が中心だったのですが、それ以降は大阪以西に広げられましたね。特に、先ほどの「パルト―5」は特許を取っておりまして、北海道で開かれた第51回国民体育大会に使われました。
これら事業展開のなかで、私どもが受注したプラント(規模の大きな生産設備一式)については、一方で施工を行い、一方で仮設資材を投入するというかたちになる。さらに、そのプラントでは産業廃棄物等が出ることに目を向け、産廃や生ゴミ等を収集運搬する事業部門として日野物流の会社を設立したのです。
そして、3社がグループ化し事業展開してゆくなかで、これからは環境問題に取り組み、リサイクルを利用した自社商品を開発したいという考えが生まれてきたのです。
それから、日野建材は平成12年にISO9001を認証取得することができました
経営革新は意識改革を図り会社が一丸となる起爆剤
――両社ともオリジナル商品を持ちたいということで、経営革新を図ろうと……。
首藤 私どもの業界では市況が芳しくなく、既存商品も成熟期を迎え、いつか経営に行き詰まってしまう。何か新しい「打ち手」を積極的に展開したいという願いがありました。それがリサイクルに目を向けた新商品の開発という構想につながったわけです。ちょうどその頃、吉田先生から経営革新支援法についてのお話があり、「承認を取るように」と。
――経営革新支援法の申請は2社の連名で出されたのですか。
吉田 いえ、別々です。正確には、まず、上田製作所さんが昨年1月の終わり頃に、「生ゴミ処理機」と「たばこ消火装置」の2つの新商品開発で承認されました。そして、両社がタイアップすることになってから、日野建材さんが11月上旬に「バイオトイレ」の新商品開発で承認されたわけです。
上田(雅) 〈生ゴミ処理機〉は頓挫状態だったわけですが、吉田先生から「諦めちゃいけない。いつか必ず、日の目を見るときが来るから」と説得されまして、これと〈たばこ消火装置〉2つの新商品開発で経営革新支援法の申請を行いました。
――申請書の作成は?
吉田 どちらもヒアリングをして、会社が新商品製作に傾ける情熱を、私が文章に表しました。また、経営革新計画については、両社とも継続MASシステムを使って、5年後に付加価値額15%アップの経営目標を立てました。
首藤 その後、申請書を提出した兵庫県商工労働部から呼び出しがあって、審査官10人からヒアリングを受けましたね。
――ヒアリングの内容は?
首藤 商品製作に伴う経営革新についての説明が中心でした。それから経営の現状や、これからの取り組み、社会の要請はあるのかないのか、採算ベースに乗せるにはどのくらいの年数がかかるのか、またバイオトイレ設置の必要棟数などの内容でした。
上田(雅) 私は神戸県民局から呼び出されたわけですが、事前に吉田先生からレクチャーを受けて、質問されないくらい機関銃のように、新商品開発への熱い思いや、全社員が一丸となって目標に向かっていることを話せと言われていましたので、30分間しゃべり続けましたよ(笑)。
――認定書はすぐに下りましたか。
上田・首藤 ヒアリングから1週間くらいです。
――融資についてはいかがですか。
首藤 信用保証協会の特例保証がついて、担保もなしに取引先信用金庫から2000万円の融資を受けることができました。
上田(雅) 当社はまだ申し込んでおりません。でも、承認申請書が届いた翌日、朝礼で「兵庫県にある何千社という企業群から経営革新支援法承認は80社。うちは県の承認を得た1社なんだ。みんな頑張ろう」と言ったんです。そうしたら、従業員の顔つきが変わりましたよ。
上田(朋) 経営革新というのは、私は承認を受ける受けないということよりも、それに向かって意識改革を図り、会社が一丸となって取り組んでいくための起爆剤のような気がしますね。例えば、今回のように新商品開発となると、担当した箇所が1つの商品となって自分たちの前に現れると励みになるようです。「あそこのパーツは、俺がやったんだ」とね。そういう意識改革につながっている。
――今後の抱負をお聞かせください。
上田(雅) 「当社は元気な会社です」と外部には強くアピールしています。ですから時代要請に応え、生ゴミ処理機やたばこ消化装置等、環境問題に積極的にそして真剣に取り組み、社会に貢献していきたいと思っています。
首藤 私どもはグループ3社が、コンパクトではあっても各部門の特殊性を生かした事業展開をして参ります。 そして、今回上田製作所さんとタイアップして研究開発させていただいたわけですが、自分たちの足りない部分は他の会社や部門と共同して取り組んだほうがスピーディーでより良い商品ができるということを感じました。そういうところで差別化を図っていきたいと思います。
吉田 私の事務所では、関与先の経営革新支援に積極的に取り組み、これまで8件について経営革新支援法の申請をバックアップしてきました。今回のケースは異業種2社が知恵、ノウハウを享受し、互いが切磋琢磨し経営革新を図ったことによって新商品が結実したわけです。こういった異業種交流を通じたネットワークを広げ、経営革新に取り組む企業をどんどん増やしていきたいと思います。
(TKC出版 青山雅美)